叔父
「これからどうします?」
「そうですね……」
高木は考え込んだ。それを見て肇は栄一郎に謝った。
「綿貫さん、申し訳ありません。あなたの部下を疑ったりして……」
「それはいいんだ。誤解さえ解ければ。むしろ改竄してうちに疑いを向けさせた犯人が憎い」
高木がぽつりつぶやいた。
「やはり帝都セキュリティか……」
「やはりというと?」
栄一郎の質問には高木に代わって肇が答えた。
「このログや映像の出どころも帝都セキュリティなんです」
高木も説明を追加した。
「常務が自殺したとき帝都銀行の映像からも不審な人物は見つかっていません。それは帝都銀行のセキュリティを熟知しているからではないでしょうか?」
栄一郎は事情がまだ飲み込めないまま言った。
「帝都銀行のセキュリティも、実際には帝都セキュリティが管理しているはず……」
「帝都セキュリティは、御手洗憲次叔父さんの管轄です……」
肇のとまどった言葉に高木が答える。
「叔父さんですね?」
「ええ。父の弟です。綿貫のおじさんと、父、そして父の弟の三人が帝都の基礎を作ったと言っていいでしょう。しかし父が吟兄さんを取締役に就任させたころから、憲次叔父さんはだんだんわきに追いやられてしまって……不満を持っていたはずです。しかし兄を殺したり、私を狙ったりするなんて……」
栄一郎が意を決して言った。
「御手洗さん。これは御手洗家だけの問題じゃない。綿貫家も含めて帝都グループ全体の問題です。御手洗家だの、綿貫家だの、言っている場合じゃない。世界は大きく変わってきている。日本の地盤沈下は激しい。気分だけ先進国だが、実態はかなりひどい。世界を相手に商売する気持ちがある企業はもう数少ない。内需だなんて言って、国内の消費者相手に商売していてはだめになるばかりだ。日本の消費者などもうどうでもいい。やはり世界を相手にしなければ……そうするためには、帝都がまとまらなければ……」
肇はうなずいた。
「私もそう思います。父のように自分の利益だけ追求する姿勢では、近いうちに行き詰まります」
「そうです。そのためにも、まずは今回の事件を明るみに出しましょう。だれがなにをしたのか? それが身内のものの犯行だとしても白日の下にさらさなければ、帝都に未来はない」
「わかりました。生命ラボの件はいったん置き、この件を調べます」
肇はもう一度深くうなずいてから言った。




