初めての墓参りの終わり
道の駅を出て高速道路の入り口目指す途中。
バリバリ
姉から何やら音がする。
「茜、お土産じゃないの?」
「お母さんもハイ」
どうやら道の駅で自分のお菓子を買っていたようだ、抜け目がない。
「優斗も要る?」
姉にしては珍しいお菓子を分け与える行動に引っ掛かるが、素直に頂いておいたのが間違いであった。
「うわ!辛い!!」
刺すような辛味があるチップスを食わされる……
「青唐辛子チップスだって」
「良い辛さね、茜は私と同じで辛いのイケるもんね」
「姉ちゃん、渡す前に言ってよ……」
涙目になりながら水を飲み落ち着かせたいのだが、水を飲む事で際立つ辛味がキツい。
「お父さんも辛いのはダメよね〜」
「ん〜まあ舌を麻痺させたくないからね、嫌いではないが長い事、辛いスナック系は避けてるね」
「さすがお父さん、シェフよね」
そんなやり取りをしている内に高速に乗って、帰路を進みゆく。
遠ざかる実の両親の墓の方を見る。
(楽しんでるよ)
そう墓の方に向け呟いた。
家族の在り方としては、やはり一つの幸せの形をしていると思える。やはり今を生きてる自分が楽しいと思った事が、この家族から始まる。血の繋がりは薄くとも気になる事は無い、実の両親は実の両親、今を生きる両親と姉も等しく家族だと墓参りで強く感じている。
行きと帰りは時間の流れが違う気がする、高速に入り予定していたサービスエリアで昼食休憩をして、ちょっとお土産覗いてまた車へ。
そして気付けば自分の住む街の名が看板に表示されている。
「なんか……あっという間だった」
ポツリと漏れ出た一言に、運転中の父が反応した。
「そうだな……私達にとっても色んな意味であっという間さ」
父にとっては妹の急逝から自分を引き取る覚悟をして、自身の店つむぎ亭もスタート、そして十年。姉や自分を見守りながらも店を作ってきたのはあっという間に思えたのかもしれない。
少なくとも自分の比ではないだろう。
「父さん……実の父さん母さんってどんな人だったの」
やっと言葉に出来た気がする、凄く知りたかった訳では無いが、出自を聞かされたあの日から僅かに心に掛かり、でもなんとなく躊躇っていた事が今日の墓参りで溶けた。
「……よく笑う二人だった、優斗の両親はパティシエでな、ホテルの中に入るような高級洋菓子店の担当をしていたんだ」
「二人共?」
「ああ、二人はそこで出会い結婚して優斗が産まれた」
「パティシエか……」
イメージの世界だが表に出す商品は華やかに見せる、その裏で多大な労力が注がれている職人のようなイメージだ。
「私もシェフをやるから分かる、決して楽な労務環境では無いし、食の安全に掛かる責任も重い。本当に苦労して二人はその道を登っていった」
「じゃあ父さんと母さんと変わらないね」
一瞬静まった、運転席の父の表情は見えないが驚いたような気がした。
母は少し笑っているように見える。
「……そうだな、そう言ってくれたらやってきた甲斐があったな」
「そうね、私達も似たものだからね」
「お母さん達はどこでどうやって知り合ったのさ!」
姉が乱入してきた。
「いや、茜……今じゃなくとも」
「良いじゃない、私が答えてあげるわよ」
「母さん……まあ良いが運転中だから、私は答えられんぞ」
「あら、お父さん恥ずかしがっちゃって、優斗には答えたんだから茜も知りたいわよね?」
「そりゃあ私も聞いた事無いもの、良い機会だしね!」
姉も知らない父と母の馴れ初め、気にはなる。
「うふふ、お父さんと出会ったのは横浜の三つ星ホテルよ、お父さんはホテルレストランの調理見習いで私はそこのフロアサービスに配属されたのよねぇ」
両親共にホテルのレストランで学んだのか、なんだか今のつむぎ亭の姿に納得をした。
街の洋食屋としても少し高めな値段設定、しかしそれに見合う料理とサービスの質は見ていても贔屓なしで分かる。
「何年も一緒にやっていたらそりゃあ仲良くはなるわよね?そしたらね、ある日お父さんがホテルの最上階に呼び出して指輪を……」
「お母さん、もう良いんじゃないかい?ほら高速降りたらすぐ着くよ」
父は焦りが丸わかりで早口に話を切ろうとする。
「お母さん、帰ったらお父さん居ないとこで教えてよ」
「ええ良いわよ、あ、優斗も参加する?」
「ん?ん〜聞いてみたいかな」
父は黙ってしまったが、帰れば話の続きが聞けるだろう。
今の両親、実の両親。
自分には二つ分の幸せがあると感じられる二日間であった、見慣れた街に入り、住む家に着き、荷物を降ろして、自室の椅子に座り初めての墓参りを終えた。




