ライブ
——チッチッチッ
カウントに合わせて演者も観客も勢いよくスタートを切る。
身体に響く音、抜ける音、ノリたくなる音、聴きたくなる音。
とにかく音の圧力が違った、これが生の演奏と観客の熱気。知っている曲のカバーだが初めての体験で別物に聴こえてくる。
とても楽しい、ノリかたとかは分からないが足元から身体が自然に動く。
またバンド全体がカッコいい、今演奏中のバンドはトップバッターだが、この後も続々と控えて鹿島さん達アントガールズも迫ってくる。
「イェー!!」
真横でノリにノッた聞き覚えある声……
パッと見れば福羽がノリノリだった。
「いつのまに」
「悪い遅れたな!スッゲーなライブハウスって!」
目をキラキラさせて福羽は肩を揺らす。
福羽の性格と言うか空気感ならライブハウスのノリに合うんだろうなと、そう思った通りの馴染み方してて少し笑ってしまう。
だが、この空間は楽しまなきゃ損だろう。
トップバッターの一曲目が終わり間を置かず二曲目に入った、先程の曲とは違うがこちらもまたしっかりしたノレる曲調で、観客も熱気が上がっていく。
ライトに照らされるボーカルは汗で煌めく、一杯練習して恥ずかしさとか不安乗り越えて立ってると思うと神々しくも思える。
(バンドの追っかけが生まれるのも分かる気するな)
これまではアーティストやバンドって流行りの物と言うイメージしか無かったが、目の当たりにして音圧を受けると少し変わる。
やはり音楽、芸術と言った見えるけど見えない部分の力を感じてくる。
二曲目が終わりのバンド皆でジャン!と合わせてMCが入る。
「いやートップバッターで緊張してますが頑張ってます!」
今のバンドは大学生くらいだろうか?
「またスパイスボックスさんのイベントでやらせて貰えて、嬉しいですね〜それじゃあ僕らのラストお付き合い下さい!」
そう言ってドラムカウントが始まり演奏の始まり、少しテンポが変わって爽やかな曲調となる。
夏をテーマにした歌詞だろうか、所々に海やプールと言った単語が混じる。
最後まで堂々と演奏仕切ってトップバッターのバンドはお辞儀で締め括っていった。
観客の盛り上がりは混じっていて気持ちいい、横の福羽もずっと揺れてる。
すぐに次の機材セットが始まる、そのまま待つ人も一度離れる人も出てバラけてフロアが少し広くなる。
「柊、俺もう一杯飲み物買うわ」
自分は見惚れていて飲むのを忘れていた、またまだ氷は溶けてしまったコーラが残っている。
「じゃあ自分ここにいるよ」
「サンキュー、すぐ戻る!」
福羽はドリンク列に並びに行った。
(しかし、凄いもんだなバンドやるって)
まだ一組だが発するエネルギーが凄いのだ、演者も観客も。
ふと見渡せば、時間と共にお客さんも増えているようでバラけた観客がまた一つの塊になり出している。
福羽も帰ったタイミングで、ステージセットが出来たようだ。照明が変わる。
今日二組目のバンド、さっきは男性三人組だったが今度は男性二人と女性一人の混成バンドか。
伸びのある女性らしい声で二組目がスタートした。
どうやら女性ベースボーカルのようだ、弾きながら歌う姿が妙に惹かれる。色気のあるお姉さんと言う感じか。
アントガールズの練習見た時も、ベースボーカルで清さんだったが、同年代なので可愛らしいの方がまだ強かった。
この二組目のバンドは全面にお姉さんを押し出した配置と曲、高校生の自分にはなかなか刺激的だ。
「お、お、おぉ……」
福羽も同じ感じのようだが、若干色気に当てられおかしくなってる。
「おーい帰って来い」
「……はっ!ヤバいなあのお姉さん」
自分は姉がいて耐性があったから耐えれたが……
そうこうする内に一曲演り終えて、色気ある雰囲気から一気にカッコいい雰囲気に変化した。
凄く激しい演奏に変わり一曲目の色気が無かったかのような、ロックバンドと呼ばれるかっこよさで観客を煽っていく。
古参のファンも居るのか名前も飛び交う。
割と自由な空間が出来上がっていく、ベースソロからギターソロへと綺麗に繋がり歓声が起きる。
「お姉さん……カッコイイ……」
福羽はフリーズしてしまった、気持ちはわかる。
それ程、ライブ初体験の自分達には圧倒される力があった。
二曲目が終わった、お姉さんバンドはここで終わりのようだ。
観客に投げキッスをして魅了している、福羽も魅了されているようで口が閉じない。
「おい、次だぞしっかりしろ!」
「……はっ!また意識持ってかれてた!」
そう、自分と福羽の今日のメインは次のバンド「アントガールズ」なのだ。
機材セットの時間に少しでも前にと、空いた空間を二人詰めて行った。




