サービスエリアと店
「さ、次はお父さん側ね」
振り返り母は車に向かう、皆合わせて歩き出す。
ここから一度逆方向に戻って、休憩込みで八時間近い移動予定だ。丁度家が両家の墓地の間にある為、仕方ないらしい。
到着が夜になるので現地近くのホテルで一泊予定だ。
「さて、運転が長くなるが交代で誰から……」
「私からー!」
どうやら姉がトップバッターらしい、皆でナビを見ながら道中のサービスエリアで昼休憩と決まった。
「よーし行くわよ〜!」
ギィィィ
「茜!だからサイドブレーキ!」
本当に、本当に、本当に大丈夫だろうか……
母方の系譜である川名家の墓を出発し、向かうは父方の系譜である柊家の墓へと向かう。
父と母の想いから十六を迎えるまで伏せられていた存在、実の両親が眠る墓だ。
気にしないつもりだが、やはり心に芽吹くモノはある。嫌なモノでは無いがどうにもならない。
そんな心が表情に出てしまったのだろうか、父が顔を覗き込む。
「大丈夫かい優斗」
「ん、大丈夫だよ。色々思うけど行くだけなんだから」
「そうだな……辛くなったら言いなさい」
父も母も姉も、どうしても気にしてしまうのだろう。
だが、当事者である自分にしかキリが付けられない。
そうこうしている内にサービスエリアに着いた、時間はお昼を過ぎてピークタイムから抜けつつある時間だ。
「何食べよっかな〜」
姉はサービスエリアに入るテナントを眺めて迷っている、自分も姉に倣い店のメニューを吟味していく。
「誰が何と言おうと茜と優斗は姉弟だな」
「ええ、そして私達の子よ」
近年高速のサービスエリア、特に大きな所のテナントは激戦区でありレベルが高いのだと姉が言う。
全国展開するチェーン店でも、その高速のご当地限定メニューがあったりするとか。
「迷うわねぇ……お腹は空いてるけど何か決め手が欲しいわ」
「姉ちゃん、あれは?」
幟が旗めき大きくサービスエリア限定味噌ラーメンとある。
「ほほう?限定味噌ラーメンね……アンタあれにしなさいよ」
「えっ!?何か決め手はって言ったじゃん?何で自分が?」
「私はそれちょっと貰うから」
姉弟の力関係はこう言う場で如実に現れる、つまり姉は味噌ラーメンも選ぶ事が出来るのだ。
「私はあそこの味噌カツ定食にするわ」
(味噌被りじゃねーか!)
思っても言えない立場は昔からだ。
「あなた達決まったら注文しといでよ〜お金渡しとくから」
父と母はフードコートの席を取っている。
若干納得いかないが、自分もご当地限定に惹かれてたので仕方ない。
食券を買い、出来たら鳴る番号付きブザーを引き換え席に着く。
「お、優斗頼んだか。じゃあお父さんとお母さんで注文行きましょうか〜」
「ああ、荷物頼んだぞ」
二人はそう言って自分達の分を選びに行った。
入れ替わりで姉も着席する、しっかりジュースまで買っている。
「お店ではあるけどウチとは全く違う世界よね」
姉が居並ぶ店を眺め言う。
「まあ出来たら呼ばれて取りに行くし」
つむぎ亭のようなレストランに分類される所とは違う、接客に掛ける比率がまるで違うのだ。
こう言ったフードコートでは食券と料理受け取りくらいの接触で、後はセルフサービスになる。
「同じ飲食だけどシステムが違って、考えると面白いものよ」
姉の言葉に少し考えてみる、接客が皆無な分調理に集中出来る。その調理も無駄を徹底排除した流れ作業に近いものだ、その中で地域メニューなんかの独自性を出し横並びの競合店と客の取り合いをする。
「まるで戦争だね」
「物騒な表現するわね、まああながち間違いでは無いけど」
そこに注文を済ませた父と母が帰ってきた。
「なんの話をしてるんだい?」
「姉ちゃんがウチとは違って面白いって」
「お父さんは店のオーナーとしてどう思うの?」
確かに、個人経営の洋食屋店主としての見方は気になる。
「私から見てか?……工場みたいだなとは思うよ、でも同じ食事で成り立つ世界だからね。やり方が違うだけで同士だと思うよ」
「あー工場と言われたらわかるかも」
「ふふ、茜は少し先入観があるのかしら?客数で見れば何倍も違う店ばかりよ」
母も帰ってきて言う。
「今はシステム化、大手チェーン化が主流ですものね。でもどちらが上とか下とかに囚われるのは間違いよ」
「それはわかってるんだけどさ、やっぱり目の当たりにするとウチって一昔前のスタイルだなって思っちゃうのよね」
「まあそれも時代が進むとレトロと言われたりで独自化差別化になるだろうね」
父も母も今のつむぎ亭を残したいのだろう、最新の機械に頼らずオーダーは今でも手書きなぐらいだ。
ピッピッと持ったブザーが震え鳴る、出来たようだ。
「あ、私もだ。取りに行こう」
「茜はもう少し現代風にしたいのかな?」
「あの子はあの子なりに考えてるのよね〜暴走しなければそれで良いじゃない」
「ふふ、朋子に似たんだろうね」
「何よいきなり」




