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最強のBランク暗殺者 ~腐敗した王宮を自主退職したら、面接で不採用にした才能の原石たちからの、逆スカウトがとまらない~  作者: 糸音
第2章 歴代最高の聖女

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剣聖と暗殺者の共闘


「――?! 何だお前?!」


 突如として背後に現れたフィリスに、ローブの者たちが問いかける。その問いの返しとして、フィリスは静かに剣を向けた。


「味方だ。馬車の護衛に専念を」


 突如として現れたフィリスに、一瞬困惑するも、フィリスの短い指示に、我に返ったように頷いて、馬車の方へと向かっていく。


 追いかけようと馬に鞭を入れる他のローブの男たちへ、フィリスが再び瞬間移動し、手綱を切って馬たちの制御を奪う。

 手綱を失った馬たちは、その場で暴れ出し、乗っていた男は地面に放り出された。


「この野郎!」


 攻撃の隙を埋めるように、ローブの男たちが立て続けに攻撃を仕掛けるが、フィリスはその攻撃の隙間を縫うように剣を繰り出し、男たちの利き腕の関節を斬る。

 

「ぐああああああっ?!」


 満足に剣を持てなくなった者たちが、崩れるように傷を抑えてのたうち回る。


 人を襲いなれているのか、ローブの者たちの連携は見事だったが、それでも『剣聖』の動きは抑えられない。連携で隙を潰そうが、わずかな隙さえあれば、そこへ連撃を叩き込むことなど、フィリスには容易い。


 連携でダメならば、同時攻撃。


 すぐさま動きを修正したローブの者たちが、今度は四方からフィリスを囲み、同時攻撃を仕掛けるが、



「はあっ‼」



 フィリスが正面の敵を横一文字に切り伏せながら、背後の敵の、その後ろに瞬間移動を繰り出す。

 斬った勢いのまま体を回転させ、一太刀の威力を持続させる形で、その場にいた全員を地に沈めた。


「まさかあいつ……ルーネス領の『剣聖』か?!」




 その戦闘を遠巻きに見ていた、遠距離部隊が、手に光弾を練り始めるが、その光弾ごと、見えない何かが掌を貫き、手首、肘、肩、と立て続けに激痛が走り出す。


「ぐあああああああ?!」


 見えない棒のような何かが、各部位を貫いたような感覚だ。


 矢じりのような傷跡から、肉の面が見えるが、その傷口にはまだ何かが刺さっている。

 その正体がわからず困惑している間に、今度は足に同じ衝撃が走り、遠距離部隊が次々と地に伏した。


「……?! う、上だ‼」


 倒れて空を見上げ、その時初めて、自分たちを襲った者の存在に気が付いた。

 上空には弓を横に構え、射撃体勢を取りながら戦況を見下ろすモルヴェントの姿があった。


 気が付いたときには、遠距離部隊も一人だけになっていた。

 残りの一人もようやくモルヴェントに狙いを定めるも、肩、膝、足首を立て続けに何かに貫かれ、激痛に苦しみながら地に伏せる。


 全員の無力化を確認してから、モルヴェントが『固定』で作った見えない足場を伝って、音もなく地上に降りてきた。


「お前たちには、俺の能力で作った見えない矢が刺さっている。矢は俺の意思でいつでも分解可能だ。失血死したくなければ抵抗するなよ」


 短く突きつけてから、モルヴェントがフィリスの方へ振り返った。


「これでいいか」

「はい。流石師匠。完璧ですね」


 短くそれぞれの戦果をたたえ合ってから、フィリス達は馬車を護衛していた者たちに、ローブの者たちを拘束するように短く伝えた。


 改めて挨拶をされ、フィリスの正体を認識した者たちは、すぐさま畏まった礼をし、言われた通り、賊たちの拘束に取り掛かるのだった。




 ♢ ♢ ♢




「この度は危ないところをお助けいただき、誠にありがとうございます」

「いえ、ご無事で何よりです。それよりも、この者たちは何者ですか?」

「『森羅活性教』の使いの者達かと。どこからか聖女様がお出かけになる旨が、漏れてしまったようでして……」

「『森羅活性教』……?」


 護衛隊の隊長と思われる男と、フィリスが挨拶を交わしていたところ、耳慣れない単語に首を傾げた。

 

 話せば長くなるのか、「詳しくは後程にでも」と、隊長が会話を切り上げ、フィリスもそれに頷いた。

 長旅の最中、襲われた後だ。まずは休息や安全地帯への誘導も兼ねて、ハンターギルドに招くのが筋だろう。


「賊の拘束が終わりました!」

「分かった。まずは先行してハンターギルドの方へ向かわせてくれ。距離を離してから私たちも続く」

「はっ!」


 報告しに来た部下に、隊長が指示を残すと、気持ちの良い敬礼をして再び仕事に戻っていった。

 その部下と入れ替わるように、上品な給仕服に身を包んだ女性が現れ、一礼してから報告する。


「聖女様が、是非とも対面でお礼をしたいと仰られています」

「まだ付近に賊がいるかもわからん。フィリス様、不躾ながら、改まった礼は、ギルドについてからでも――」

「付近に賊はいない。好きにさせればいい」


 隊長の言葉に、モルヴェントが割って入る。

 それに驚いた隊長が、少し目を丸くしながら「この方は?」とフィリスに尋ねた。


「ああ。別件で領地に招いていた、私の客人です。私の師匠にあたる方でもあります」

「剣聖様のご師匠様、ですか……! これは大変なご無礼を」

「師匠が大丈夫というなら大丈夫でしょう。私も聖女様の無事を直接お確かめしたい。この場で挨拶をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 フィリスの言葉に、隊長が目線で、給仕服の女性に合図を送ると、深く一礼してから馬車の方へと戻っていった。




 そして、馬車の中から出てきた女性に、フィリスや周囲の者たちが膝を折って傅く。


「この度は皆を助けていただき、ありがとうございます。フィリス様」


 上質な白の修道着を纏い、気品あふれる仕草で、それでいて敬意のこもった仕草でフィリスに一礼する聖女。


 そんな聖女の様子を、モルヴェントは少し遠くに距離を置きながら、静かに眺めはじめた。


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