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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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本当の

 一つ一つの量は少なくとも集まれば相当な量となる。

 抑えたつもりだったが満腹感も満足感も凄い、朝から贅沢だ。

 最後に姉が食べ終えたが……やはり取りすぎたのか動けないオーラを出している。言わんこっちゃない。

 まだ時間はあるので腹ごなしに温泉入ってからチェックアウトする予定になった。

 豪華な夕食から温泉に入り、レベル高い朝食から温泉に入る……なんと贅沢なんだろう。

 待ち合わせはロビーにして各々別れて、朝風呂を堪能する。

 昨夜は星だったが、今は青空が見える。

 いよいよかと実の両親の墓に参る、よく考えたら顔もわからない。それでも実の両親であり母は今の父の妹だ。

 軽く入浴しリラックスして部屋に戻る、部屋では荷物を纏めて行ける準備が出来ていた。

「そろそろ行くか、優斗」

 父が荷物を持てと渡してくる、母も姉も出発の準備が出来ているがコレは自分のタイミング待ちだろう。

 迷いは無かった。

「うん、行こう」

 旅館を出て車に向かう、今日も日差しが強くなりそうだ。

「旅館良かったわね〜また来たいな」

「茜なら友達と来たら良いじゃないのよ」

「え〜それも良いな、でも家族でってのが良いのよ」

 姉はくるくる回りながら言う。

 確かにあまり無かった事だから今後もあれば良いなとは思う。

「だが現実的に茜は就活だし優斗も進路の時期がすぐだからな、あまりやれてやれなかったのが申し訳ないな」

 父は表情を曇らせたがすぐに切り替えている。

 仕方がない事だ、姉も自分も幼い頃から両親がつむぎ亭を営業する姿を見てきている。

 遠出をするには始まったばかりの店を放置出来なかっただろう、その中で最大限に遊びに行ける時は連れて行ってくれた。

「じゃあ私達がいつか連れてくわ、ね?優斗」

「うん、まあちゃんと就職出来たら」

「あら、嬉しいわ。けど働き出したらあなた達の生活があるんだからね?」

「そうだぞ、気持ちだけ受け取っておく。ありがとうな茜、優斗」

 笑いながら父は車のエンジンを掛け出発した。


 車を走らせ小一時間、両親の緊張が伝わる。

 姉も察したのか静かだ。

「……見えたぞ優斗」

 目の前に霊園が見える、昨日の母方の方よりは小さな霊園だ。

 (あそこに実の父さんと母さんが居るのか……)


 駐車場から管理所に向かい、お参りの道具を借りて墓並ぶ道を歩く。皆言葉は無い。

 父が足を止め言った。

「ここだ」


 柊家乃墓

 父方の先祖が眠り、その中に実の父と母が眠っている。

「ほら、ここよ」

 母が墓石に眠る者の名を記した箇所を指す。

 柊 優介

 柊 沙樹

「この名前が……父さんと母さん?」

「そうだ、優斗の本当のな。そして沙樹は私の妹だ」

 顔は覚えていない、それくらいに小さな赤ちゃんの頃に逝ってしまった実の父と母。

 墓石を掃除して華と祈りを捧げる。

 自分の事ながらイマイチピンとこないのは、記憶の中は今の家族で一杯だからだろう。

「せめてもう少し触れ合ってたらな……」

 自然と言葉が漏れる。

 十六歳になり明かされた本当の関係、血よりも濃い時間で過ごした事に変わりはない。

 ただただ今は冥福を祈るしか出来ない。

 

 (本当の父さん、母さん。俺、幸せにやってるよ)

 実の両親にそう報告を行った、嘘でも建前でもない本心を墓石に向けた。

 蝉の声だけが響き、照りつける太陽と熱気が身体を包む。

 僅かに吹いた風がいつもの風とは違う優しい感じがした。


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