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潔白

 肇はつとめて冷静に質問した。

「山下さんですね? 山下さんのメールアドレスは『t_yamashita』で、@以下は帝都物産のドメイン名で間違いないでしょうか?」

「え……はい、そうです。それがなにか?」

 高木が今度は質問した。

「御手洗吟常務が自殺された日のことなんですが……」

「御手洗吟常務……去年ですよね? 七月でしたか……」

「ええ。昨年の七月二日の夜です。その日の夜、帝都銀行の本店ビル内であなたのスマホから接続があったことがわかりまして……なぜそんな時間に接続したのか事情をお伺いしたくて……」

 肇のそんな質問に山下は首をかしげながら答えた。

「え? 帝都銀行の本店ビルには、私は行ったことがありません。経理部ではないので行く理由もありません。地元の支店には給料の振込先がそこなので行きますけど……なにかの間違いじゃ……」

 肇と高木は顔を見合わせた。

「そうですか……」

 肇は手詰まりになってしまったが、高木が食い下がった。

「すみませんが、スマホを拝見できますか?」

「ええ、いいですよ」

 山下は上着のポケットから自分のスマホを取り出した。山下のスマホを見て高木が驚いた。

「iPhoneじゃないんですね?」

 山下のスマホは日本のメーカー製のものだった。

「ええ。昔はiPhoneでしたが、いまはAndroidです」

「スマホを解除していただけますか?」

 高木の依頼に山下は心良く応じてくれた。

「ええ、いいですよ」

 山下はスマホにパスコードを入力してロックを解除した。高木は山下のスマホをしばらく操作してから山下に返した。そして肇に答えた。

「問題ないですね」

 肇は高木にうなずいてから、山下に向かって言った。

「ありがとうございました。どうも私たちが入手した情報に誤りがあったようです」

「ああ、そうですか……なにか疑われていたのでしたら、潔白が証明されたということですね?」

 安堵した様子の山下に栄一郎がねぎらった。

「どうもそうらしい。すまなかった。仕事に戻ってくれ」

 山下は会釈をしてから部屋を出て行った。栄一郎がいくぶん腹立たしく思いながら肇に言った。

「どういうことなんだ! うちのものが疑われたんだ、説明してもらわないと納得できない」

 どう説明していいかわからず、肇が困惑していると高木が割って入った。

「私に思い当ることがあります。綿貫さん、PCをお借りしていいですか?」


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