初めての生演奏
——日曜日
郊外にある貸しスタジオ前、福羽と一緒にまごまごしている。
「入って良いのか?」
「わかんないよ、だって地下……扉は閉まってるし」
まごまごの原因は用がなければ入れない雰囲気の店構えだった。
てっきりカラオケボックスのような建物かと思いきや、実際は小さなライブハウスみたいな構えで初見では狼狽える。
「ライブじゃなく練習って言ってたよな?」
「ああ、確かにメッセージもスタジオってあるし地図も合ってる、店名も……(玲音)だ」
玲音、それが指定された店。
外から地下に降りて入るタイプのライブハウスにしか見えない。
とにかく時間は来てるし、まごついても仕方ないので意を決して地下に続く階段を降りる。
入り口扉は更に濃い、重たそうな黒を基調とした扉にライブを行うポスターが沢山貼られてる。
「目の前だと更に緊張するな……」
「お、closeの看板だぞ?柊、間違えたんじゃないか?」
「あれ?でも店名は合ってるんだが……」
福羽と困っていた時、突然扉が開く。
「ふんふーん……うわぁぁ!!」
「わあぁ!!」
「おお!?」
中から出てきた人が叫び、こちらも揃って驚く。
「心臓止まるかと思った……鹿島ちゃんの友達だったんだな……」
「……すいません、ウロウロしてて」
「ごめんなさい!入り方に迷ってて!俺、福羽と言います!こっちは柊!」
「ごめんな、今日はステージ貸しだけだからcloseにしてたまんまだった。僕はこの玲音の店長、松本 悟だ。サトルで良いよ皆そう呼ぶ」
スラッとした体型にオシャレな黒シャツと編まれた髪が似合う、バンドマンっぽいと言うのかその界隈の人と言った印象だ。
「今ちょうど鹿島ちゃん達は裏で進行チェック中だし、ほらここ座りなよ」
店内に案内されて目を見張る、ベースは暗い空間だが浮き出すように照明が当たりステージが際立っている。
広すぎず狭すぎず、若干圧迫感を感じるライブハウスのイメージままである。
促された席はドリンクカウンターになっておりステージから遠い。
カウンターに入ったサトルさんは手早くジュースを出してくれた。
「ほい、驚かしたお詫び」
「え、良いんですか?」
「ありがとうございます!」
すぐさまに飲み出す福羽を見て、こいつはストレートに生きてるなと思う。
「ははは、元気な子だね!柊君も遠慮しないでよ。そろそろ鹿島ちゃん達出るから」
今はステージに誰も居ないが照明が切り替わっている、何かをチェックしてるようだ。
「僕、初めてライブハウスに来たんですけど静かなんですね」
「君ら初めての箱入りか〜懐かしいな、僕も友達に誘われてだったな〜今は静かだけどすぐ音を感じるよ、スマホやイヤホンの音源と別物の生の音をね……っと、観ててごらん」
サトルさんの一言と同時に照明が落ちた、急な暗さに目が慣れない。ステージに人影だけが見えて……ドラムの音から突然の爆発を見せた。
ステージ全体が白く照らされ四人の女の子達が楽器を扱う。
ドラム、ベース、ギターそしてキーボード、そのキーボードの位置によく知る顔がある。
音楽は詳しくはないけども生の重音は感じられる、身体全体に浴びる音が鼓動を早める。
目を離せずにただ食い入るようにステージを観る。
「めっちゃカッコいい」
福羽も感じているようで、声が漏れてる。
一曲を演奏仕切って最後にバンドが音を合わせて区切られた。
自然と拍手をしてしまう、福羽も同じようでキラキラした目で見ながら拍手をしている。




