将来は②
「なんだか集中しきれてなかったわねぇ、やっぱり女の子のお家に行くから?」
母がニヤニヤしながら突然言い出した、姉の軽い口では一日持たなかったか…
「違うよ…いや、進路考えとけよって話が学校であったけどイメージがどうも湧かなくて」
「なるほどね、それで蓮ちゃんに聞いてたんだ」
どうやらバイト前に話していたのを見ていたらしい。
「優斗が悩むのは分かるわ、でもお母さんからすれば後悔しないようにしてくれたら良いわ。その為のサポートはするから、今は思いっきり悩みなさい」
母はまっすぐに見つめて笑みを浮かべている、心配はしないで良いから悩めと。
直接決めて歩くのは自分自身だが、それに伴う間接的な支援を任せろと言ってくれるのは心強くも申し訳ない気持ちが混じる。
「あなたはどうしても社会に出たら人と違う事に当たる時が出ちゃうの、でも忘れないで優斗には私達が居るんだから」
人と違う事、それは本当の両親関係なのだろう。足枷にはならないだろうが公的書類等で不意に突き付けられる現実が出てくるかもしれない。
別に隠している訳ではないが言う事でも無いかと、仲良い福羽にも言っていない。もしかしたら打ち明ける未来があるかもだが、今では無い。
「優斗は店と血に縛られず自分で納得行く様にしたら良いさ」
父がそう言いながらキッチンから出てきた。
「あら?お父さん片付け終わったの?」
「蓮の奴が後はやっとくから優斗の所行って上げてください〜だってよ、あいつもなんだかんだ気にしてるんだな」
蓮さんに気を遣わせてしまったようで申し訳ない。
「まあ優斗は茜と違ってまだイメージが出来ないんだろう?それがむしろ普通だと思うぞ」
「え?そうかな?」
「お前は茜や蓮みたいな早くにイメージを持って動いた者を見てきたから焦りがあるかもしれない、私だってそうさ店をやりたくて開いてるんだから」
「そうね…小さい頃から皆を見てるから良くも悪くも焦るのかもね」
「無意識に決めておかなければいけないと思い、決まってない自分を恥ずかしく感じるかもだが…それは違うからな」
父は言う、今の自分の進みは間違いではないと。
「父さんはいつこのつむぎ亭やりたいってなったの?」
「きっかけは茜が産まれて本格化したのは優斗が家に来たときさ、だから今の優斗より全然遅いタイミングで決めたんだよ」
「そうなんだ…怖く無かったの?」
「当たり前に怖さも楽しさも色々あったぞ?だが後悔はしてないな、母さんも同じだろ?」
「ええ、店始めたいって計画出された時も驚きは無かったもの」
両親共に後悔はしないと決めたんだろう、店をやるなんて素人から見れば不安が普通だと思えるし。
結果は十周年を迎えた人気店だがあくまで結果である、そこに向けて毎日を歩いて来たんだろうなと実感する。
「まあ優斗は来年には進学・就職のどちらかは選ばされるけど選ぶ選択肢を増やす為に勉強しなさいよ!」
なかなか痛い現実を突き付けられる…頭でわかって身体が付いてこない勉強すると言う事。
「まあ、とりあえず勉強もだが友達と遊ぶのも今がピークだからな。色々学んでこい」
父は背中を叩いてキッチンに戻って行った、母も微笑んでフロアへ戻る。
(色々学ぶかぁ)
少し考えすぎてたかもしれない、憑き物が落ちた様で身体が軽くなった気がした。




