二学期の始まり、新たな想い
「福羽……なにかあったか?」
帰り道、まだ何かを考える福羽に聞いてみた。
「……彼女達頑張って作り上げてるじゃん?……で、柊もつむぎ亭で打ち込んでるじゃん?……俺だけふわふわしてるなぁってな」
いつも明るく中心に立つ福羽が弱々しく見えた、何故そこまでに至ったのか理解ができなかった。
「何言ってんだ……?」
「いや、俺も何言ってんだか分かるんだけどな。ちょっと考えちまうと言うか」
いつもの元気では無い、だが本人のメンタルの問題だ。
手助けはするが、今は見守るべきだろう。
「明日から学校なんだ、切り替えろよ」
バンと福羽の背中を叩いて喝を入れた。
それで和らぐならば良い。
福羽は少し笑い背中を叩き返してきた。
——夏休みの終わり、学校の始まり登校日
まだ午前中だけだから今日はマシだ。
そんな事を考えながら靴を履く。
「行ってきます」
「いってらっしゃい、優斗お昼はどうする?」
「あぁ、誰も居ないか……店で食べようかな」
「わかったわ用意しとく」
母とやりとりして学校に向かう。
八月最終週だが、しっかり暑い。水分補給を怠ればすぐ熱中症だ、いつまで続くのかこの暑さ。
茹だる暑さに参りながら、久しぶりの制服に違和感を感じる。
(あれ?服小さくなった……?)
入学から夏を過ぎて感じた自分の身体の成長、もしかしたら背が伸びてるかもしれない。
少し大人に近づいた気になった。
学校に着いて久しぶりのクラスメイト達に囲まれる、皆夏休み始まりの時につむぎ亭十周年に来てくれたのだ。
「あの、皆遅くなったけど……本当に来てくれてありがとう」
良かった!美味かった!頑張ってたな!
様々な言葉を掛けられて照れてしまう、そんな中で福羽も登校してきて更に塊が大きくなる。
「光司ー!お前も頑張ってたなー!」
そんな声から始まり何事だと困惑している。
「ほら、店のイベントだよ」
笑いながら福羽に伝えると惚けた顔が笑顔に変わる。
「だろ!?忙しかったが頑張れたぜ!お前たちのおかげでな!」
その一言にクラスが湧く、やはり福羽はクラスの中心だと思わされる。
ふと、視線が鹿島さんと合う。
鹿島さんは天使のような笑顔で手を振り見守ってくれている。
「お?なんだこの騒ぎは、HR始めるぞー!?」
担任が現れ解散となる。
(びっくりしたな……でもありがたい事だ)
改めてつむぎ亭の魅力が残る物なんだなと、店の強さが知れた。
本日は登校して二学期への連絡事項や配布物だけで授業は無い、部活が無ければ下校だ。
「いやぁさっきは驚いたなぁ柊?」
福羽が終わり次第で近くに来た、半分以上は福羽が蒔いた種なのだがそれもありがたい結果になった。
「まさか夏休み最初の頃だったのにな、嬉しいもんだ」
「それだけインパクトあったんだぜ」
「それもあるけど仕掛け作ったのは福羽だぞ?」
「え?」
「え?って、福羽が声を皆に掛けてくれたからだよ」
福羽はキョトンとしている、まさか無自覚にやっていたのか?そうだとしたら人を惹く天性の才だろう。
「俺が仕掛けたか……」
「そうだよ、自信持てよ。全く気にせず突っ走るよな……」
「だって面白い事なら皆とやりたいからな」
「……素敵な奴だよ福羽は」
純粋さが長所だと短い付き合いながら、濃い時間を過ごしたおかげでわかってきた。
昨日の暗い影を感じた顔はいつもの明るい笑顔になっている。今朝の囲まれと今のやり取りで少しは晴れたようだ。
「柊君、福羽君」
声を掛けたのは鹿島さんだった。
「朝凄かったね〜でもしょうがないよね、楽しかったもん!」
こちらも無垢な笑顔だ、眩しい。
それはそうとライブについて思い出す。
「鹿島さんライブは次の日曜日だよね?何時から?」
「スタート時間は十二時から十三時の間になるかな?その日は夜までバンドが繋いでくライブハウスイベントなの」
「あ、思ったより早いんだね」
「夜は未成年バンドはだめだからね〜サトル店長の方針なの、リスクヘッジだーって」
確かにその方が色々安心は出来るだろう。
「詩華ちゃん!俺行く!」
「ほんと!?嬉しいな〜気合い入れて弾きます!」
福羽は参加決定だが……
「柊は?バイトか?」
「夕方からだから観たらすぐ抜けで良いなら……」
「無理しないでね?今後もライブはやるんだから?」
可愛らしく心配してくれる、耐性が無い男ならイチコロだ。
自分には姉が居るから強耐性がついているが……
「うん、でも自分も観に行くよ。やっぱりアントガールズ良かったしね」
「うわ〜嬉しい!メンバーにも伝えとくからね!」
こうして夏休み明けすぐにイベントが決まった、アントガールズのライブを観る。
しかし、不思議な事に鹿島さんは自分と福羽にしか声を掛けてる様子が無い。
何か制限があるのだろうか?
謎は残るがその場は解散し、帰宅となった。




