二日目の散歩とビュッフェ
翌朝、なんだかんだ疲れはあったのか寝るのはスムーズだった。それでも疲労度が運転した三人よりは軽い物だろう、一番に目が覚めた。
スマホを見ると朝六時になったばかりだ、廊下から中居さん達は既に動き出してる音がする。
このまま籠るのも勿体無い気がして静かに布団を抜け、部屋を抜け出した。
自動販売機でジュースを買い、周辺を散歩する。
「あら?柊様お散歩ですか?」
昨日から担当してくれている中居さんだ、名前を覚えられているのに驚く。
「ええ、軽く十分程ですけど」
「それなら玄関出てぐるっと左に周ってみて下さい、庭園に出れますので散歩にはちょうど良いかと」
「へぇ庭園……ありがとうございます。行ってみます」
互いにお辞儀をしてから外に出る、朝の空気もだがこの地域の香りと言うべきか違いを感じる。
日は登りつつあるが、まだまだ涼しく適温だ。
勧められた庭園は専用入り口で、旅館敷地に繋がるようだ。砂利を踏む音が心地よい、見たことない花もただ咲くだけでなく道のパーツとして一体化されている。
ふと藁の衝立がうまく植栽でカムフラージュされているのを見る、位置的に柊家の部屋になるのか。部屋から見た景色と庭園から見た景色が、互いに見えないようにされている。当然プライバシーの問題だろう、外から丸見えで部屋見られるのは困る。
少し歩き進めたが想像より広いようで、別れ道にはミニ登山道の看板もある。裏手の山も敷地のようだ。
朝の時間だからか非常に気持ちが良く、身体を動かせて血も巡る。様々な人工物と自然が融合した庭園アートを堪能して旅館に戻る。
「あ!優斗どこ行ってたのよ!」
姉が起きて詰め寄られる。
「おはよう、外の庭園周れたから行って来たんだよ」
「んもーメッセージくらい残しときなさいよ〜全く」
何故かぷりぷりする姉だが、心配から来てるんだろう。
次は気をつけよう。
「良かったかい?優斗」
「うん、なかなか綺麗に整備されてるし山にも行けるみたいだね。登山道があったよ」
「あら、凄いわね〜登山客も来るのかしら」
「いや、子供でも行けそうなミニ登山道だよ」
「おはようございます柊様、朝食のご用意出来ております。こちらの引換券でこのフロア奥の大宴会場お使い頂けます。」
貰った券には「ビュッフェチケット」と書かれている。どうやら朝食はモーニングビュッフェスタイルなのか。
「良いじゃん良いじゃん早く行こう!」
言い終わらぬ内に姉は行ってしまう、やれやれと皆追いかけた。
大宴会場はテーブルスタイルで和風ビュッフェのようだ、沢山の小鉢が並びご飯に味噌汁に漬物。
パンや目玉焼き、ソーセージなんかもある。
「良いわねぇおばんざいビュッフェ体験したかったのよ〜」
母はウキウキでお盆を取り吟味していく、姉はもう山盛り取って席を確保していた。
「ふふ、優斗は一つ一つ良く見て見るんだよ。簡略化してるけど質を落とさない旅館のビュッフェは凄いよ」
(父さんがわざわざ言うのは相当なのかな?)
お盆を持って進行方向を進む。
ザ・和のラインナップで昨夜に出た小鉢ももちろん、ひじき煮やカボチャの煮物に肉じゃが。
どれも少量ずつ並び迷わせてくる、ご飯も白米と炊き込みがありお供に漬物も数種類に海苔や納豆、朝採れ卵なんかもある。味噌汁も何か香りから違う、豆腐とワカメが入っているようだが……
「ふむ、やはりこの旅館は出汁を引いてるね。中々大変だけどこだわりなんだね」
父は感心したように注いでいく。
皆が取り終わり姉が確保していた席に着く。
「うわ、姉ちゃん食べれるのそれ?」
「こういう所のは食べれちゃうのよ、お腹一杯で動けなくなるけど」
「おいおい茜……今日はこれからなんだからね?」
「そんなお父さんも中々取ってるわね〜」
「気になる物が多くてね」
苦笑しながら父は箸を取る、頂きますと皆で言い朝食がスタートだ。
「あ、味噌汁美味い」
父が出汁を引くこだわりと言うのが分かる、インスタントの味噌汁と違い味に奥行きがある。
「この出汁をベースに様々なメニューが生まれてるね」
小鉢を幾つか摘むがどれも優しく美味い、特にだし巻き玉子が突き抜けている。
「美味しいわね〜小鉢の量と種類でいくらでもたのしめるわね」
母は色々少しずつがお気に入りだ、対して姉はうんうん言いながら食べているが口に入れすぎて喋れないのだろう。
「父さん何やってるの?」
「これか?朝採れ卵とトッピングで卵かけご飯だ」
真似をしたくなる破壊力のご飯が出来上がっていく。
「……自分も卵とってこよ」
さすがに横であれをされてはやらざるを得ない。




