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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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一日目の終わり

 自室を出て廊下を渡り、ロビーに出れば温泉の看板が見えた。

 男と書かれた暖簾をくぐる、中の脱衣所も内装にこだわっているのがわかる。

「優斗とお風呂入るのなんていつぶりだ?」

「覚えてないよ」

 服を脱ぎタオルだけを持って温泉内部へ。

「露天風呂なのか、良い感じに星が見えるじゃないか」

 父は空を見て雰囲気に浸っている。

 見事に温泉!と言った佇まいに呑まれそうである。

 大浴場なのでチラホラと人は居るが多くは無い、ゆったり入れそうだ。

 身体を先に洗ってから温泉に浸かる、少し熱いが許容内である。

「ふー……なかなか気持ち良いな」

「父さん運転中大丈夫だったの?皆寝ちゃった時間あったけど?」

「ん?ああ、高速の流れに任せる時は無になるからな。時間は感じなかったよ」

「そういうもんなの?」

「優斗も免許取ればわかるよ、もちろん最初は緊張で一杯だけどね」

 そういうもんなのかと星を眺めながら湯に溶ける、最初は熱かったが慣れてくると露天の為か風が気持ち良い。

 父も穏やかに温泉を堪能している、母と姉も同じだろう。

「明日の墓参りは近いからすぐ終わるけど、その後行きたい場所あるか?」

「え?行きたい場所……強いて言えばお土産見たいくらいかな」

「ふむ、温泉出たら部屋で近くに何かあるか調べるか」

「そうだね、この辺りは何があるかな?」

「よくあるのは漬物とか今日食べたお肉じゃないかな……あぁ豆腐は有名だな、ただ観光地では無いから道の駅なんかが良いかもね」

 お土産、日持ちするなら福羽と鹿島さんに用意するかと考えた。物によるがお土産品としてなら何かしらあるだろう。

 温泉の気持ち良さと露天の開放感で思考がゆっくりになりながらぼーっと考えていた。


「お母さんと茜はまだかな?」

 父と共に温泉から出てロビーを見るが二人は見当たらない。まあ女性は時間がかかるのだろう、姉がそんな事言っていた。

「父さん、お土産コーナー見て良い?」

「お、じゃあ私も見るかな」

 こういった宿泊施設によくある小さなコーナーだ、キーホルダーに饅頭やクッキー。

「なあ優斗……これ店に置いたらお母さん怒るかな」

 父は腰くらいまである大きな狸の置物を撫でている、修学旅行のホテルもだったが必ず一つは置いている。

「いやぁ……これは怒られると……」

 値札が目に入り二度見する、自分の給料半年分くらいはした。

「何馬鹿な事言ってんのよ」

 背後で声がして母は呆れている。

 どうやら二人も出てきたようだ、姉が狸を見て首を傾げている。

「お父さんこんなの好きなの?」

「いや、好きとかじゃないが……なんか良くないか?」

「全然」

「これ買うなら客席ソファ新調すべきよ」

 女性陣には大不評だ、自分はちょっと面白いとは思ったが値段が可愛くなさすぎる。

「そうか……」

 珍しく父がシュンとしている。

「父さん明日お土産見る場所を部屋で探してみようよ」

「そうだな、優斗は誰に買っていくんだい?」

「まあ福羽と鹿島さんかな、色々協力して貰ってるし」

 事実夏休み前からお盆前まで二人には色々協力してもらった事が多い、気持ちを返せるならこういう時がないと中々難しい。

「そう言えば福羽君と詩華ちゃんはお盆何してるの?」

 盆前に二人とチャットした時は旅行だったり、祖父母に会いに行くとかは聞いていたが……

「もしかしたら優斗もお土産貰うかもね」

 姉が部屋に戻りつつ言ってくる。

 そうだとすれば、こちらもお土産用意は尚更要るだろう。今朝からスマホも見てないし部屋に戻って確認しておこう。

 家族で部屋に戻り母と姉は出窓がある良い感じのスペースの所でお喋りを、自分は父と一緒に明日の周れるルートをピックアップする。

 観光地では無いが道の駅、もしくは高速のサービスエリアでも見繕えるだろうと粗方見て時間も遅くなった。

「そろそろ寝るか、四人で寝るのは久しぶりだな」

「私ここー、お布団気持ち良い」

「茜、浴衣はだけてるわよ……もうはしたない」

「姉ちゃん朝に中居さんに見せるの辞めてよ」

「ちゃんとするわよ!もう、寝るよ」

 明かりを消して皆就寝準備に入る、なんだかんだ運転と温泉で眠気があったのだろう自分以外の三人はすぐ寝入ったようだ。

 (参ったなぁ、運転してないし車で寝たからなぁ)

 目が冴えてしまった、落ち着く場所なのだがいつもと違う寝床と家族に囲まれた状況は寝にくい。

 少し毛布を被り気味にスマホをチェックする。

 いくつかメッセージが来ていた。

 

 福羽「大阪に来たぜ!」と有名な道頓堀の走ってゴールしてる人のデカい看板画像が添付されている。

 その他たこ焼きやお好み焼き、デザート色々の画像が盛り沢山だ。食べ歩き旅行なのか?


 鹿島「私、祖父母の家に来たの〜」こちらは家と呼ぶより屋敷みたいな豪邸が背景にある。

 鹿島さんはもしかしなくても、良いとこのお嬢様だと改めて思い知らされる。チワワのロックも抱かれている。


 (二人共満喫してて何よりだ)

 自分は墓参り、それも正直に説明しだしたらややこしいモノとなるので「一泊墓参り」と文面を入れさっきの狸の置物を添付しといた。

 少し確認しメッセージを返したところで眠気が来る、そのまま身を任せて眠りについた……


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