【第十七夜】 霊感
子どものころには、みんなと違うことがステータスだと思っていた時期が誰にでもあると思う。
そんな時期には、目立ちたくて嘘のひとつやふたつ吐くこともあるだろう。だからといって、それを責める気にはならない。
その時期を過ぎてしまえばいわゆる人生の黒歴史となって、本人は思い出す度に、羞恥心に苛まれるという業を背負うことになるだけだから。
「わたしね、霊感があるの」
小学四年生のときのクラスメイトだったミカちゃんは得意気にそう言った。
「え! すごーい」
「霊とかって見えるの?」
「この教室にもいたりする?」
ミカちゃんを取り囲んだ面々は、口々に「特別な才能」を持つということを褒めそやし、質問をした。
「うーん。教室にはいないかな……。でもね、屋上まで昇る階段はね、なんかイヤな気持ちがするんだよね。ナニかいるかもしれない」
ミカちゃんは楽しそうに言った。
本当のところは、みんなだってミカちゃんに霊感があるかどうかは半信半疑だったと思う。ミカちゃんはなんというか、ちょっと目立ちたがり屋さんなところがあることをみんなは知っていたから。
一緒の仲良しグループだったチサトちゃんは、なにも言わないで黙っていた。どうしたんだろう? なんで黙ってるのかな? そう思ったのでよく覚えている。
あるときに、風もないのに教室の窓枠がガタガタと振動した。地震でもなかった。
「霊が動かした」
ミカちゃんはそう言ったから、窓際の席の女の子が怖がって泣いてしまった。男の子は「テキトーなことを言ってんじゃねえよ!」とミカちゃんを煽り、女子対男子の全面戦争に発展したこともある。
五年生に上がるときに、チサトちゃんはお父さんの仕事の都合で引っ越すことになった。
グループのなかではわたしがチサトちゃんと一番の仲良しだったから、とても寂しくて泣いてしまった。
「大丈夫だよ。……元気でね。ミカちゃんにもあなたが見えたらいいのにね」
チサトちゃんはバイバイと手を振ってくれた。
子どもが小学校の卒業アルバムを引っ張りだしてきた。
「ママはどこにうつってるの?」
「ママはあんまり載ってないんだよね。クラスの集合写真くらいかな?」
アルバムをめくってクラスのぺージを開く。
「ママどこ?」
「これだよ。下にシモヤマミカって名前も載ってるでしょ?」
「シモヤマ? いまのおなまえとちがうよ」
「パパと結婚したから名字が変わったの」
「ふうん」
子どもは分かったような返事をすると、熱心にアルバムを眺めていた。
「ねえママ。このうしろにいるこ、だれ?」
「え? どの子?」
子どもが指した写真には、五年生になる前に引っ越していったチサトちゃんが写っていた。
よく目を凝らしてみるとひっそりと重なるようにして、チサトちゃんの背後に誰かがいるようにも見える。
「えぇ? ちょっとママも分かんないなぁ」
ただの影のようにも思えるし、見ようによっては……。
そういえば小学生のときに、自分には霊感があるなんていうことを、友だちに得意気に語っていたなぁなんてことも思い出してしまった。
アルバムの写真でよみがえってきた、懐かしくもあり恥ずかしくもある、そんな思い出だった。
読んでくださってありがとうございます。
今回はいつものテイストとはちょっぴり異なる叙述トリック? になっていましたでしょうか(´˘`;)?




