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「御手洗肇さんでしょうか?」

 肇はうなずいた。女子社員がいるのは、出迎えにきたということもあるだろうが、社内を不用意に歩き回られたくないというセキュリティ上の理由からかもしれない。

「長野がお待ちしております。どうぞこちらへ」

 女性社員が二人を案内する。廊下からフロアに入り、フロアを歩いてゆくと、奥にあった部長席に長野がいた。

「あ、御手洗さん、わざわざお越しいただいてありがとうございます。こちらからいつでも出向いたのに」

 電話では話していたが、会うのは兄吟の葬式以来だった。

「いいんです。いつかは一度来てみたいと思ってましたから。こちらは高木さんと言って、今回の件の調査をお願いしている方です」

「よろしくおねがいします」

 高木が挨拶すると、部長席の前にあった応接セットに座るよう長野がうながしたので、肇と高木が並んで座り、長野が向かい合って座った。

「こちらこそ、よろしくお願いします。肇さんとは生命ラボの告発メールの一件以来ですか? あのすぐあとに事故でしょう、びっくりしました」

「ご心配おかけしました。今日お伺いしたのは、その私の事故にも関係した話なんですが、まずは兄の転落死に関してです。帝都銀行のセキュリティで警備員の巡回時間を知っているのはだれでしょう?」

 長野が言葉を選びながら答えた。

「帝都銀行……に限りませんが、だいたいビル内は一時間ごと、ビル外も含めた巡回は三時間ごとです。知っているのは、帝都セキュリティのものなら知っているか、知らなくても知ることは簡単ですね」

 高木が質問した。

「あの夜、雷が酷く、瞬停が発生したのに一階ロビーの映像にはその瞬停が映っていなかったとか?」

 長野には初めて聞く話だった。

「え、それは知りませんでした。それはどういう意味でしょうか?」

「映像が丸ごとすり替えられているんじゃないかという説があります」

「それは穏やかではありませんね。確かめましょう。ほかならぬ吟くんのためだ」

 長野は席に戻り電話をとった。

「アーカイブ課のものを呼んでくれ」

 長野は電話を切り、御手洗肇に聞いた。

「吟くんが亡くなったのっていつでしたっけ?」

「一年前の七月二日の午後九時前後です」

 しばらくすると一人の男がやってきた。作業着というより私服で、ジーンズにTシャツ姿だった。

「部長、呼びました?」

「ああ、去年の七月二日の帝都銀行の保安映像を閲覧できるようにしてくれ」

 Tシャツ姿の男が聞いた。

「全部ですか?」

「全部だ。用意できたら呼んでくれ。そっちに行く」

 長野が力強く答えるとTシャツ姿の男は

「わかりました。電話します」

 軽く敬礼してから戻って行った。


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