お土産選んで帰ろう
「さあ、行こうか」
墓参りが終わり後は帰っていくだけだ。
「道の駅が帰り道にあるみたいだ、まず寄ってくか茜、ナビ頼む」
「道の駅〜?高速のサービスエリアでも同じじゃないの?」
「より地元に関わる場所だからな、私も見ておきたいのだよ」
父は職業柄食材に対する興味を持ちやすい、種類や鮮度や大きさや産地や……つむぎ亭では決まった食材をベースにしているが、期間限定物も出す事はある。
大体は父が見つけた食材を使用する為で、レギュラーメニューには決してならない、言わば趣味を捩じ込んでいるのだ。
今回も、物によったら買い漁るかもしれないと思っていたら……
「お父さん、お盆中だから営業始まる時には食材痛むからね?」
母が先回りして釘を刺す、今回は普通にお土産品をみるだけで終わりそうだ。車を出して数十分、大きな施設に着く。
「へー、思ったよりデカいじゃん……あ!優斗あれ!試食が沢山あるわ!」
姉が手を掴み走りだしたので引きずられていく。
「あらあら、結局テンション上がるのは茜なのよね」
「ああ、そして優斗が連れてかれる……昔から変わらないな」
陳列される地域の特産品棚に試食用の爪楊枝で、あれやこれやと食べる姉。どれも満足いく品らしい。
「んぁ!!……優斗これ凄いわよ!」
差し出されたのは、ししとうか?小さな細いピーマンみたいだ。醤油漬け青唐辛子とある。
特に警戒なく口にする、そして激しく後悔した。
「……かっらい!!」
小さなカケラで悶え痺れ刺す辛さが口を支配する。
汗が吹き出て止まらない、ナチュラルに何を食わすんだと姉を見たら二口目に挑んでいる。
信じられない行動だ、姉は辛い物好きではあるが、このレベルは怖すぎる。
「私コレ買うわ、久しぶりに出会いが会ったわ」
正気か?と思うが、自身で消費してくれればまあ良いだろう。ふと両親はどこに行ったかを探す。
「ん〜居た」
両親は茶のコーナーで真剣に悩んでいる、種類が多く緑茶に止まらない茶が付くラインナップだ。
「父さん、母さん、凄い数だね」
「おお優斗、ほら飲んでみな」
小さなカップに入った緑のお茶、辛くは無いはずだ。
味を確かめるように一口含む、非常に上品な苦味と後追いで甘さが感じられる。お茶とはこんなに美味い物なのか、自分の勉強のお供に良いかもしれない。
「自分、これ買おうかな。値段も手頃だし」
「あら、良いんじゃない?落ち着かせるお茶は頭のリセットに良いわよ」
母のカゴには何種類かキープされている、母も気に入ったようだ。
「茜はどこだい?」
父は辺りを見回しているが見当たらない、先程まで近くのコーナーに居たのだが……
とりあえず、自分達の物を選んでいれば見つかるだろうと放置になる。
父と母を伴い焼き菓子や煎餅と言ったザ・お土産のコーナーに来る。こういう所のお土産は何かしらネーミングに力が入っている、これも売る為の技なんだろう。
目に止まる箱があった、「おみくじクッキー」とパッケージにはあり中身は開けたら運勢が印字されてるクッキーが出るらしい。
(福羽はこれで良いか)
サクッと決まった一つ、後は鹿島さんへのお土産だが、福羽みたいにこれで良いかとは出来まい。
女性目線の力を借りたいが姉は行方不明だし、母は世代の差がでそうだから二の足を踏んでしまう。
父はまた、狸の置物を眺めてる……
そんなに好きなのか?
迷いながら棚を見ているとカラフルな瓶が目に止まる、地域特産であるハチミツを使用した飴の詰め合わせらしい。
(これ良いじゃないか、なんか可愛らしいし飴なら日持ちするし)
「ほう、鹿島さんにかな?」
「わっ!父さんいつの間に!」
狸の置物を見ていた父が横に居た、母のそんなのは要らんと言う圧で退散したようだ。
「優斗も考えるようになったなぁ」
「いや、ただカラフルな飴だなって」
「良いじゃないか、直感は大事だよ」
父はカゴに入った福羽用クッキーと鹿島さん用の飴を見て考える。
「お二人には素晴らしいフレーム頂いたからね、私からのお土産も入れてくれよ」
「え?良いの?」
「もちろん、皆で分けるんだよ?」
そう言って少し棚から選んだ父は大容量のお饅頭詰め合わせを追加した。
「母さんは?」
「あそこで野菜の直売所見ている、行ってみるか」
悩む母の近くに行き、さまざまな採れたて野菜が並ぶコーナーに来た。想像以上に普通のラインナップだ。
「あら?優斗にお父さんも来たの?」
「後はお母さんと茜だけだよ」
「あらあら、迷っちゃってねー鮮度良くて安いのよ、形が変だったりするからね」
確かに見た感じ不揃い品や形の曲がったきゅうりばかりだ、味は良いのに規格外で市場には出荷出来ないのだろう。
「……よし、カレーにしちゃおうかしらね」
「母さんはお土産じゃなくて良いの?」
「渡すとなると持てないわよ、お茶はあるから後はお話でね?」
女性は土産話で盛り上がるのだろうか、少し理解が出来なかった。
「じゃあ、後は茜なんだが……あ、あそこに居た」
父が指した先は鶏のオブジェがあるコーナーだった。
三人で様子を見に行くと姉は座り込んでカゴを見つめて笑っている、何があるのか?
「姉ちゃん何笑ってんの?」
「優斗、ほら」
姉が見せたのはピヨピヨと鳴くひよこの群れだった、まさかこれもお土産なのか?
「卵が売ってるんだけど持って帰れるか悩むのよね」
看板には朝採れ卵売り切れ御免、と書かれており、人気なのか数少なくなっている。
「加工品は幾つか入れたけど卵本体どうしようかな〜」
カゴにはこの卵を使った茶碗蒸しパックや卵酒なんかもキープしている。
「うーん、ぶつけなければセーフじゃないの?」
「そうよねぇ……よし!頑張ろう!」
姉は決意をして卵を1パック確保した。
「旅館で食べたのが良かったのよね」
確かに朝旅館で食べた卵かけご飯は格別であった、ものが違うとはあの事だろう。
皆が悩みつつ買う物は決まり会計して、道の駅を出る。
荷物を整理して車に乗り込んだ。
「さあ、後は帰りにまたサービスエリアで休憩挟んで夕方くらいには帰れるだろう」
帰りもこのまま父が運転するようだ、お疲れ様だ。




