僕、三回限定パワーを手に入れた!
「……これは」
僕は、ナノパーツの設計図を食い入るように見つめた。
「唯一君、回避は上手い。でも―――火力が足りないわ」
高継さんがこちらを見る。
「だから、まずはそこを補う。そのためのナノパーツがこれ」
ホログラムで表示されたのは、手から肩までを覆う装甲。
「―――粉砕衝撃装甲」
内部には、パイルバンカーのような機構。
ただ、殴る。
―――それだけで、粉砕する。
シンプルで、強い。
「唯一君の戦い方には合ってると思うわ」
「これなら……火力不足は補えますね」
「ただし、問題がある」
僕は顔を上げた。
「使用は三回までよ」
「……三回ですか?」
「それ以上は、装着者が壊れるから」
「完全に諸刃ですね」
「でも、今の唯一君に三回〝決め手〟があるのは大きいでしょ」
「……はい」
たしかに。
今の僕にとって、〝三回の必殺〟は大きすぎる。
リスク込みでも―――
素人の僕が、軀方さんたちと並ぶには、必要な力だ。
「衝撃を無効化するオーパーツがあるらしいけど……それはまだ未知ね」
「とりあえず、このナノパーツを作って―――」
「って言うと思ったわ」
高継さんは箱を差し出した。
「プロトタイプ、もうあるのよねー」
開けると、中には黒いブレスレット。
迷わず右手首に装着する。
「あ、最初ちょっと痛いわよ!」
チクリ、と走る痛み。
『所有者登録を開始します』
「DNA認証よ。本人以外は使えない」
「そういうのは、先に言ってください」
「言う前に着けたのは唯一君でしょ」
『登録完了』
赤いボタンが浮かび上がる。
「これで、あなただけの装備」
「……用意よすぎませんか?」
「元々は、魑瑠のために作ったものだから」
「……軀方さんの?」
「ええ。でも、使われることはなかった」
「強かったから、ですか?」
「いいえ。あなたと同じで最初はただの一般人よ」
―――想像できない。
あの軀方さんが。
回避も攻撃も隙のない、あの戦闘の塊が。
最初は、何もできなかったなんて。
「どうやって、あそこまで?」
「私がプログラムしたの」
「……プログラム?」
「特殊な訓練よ」
つまり、今の軀方さんを作ったのが高継さんってことか。
「僕も、同じようにしたら軀方さんのように強くなれますか?」
「無理ね。あれは魑瑠専用のプログラムだから」
即答だった。
「でも、強くなれるって―――」
「あなたには、あなた用のプログラムを組むわ」
「……それが、これ」
ブレスレットを見る。
「それはただの補助。足りないのは実戦ね」
次の瞬間。
足元が、抜けた。
「え、ちょっ―――」
落下。
本日、二回目だ。
今日は落ちる日なのかもしれない。
やがて床に着地する。
暗い空間。
「……ここは?」
「もしもし、聞こえる?」
イヤーカフから高継さんの声。
「はい、聞こえます。今度は何ですか?」
照明が灯る。
広い、体育館ほどの空間。
「訓練よ。粉砕衝撃装甲のテストも兼ねてね」
「いきなり、ですね」
「強くなりたいんでしょ?」
「それはもちろん」
「なら、プログラムを始めるのは今よ」
こんな感じで、昔の軀方さんもやっていたんだろうか?
そう思うと、苦笑いがこぼれた。
「それじゃ、ブレスレットの赤いボタンを押してみて」
言われるまま、ボタンを押す。
ブレスレットからラインが伸びていく。
手へ、腕へ、肩へ―――ナノパーツが組み上がる。
黒い装甲に、赤いラインが走った。
「肩、見て」
横に緑のラインが三本。
「赤がエネルギー。緑が残弾よ」
「どうやって使うんですか?」
「殴って、〝クラッシュ〟って叫ぶだけよ」
「……恥ずかしいんですけど」
「設計者に言って」
設計者、絶対そういうの好きだろ。
でも、攻撃の時に技名を叫ぶ、恥ずかしいけどロマンだよな。
……嫌いじゃ、ない。
「じゃあ、テスト開始」
床が開く。
現れたのは、デッサン人形みたいな人型のナノパーツ。
「訓練君よ。データを読み込ませることで、元になった人の動きを再現できるわ」
格ゲーのトレーニングモードみたいだな。
「今回、読み込ませるデータは―――これね!」
訓練君がビクッと起動して、構えを取った。
その構えを見た瞬間、分かった。
「……杷生笨」
この前、引き分けた特待生。
軀方さんを無理矢理デートに誘い、キスまで狙った不良。
因縁の相手だ。
「今の唯一君になら、丁度いい相手よ。本気でいきなさい」
「……はい。もとより、誰が相手でも本気です」
ウソだ。
もし、元データが九藤会長とかだったらここまで闘志は湧かなかった。
でも、相手が杷生だと、なぜか胸が熱くなる。
「……俄然、本気でいきます」
腰のホルスターから、六号を取り出し首筋に押し当てた。
頭の中で起動音が鳴る。
「―――遠慮なく」
時の解明者に触れる。
そして、僕は―――呼吸を整えた。
どうも、雁木真理です。
唯一君が新しい装備を手に入れました。
上手く表現出来てるでしょうか?
次回は新装備での訓練です。
楽しみにして頂ければ、幸いです。
そして、今回も皆様の暇つぶし程度になってましたら、幸いです。




