アントガールズライブ
胸が高鳴る、これから友達の鹿島さん属するバンド「アントガールズ」が出てくる。
自分がやるわけじゃないが妙に緊張してしまう。
「柊、結局……最前列来ちまったな」
機材セッティング中に前へ詰めていたらかぶりつき状態だ、鹿島さんに引かれないか心配だ。
「俺心臓がヤバいわ」
「自分も」
何故か二人が緊張でガチガチだ。
照明が暗くなる、ステージにメンバーが入ってきて配置に着いたようだ。
(……始まる!)
アントガールズリーダードラムの圭子さんのドラムロールから始まりキーボードの鹿島さんが音を乗せていく……もうかっこいい……
ベースボーカルの清さんがベースを操り、ギターの紘子さんがジャジャン!と鳴らしてセッションみたいな導入から曲が始まった!
皆、高一同級生とは思えない堂々とした姿で目を奪われる。
ふと鹿島さんからウィンクを自分と福羽に貰った。
周りの観客もノリにノッている、身内贔屓だが一番盛り上がっているかもとさえ思えてしまう四人の圧だ。
あっという間の一曲が終わり拍手が起こる、そのまま圭子さんがスティックを叩き次曲に雪崩れ込んでいく、今度は紘子さんと清さんのギターとベースを押し出した曲で、清さんはよく弾きながら歌えるなと感心してしまう。
音楽は素人だが感じるとは、こう言う事かと圧倒されっぱなしだ。
横の福羽が静かだ?
「……おい、帰ってこい」
福羽はまた放心して旅立っていたようだ。
なんとか捕まえて戻す。
楽しく圧倒される時間はあっという間で二曲目の終わり、最後の盛り上がりを全楽器で作り上げていく。
ダン!と圭子さんドラムで締めて照明が明るくなる。
歓声と拍手が起きてメンバーの名前を呼ぶ声もする、鹿島さんも呼ばれて手を振り返している。
リーダーの圭子がMCをする。
「ありがとうございます!次最後インストナンバーですがクールダウンして頂けたら嬉しいです!」
圭子さんはそのままゆったりしたテンポのカウントを取り、鹿島さんとセッションが始まった。
割とスローな感じにキーボードの音色もピアノの音色に変わっている、ガラッと空気が変わり皆染み入るように静かに聴いていく。
清さんのベースと紘子さんのギターも静かに音を奏でる、特にギターのメロディを弾き続けるのは凄いのでは無いかと素人目に思える。
静かなインストナンバーだが、熱くなっていた場を清めていくような、鎮めていくような。
他のバンドには無い物を感じる。
歌が無いのに惹きつける魅力に息を忘れる程だった……
アントガールズ「ありがとうございましたー!」
無事にアントガールズは出演を終えて、裏に帰って行った。
ステージは次のバンドの機材セットに入る。
「……」
「おい!福羽!」
「……はっ!」
「何回飛ぶんだよ……終わったぞ」
「いやぁ……凄かった……」
福羽は完全に意識がどっか行っている、無理もない自分も見惚れ聴き惚れていたのだ。
本当に何度も同い年かと思った。
鹿島さん、圭子さん、清さん、紘子さん、四人に感謝すら贈りたい気分だ。
周りの観客も「インスト凄かったな〜」「ガールズバンドやるなぁ!」と高評価を得ているようだし、なんだか誇らしい。
喉がカラカラだ、自分のバイト時間もあるから最後にドリンクだけ買っていこうとカウンターに向かう。
カウンターでサトルさんに声を掛けられる。
「柊君、福羽君どうだった?楽しいだろ?」
「ハイ!」
「凄いっす!」
ハハハとサトルさんは注文ドリンクを渡してくれて言った。
「定期的にやるイベントだからいつでも来なよ」
「柊、俺ライブハウスにハマりそう」
「あはは……ふぅ、最後まで見たいけど時間だわ、行かなきゃな」
「残念だな〜俺が最後まで見届けてやるからな!」
「ああ、頼むよ」
アントガールズのメンバーには会えなさそうだが、またどこかで感想を言おう。
福羽とサトルさんに別れを告げてライブハウスを出る。
(外、暑いな……でも中の方が熱かったな)
身体に残る観客の熱気とバンドの音圧が身体を震わせライブを観ていた事を、現実のものだと知らせている。
初めてのライブハウス、凄い景色だった。
一生物の体験にまだ胸が高鳴る。
これはバイト中ハイになるかもな……
そんな事を思いながら店に向かった。




