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告白

「御手洗家に引き取られて次の人生を歩んで」

「典子、自分で伝えろ」

「そうしたいけど、もうダメみたい」

 スピーカーからナースステーションからの声が聞こえた。

「どうしました?」

 鈴木が必死に叫ぶ。

「すぐに来てください、早く」

 典子はさらに激しく咳き込んだ。そこにアイスを両手に持った肇が戻ってきた。肇は一瞬呆然としアイスを落とした。そしてハッと我に帰るとベッドに駆け寄った。

「ママ」

 典子はついに気を失った。看護師が駆け込んできた。応急処置をしながらマイクのボタンを押して叫んだ。

「先生を呼んで。大至急。木村さん、大丈夫ですか? 私の声が聞こえますか?」

 医師と看護師が病室に入ってきた。典子の容体をみて医師が叫んだ。

「処置室へ」

 すぐに典子はストレッチャーに移され、運び出された。肇と鈴木は後を追った。やがて典子は手術室に運び込まれた。肇と鈴木はドアの外で待った。鈴木はしゃがみ込んで肇の目線になって話しかけた。

「いいか、君のママは大変な状態だ。助からないかもしれない。急にそんなこと言われたって信じられないかもしれないが、それが現実だ。いくら君が幼くても現実を受け入れるしかない……もし君のママに万が一ということがあった場合、君は御手洗という家に引き取られて育てられることになる。君のママは私にこう言った。御手洗家に引き取られて、次の人生を歩んで、と」

 肇の目から涙が溢れ出した。その肇を鈴木はぐっと抱きしめた。


※    ※    ※


 鈴木が木村典子について話している間、猪熊はタブレットに触れることはなかった。二人の調査官もディスプレイを見ている姿勢はそのままでも、キーボードに触れることもなかったため、車内は静かだった。

「というわけです」

 一息ついでから話が終わったことを明らかにするためか、鈴木はそう言った。

「なるほど、さすがにそこまではわれわれも調査しきれていないですね。一見すると正憲社長の子飼いのように見えるあなたが、正憲社長にとってもっとも危険な存在だったとは……」

 猪熊が二人の調査官に目で合図した。調査官たちがうなずくと、猪熊は立ち上がり、鈴木をうながしてから、ドアを開けて外に出た。鈴木は猪熊の後に続いて外に出た。午後二時くらいだろうか。

「長時間にわたりありがとうございました」

 猪熊が妙にていねいに礼を言った。鈴木がためらいがちに言った。

「少し喋りすぎたようです。じつは今日は典子の命日なんです」

「そうなんですか?」

「ええ。墓参りに行こうかと……だから私はだれでもいいから典子の思い出話がしたくてたまらなかったんだな……」

 そう言うと地下鉄の駅を目指して鈴木は歩き出した。

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