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宇宙探検(最終稿)  作者: 爺痔オンライン
第3章 異世界転職、無芸大食
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第3章 3-00

 立ち並ぶビル群に面した街角。忙しそうに行き来する群衆。

 その街中、突如、悲鳴とざわつきが沸き起こった。

 はたして何が起きたというのだろうか?

 ひったくりか、交通事故か、はたまたテロか、通り魔事件か。


 群衆はある人物を中心に、遠巻きに輪をつくっていた。

 輪の中心には一人の中年男が立っていた。その男はテロリストか犯罪者か。明らかにその姿は異様だった。


 異様だったというか、なんと全裸であった。


「ちょ、何で全裸?」


 男は局部を片手で隠してはいたが、ある意味、犯罪者ではあるな。いやいや、誰得なんですか、この状況。


 というか、その男は私、鈴木だった。


 え? マジ? 何で?? 周囲の群衆の男女の視線が痛い。ざわついている。あ、やばい、モバイル通信機らしいもので通報している女性が。

 というか、これ、どうするよ? と、とにかく、あのビルとビルの間の細道に行こう。


 鈴木が道路の真ん中から道端の方に移動すると、群衆は道をあけてくれた。というよりも、近づいてくる変態から悲鳴を上げて逃げまどっていた。


 ビルの間の細い通りにゴミ箱らしいボックスが設置されていた。鈴木が片手でボックスのふたを開けると、幸いなことに新聞の束が捨てられていた。これ幸いと1枚の新聞紙を腰布代わりに巻き、次に別の1枚を2枚折にして真ん中に丸い穴を空け、頭から通して上着代わりとした。


 よし、これで一応、原始人から文明人になった。これなら、街中を歩きまわっても大丈夫…じゃないよなあ、はあ。

 何でこんなことになってしまったんだろう。というか、メガネもなくなっているじゃないか。そうか、さてはあのゲートだな。あのゲートは生体しか通過させない仕様だったか。ナイフ、高かったんだけどなあ、どこに消えたんだろう。


 鈴木は、ため息交じりに空を見上げて気付いた。そこはスペースコロニー内であった。

 一瞬、鈴木が元居たコロニーかと錯覚した。ゲートに入ったがどこにも移動していなかったとか?


 だが、よくよく観察して見ると、鈴木が見慣れていたコロニーの風景とはどこか違う。


 まず、圧倒的にコロニーのサイズが大きかった。

 鈴木が住んでいたコロニーは長さが10km、直径は2kmだった。真上を見上げると、対岸の街並みがよく見えるコロニーだった。

 ところがこのコロニーでは、上空を見上げると、うすい雲と言うかガスというか、明らかに大気の状態が違う層が見えた。対岸の街並みも少し霞んで見える。コロニーの直径としてはおそらく10kmはなさそうだったが、鈴木のいたコロニーよりも軽く倍以上、大きいように見えた。なるほど、ギリギリ、雲が生成されうる高度があるということか。

 コロニーの長さも、はるかに長いように見えた。鈴木のいたコロニーは、1km毎に区の境界があり、1区~9区まであったわけだが、おそらく30区以上はありそうだった。


 そして最後に決定的な物が見えた。


 頭上のミラーのすき間から「青い」地球が見えたのだが、それは「連星」だった。青い惑星が2つ見えた。

 そして、見える範囲に月がなかった。どちらかの惑星の影に入っているのかも知れないが、これは月はないな、鈴木は直感した。そう、これは異世界だな、まちがいない、これは異世界、だよね、たぶん。


「異世界転職」ってところか、今回は。


 いやまあ、異世界はある程度、想定内ではあったよ、以前もちょっとはあったしね。でもさあ、全裸は勘弁してほしい、ほんと、頼むよ。マジで。


************************************


 などと鈴木がフリーズしている間に、何かサイレン的な音が近づいてきた。ピーポーピーポーではなく、チリンチリンでもなく、ファンファンファンでもなく、どちらかというとファンキーな、ピロリロリみたいな音だった。なんだか、どこかの自治体のゴミ収集車の音に似てるかも知れない。


 でもこれ、パトカー的なものだよなあ、きっと。どうしよう、逃げる? いやいや、逃げてもどうにもならんしな。


 鈴木は逃走をあきらめることにした。パトカー的な車両が停車し、警官的な男性が3名降りてこちらにやってきた。鈴木は両手を挙げ、抵抗の意思がないことをアピールした。


 あれ、本当にこの人たち、本当に警官なのかな。銃も警棒も持ってないんだが。とにかく、相手の言うとおりにするしかない。


「ご苦労様です、どうもすみません。鈴木と申します、決してあやしい者じゃありません」

「Awaham oh ahatewan?」

「え?」

「Ah・at・ew」

「えっと…」


 言葉が通じない、だと。マジか!


 それから鈴木は、知っている限りの外国語を使って会話を試みたが、どれ一つとして警官たちには伝わらなかった。

 警官らも何か国語かで質問を試みたようだったが、鈴木はどれ一つとして聞き取れなかった。

 次に警官たちは、おそらく自動翻訳機であるらしい機械を持ってきた。警官たちは、鈴木の会話をその機械に録音し、翻訳を試みたが、彼らの表情が晴れることはなかった。一語たりとも翻訳されることはなかったようだ。


「こちらへ来い」のような手振りで誘導された。

 彼らについていくと、警官の一人がパトカーらしい車両の後部座席を指差した。乗れということらしい。ちなみに、さっきまで輪になっていた群衆は既に解散していた。

 私の両隣に警官が座り、車両のドアが閉められた。パトカーっぽい車両が発車した。警察署かどこかに連行されるのだろう。


 所持品なし(全裸)、言葉不明(通じず)、世界状況不明、社会状況不明、住所不定、無職。


 え? これって、もうだめじゃないか? 完全に手詰まりでは? 新しい職場はどこなんです?


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