鹿島先生
「はい!まず二人の進捗確認しまーす」
まるで先生のように課題を集め中を確認していく鹿島さん、いつの間にか眼鏡を掛けて優等生スタイルになった。
妙に緊張するが福羽も同じ様子である。
「ふーむ、柊君は英語で福羽君は数学が弱点ね〜でも、うん!予想以上に全体進めてて偉いわ!」
「あ、ありがとうございます!」
二人で褒められたお礼を言い頭を下げる、下がった顔をこっそりロックがペロペロしてきた。
「二人の詰まってる問題を見ると柊君は教科書の例文にある動詞を置き換えてまず文作ってみてくれる?福羽君は数式を叩き込んでから問題やった方が先々良さそうね」
ここから鹿島先生のわかりやすくも厳しいスパルタ授業が始まった。人が変わったように教える事に対して集中している、基礎公式の反復を詰め込まれ既にパンパンの福羽に対して自分は英語の動詞副詞ついでに細かなスペルチェックと忙しい。
三十分程だったが教える鹿島さんの声と返事しか出来ない男二人の声だけが響く空間であった。
(鹿島さん…人が変わったぞ……?)
普段はほわほわタイプでのんびりやなイメージだが、集中力が高まると別人だ。
妥協されないスパルタ授業で、間違ったら「もう一度スタートから」と普通に言う。
自分はまた英語を組み立てる事に思考を割けるが、福羽は問題をやらずにこれまでの公式を反復してるだけ。あれは相当キツイと思う。
しかし時々に合わせて例文を変えるポイント等の修正指示が的確である。
さすが学年三位の頭脳と言う事か、立っているステージが違う。始めに二人の実力を把握して二人別々に合ったやり方をすぐ作っているのだ、しかも自分の課題も進めながら…凄い。
ピピピピ…何かの音が鹿島さんの側から聞こえてくる。
「はーいお疲れ様〜一時間目終了でーす」
フッと集中を遮断された様に福羽と顔を見合わせる。
「え?」
「おい、柊よ一時間経ってるよ…」
「二人ならもうちょいいけそうだけど前半は基礎からよ〜十分休憩〜…あ〜お茶が沁みるわ〜」
今さっきの集中力が嘘みたいに、むしろだらけきっているくらいにグデグデのほんわかした鹿島さんに変わっている。
あまりの変化に福羽と戸惑いが隠せない。
「うふふ、詩華はこんな感じでオンオフしか出来ない子なのよね〜」
鹿島さんのお母さんが離れたテーブルから微笑ましく見ていた。いつの間にか勉強する三人を観察していたようである。
「もう〜恥ずかしいから見ないでよ〜」
「何よ今更〜皆の集中良かったわよ〜」
母娘でキャッキャッしてるのを見ると姉と母のやり取りに重なる。女性同士特有のものだろうか?
仲の良い事は結構な事だ。
ピピピピ……
「はーい、二時間目始めまーす。今度は進みますよ〜二人共詰まって空いていた問題やってみて?」
一時間目は土台作り、二時間目は実践と言ったところか。言われるがまま問題一つ解いてみる…
「…え、出来た」
頭を捻り倒して出なかった英文が書けてしまった、鹿島さんにチェックをお願いする。
「ふんふん、大丈夫だよ!多分次々でスペルに引っかかってくると思うけど教科書片手に進めてみて〜」
家であれだけ悩みどうしても飛ばした文が浮いて出てきたのだ、しかも何か意味を理解出来るレベルで。
「柊君の弱点は文字の形と並び、そこに意味も混じって全部が絡まっちゃうんだよね?だから最初に整理したの」
鹿島さんの言う事は理解できる、理解し難いのは一目で弱点を掴み和らげる一時間を作った事だろう。
「鹿島さん…同い年のクラスメイトだよね?」
「そうですよ〜」
こんなに違うものかと放心してしまう。
「わかる、わかるぞ!鹿島ちゃんわかるよ!」
福羽は始め一時間は課題に触れさせて貰えないままだったが、今凄いスピードで数式を解いている。
こっちも別人のように。
「福羽君は基礎が虫食い状態でぼんやりだったでしょ?一時間みっちり刻んだから帰っても続けてね?」
「ハイ!鹿島先生!」
ここからの自分と福羽は凄かったと自画自賛してしまう。もちろん詰まる所は鹿島さんのアドバイスもあるが家で一人の課題とは比べ物にならない理解度で進んでいく。
科目が変わっても引き継がれたように進む、それは福羽も同じようで三人の集中を表すペンの音だけが響く。




