接続
「当日、御手洗吟さんがやりとりしたメールを抽出しました。そのうち午後七時以降に限定すると十二通、家族とのやりとりを除けば七通です。受信した四通のメールの送信者はいずれも綿貫栄一郎となっていました。これがそのメールです」
いくつかのディスプレイにメールが映し出された。
「それぞれメールのヘッダーがわかるようにしてくれ」
長野がそう命じるとすぐにヘッダーが表示された。
「スマホから……iPhoneから送信されたメールですね。ヘッダーからすると綿貫栄一郎専務を騙ったメールのような……」
高木の言葉に長野が応じた。
「そうですね。このヘッダーを見てみると、スマホのアドレスが192.168.10.125とプライベートIPアドレスになっています。これは携帯キャリアの回線からではなく、どこか無線LAN環境から接続されていることを表しています」
「無線LAN……Wi―Fiってことですか?」
肇の質問に長野が答える。
「はい。もしかしたらですが……帝都銀行の本社ビル内からではないかと……」
肇には驚きの答えだった。兄の転落死に帝都銀行の人間が関わっている……。
「じゅうぶん考えられると思います。なんらかの方法で御手洗吟常務を殺害しようとしていたなら、常務と同じ場所にいて、メールを出して屋上におびき出すチャンスを窺っていたとしても。とくに監視カメラの映像を見ながらなら手にとるようにわかるんじゃないですか?」
高木の冷静な分析が肇に迫る。肇がつぶやく。
「内部の人間……」
「可能性はかなり高いと……帝都銀行のWi―Fiだとすると、Wi―Fiへの接続には通常SSIDとパスワードを入力しないといけないでしょうから、接続のためのパスワードを知っているはずで、そうなれば内部の人間の犯行の可能性があります。そのIPアドレスを調べれば、メール送信以外に行なったことから犯人が特定できるかもしれません。長野部長、ログはどうですか? たとえば帝都銀行の無線LANの接続ログとか?」
高木の問いにピアスの男が答えた。
「ログファイルは動画に比べればサイズが小さいのですべて保存しています」
ディスプレイの一つにログが映し出される。高木がメールのヘッダーを見ながらログを調べる。
「あった。これですね。これがあの日このビルの無線LANに接続してきたときのログです。そのあとメールを受信しにいってます。たぶん自分自身のメールアドレスでしょう」
肇はそのメールアドレスのドメインに見覚えがあった。
「これは……帝都物産のメールアドレスです。名前は『t_yamashita』」
高木がログを見ながら続けた。
「その後、御手洗吟常務宛に海外のメールサーバー経由でメールを送信しています。間違いないですね。このスマホの持ち主が、『t_yamashita』が犯人とまでは言えなくても、何か知っているはずです」
肇がため息をついてから答えた。
「帝都物産は、綿貫専務の管轄です……」
「綿貫……とするとやはり綿貫専務がなんらかの形で関係しているということでしょうか……」
高木のその言葉に、肇と高木、長野の三人が顔を見合わせた。




