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改竄

 栄一郎がとまどっていると、高木が勝手に栄一郎のデスクに行き、デスクの上にあったPCのスリープモードを解除した。栄一郎と肇が高木のあとに続いた。高木は上着のポケットからUSBメモリを取り出すとPCに差し込んだ。栄一郎はあわててパスワードを入力してPCのロックを解除した。

「これはさきほど私たちが入手した帝都銀行の防犯カメラの映像とセキュリティログファイルです。見てください。セキュリティログのタイムスタンプなんですが……」

 栄一郎と肇はPCの画面を覗きこんだ。USBメモリのフォルダには映像のサムネールが表示されたカメラ映像のファイルとログファイルのアイコンがあった。ファイルはリストで表示され、タイムスタンプも表示されていた。

「ログのようなものは、文字だけのテキストファイルと呼ばれる形式のファイルです。このテキストファイルには、タイムスタンプという形でファイルが作成されたり、修正されたりした日時が記録されています。一つの日時しか記録されていません。ログのようなファイルの場合、最後に書き込まれた日時が残るのが通常です。このログの場合、日にちが変わるときに切り替わるようで、その日の最後の出来事が書き込まれ、その日時が記録されているのだと思われます。ところが……」

 高木がセキュリティログファイルのプロパティを表示させた。

「このログファイルのタイムスタンプは、事件のあった翌日の七月三日の午後四時ころの日付になっています。これはどういうことでしょうか?」

 意味がわからず栄一郎が繰り返した。

「どういうことなんだ?」

「こういうファイルはコピーしたりすると、タイムスタンプがそのときのものに変わることがあります。今日、帝都セキュリティ内でそういう操作をしたのかわかりませんが、もしそういったことが帝都セキュリティ内であったのなら、今日のタイムスタンプになっているはずです。ところが今日の日付でもない……私が思うに……このファイルは改竄されているのではないでしょうか? その改竄が行なわれたのが七月三日の午後四時……」

 思わぬ指摘に肇もとまどった。

「改竄……」

「一年前の七月三日というと……」

 そう言いながら高木は自分のスマホを操作した。カレンダーをさかのぼって一年前の七月の分を見ながら言った。

「水曜日ですね。こういうログのようなものをシステムが処理するとき、たいてい日曜日の深夜に自動的に行なうものです。水曜日の午後なにかが行なわれるとは考えにくい。そういう意味でも、ファイルへの変更は人為的に行なわれたと思われます。つまり改竄です」

「だれが? なんのために?」

 肇の素朴な疑問に高木が答える。

「やはり吟常務の自殺に関して、知られてはいけないことがあったんじゃないでしょうか?」

「こういうものはよくわからんが、やばいところだけ削除してしまえばよかったんじゃないか?」

 栄一郎の疑問にも高木が答えた。

「たぶんですが……関連するログがあちこちに点在していて、一部だけ削除するとかえって不自然になると思ったんじゃないかと……改竄するにしても余裕がなかったんでしょう、メールアドレスのドメイン部分だけ置換したのかもしれません。あるいは改竄前は『t_yamashita』に似たメールアドレスだったとか……」

 しばらく沈黙が続いてから肇が高木に聞いた。


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