光るもの
——放課後
金曜日まで乗り切って皆開放感に満ち溢れている。
夏休み明けの初っ端一週間、さすがに身体に堪える。
まだまだ外は暑い、帰りが億劫になる。
空には夏はまだ終わらないとばかりに入道雲が形を成して浮かんでる。
(今日バイトは無いし……あ、ノート買わなきゃ)
やる気は低調だが準備だけはしていようと、スーパーに寄る。
二階の消耗品や日用品が置かれているフロアに上がって、文房具コーナーへ。
五冊セットの汎用大学ノートを手に取り、他に必要な物が無いかを探していれば声が掛かった。
「あれ?柊君もノート買いに来たの?」
声の主を見れば微笑む鹿島さんがそこに居た。
「あ、鹿島さん」
「勉強もしなきゃだもんね〜」
ニコニコとノートを掲げて見せてくれる、夏休み明けの疲れを見せない上に、明後日にはライブも控えている彼女は凄いなと尊敬してしまう。
「鹿島さんライブ明後日だけど大丈夫なの?」
「これから帰って自主練するよ〜夜はリモートセッションするけどね、楽しみだなぁ」
緊張感では無く楽しみであると言える器が凄いのだ。
「鹿島さんは凄いよね、ライブってあのライブハウスに人が大勢集まるんでしょ?自分は緊張で無理だな」
「まあ最初の頃はガチガチだったけど、今は楽しいかな?練習した曲でリアクションが分かるって気持ち良いよ!」
この人はプロなんじゃないかと思えてしまう。
やはり、自分とは別方向だなと思っていたら……
「柊君の方が凄いけどね」
「へ?」
「だって一人一人の接客して仕事してお金貰ってるじゃない?プロだよね〜」
サラッと言われたが、そんな大層な事はしていない。
「あ、今そんな事はとか思ったでしょ?ダメよ、ちゃんと仕事してるんだからお店に失礼よ!」
なんだか可愛らしく怒られてしまった、でも鹿島さんの言う通りではある。
つむぎ亭スタッフとして胸を張れとは父も母も似た事を言う、あまり後ろ向きも良くは無いだろう。
「まあ、程々に胸は張ります」
「うん、よろしい〜あ、そろそろ行かなきゃ。また明後日ね〜待ってるよ〜」
いつものほわほわモードで鹿島さんは去って行った、びっくりした、まさかこんな所で出会うとは。
頑張ってる同級生が居る、自分ももう少し頑張ってみようか。
レジに向かい会計を済ませて帰路に着く。
スケジュールと相談して課題や自主学習の時間を決めたらやるだけだ。
一人では腰が重いが、幸い頑張ってる人が身近に居るから刺激となっている事実。
これを単独でやれるようになりたいなと思うのであった。
「ただいま」
家に着くが人の気配がしない、どうやら誰も居ないようだ。
なんだか久しぶりの家で一人きりな気がする。
母により夕飯は用意されていた、温めるだけだからありがたい。となると今日はしばらく一人きり確定か。
姉はいつ帰るか分からないが、一度外に出ればとことん長いので父に怒られている。
自室に入り着替えを済ませて一息吐く。
鹿島さんから貰ったライブのフライヤーを眺めながらベッドに横たわる。
「こういうイベントってどんだけの人が関わってるんだろう」
つむぎ亭十周年イベントも店全員プラス福羽だったが、ライブなんかもっと多くの人もお金も掛かってる気はする。何かをするには相応の対価と人の力が必要なのだろう。
そんな場を作られてフライヤーに載るバンド達が光を浴びる、自分からは想像し難い世界だった。
よく「裏方で良い」と言う人も居るが、その裏方に注目が集まらないから下、と言う訳では無い。
つむぎ亭のような飲食店なら店全体が裏方で、光を浴びるのは料理である。
裏方の力があって生まれる事は忘れないでいたいものだ。
「……光を浴びるか」
自分の中でぐるぐる考え込んでいた中に引っ掛かる何か……
「……よし!決めた!」
起き上がって机に向かいメモ帳に「光」をテーマで色々書き出してみた。
試作で作った新メニューを浮かべながら、試食した味を思い出しながら、店を想いながら。
時間を忘れて新メニューの名前を絞り出していった。




