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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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大人の味わい

「親父さんは厨房?」

「ああ、さっき来てるの伝えたから後で来る、飯食って待ってろって」

「相変わらずだな親父さん、元気そうでなによりだ」

「ピンピンしてるよ、それじゃあ注文決まったらお呼び下さい!」

 それなりに忙しい中だが話したい程久しぶりなんだろう、父も嬉しそうで自分もなんだか嬉しい。

 話も一段絡してメニューを見る。

 品数は多くは無いが、先程見たインバウンド価格の後だと凄く安く感じる。

「見て母さん、さっきの海鮮丼五千円だったけどこっち千二百円って凄い差じゃない?」

「値段だけじゃないわよ、味、鮮度、量、どれも引けを取らないわ、ハーフにしとくのをオススメするわ」

 皆海鮮丼一択(内ハーフ二人)で決定。

 流星さんに注文して到着までくつろぐ事になった。


 年季のある内装、歴史を感じると言った方が正しいか。

 見える範囲を見るだけでも、数年レベルじゃ出てこない柱の色合いや机の風合い。全体に味がある印象だ。

「なんだ優斗?キョロキョロして」

「ん?いやなんか凄い歴史ありそうだなって」

「ああ、確かにここは大正時代から続く老舗だからな」

「大正?そんなに続いてるの?」

「勿論時代に合わせて補修とかしてるが場所と骨組みは変わってないはずだよ」

 父にそんな店の人と関わりがあったと言う事に驚きだが…

「長い間この地域の漁師さんや地元の人を支えてるお店なのよ」

 母が言い、父はそれに頷いている。そこに流星さんと手伝いのスタッフが来て海鮮丼を運んできてくれた。

「海鮮丼お待ちです!特製ダレはこちらです!ごゆっくりどうぞ!」

 凄い元気に、しかし置く時は丁寧にテキパキと配膳を終え一礼して去って行った。

 さて、目の前に置かれた海鮮丼だが…

 光ってる。

 照明の明かりか陽の光か照らされたネタの表面が美しい輝きを出している。

 また、お椀からはみ出る盛り方が間違いなくボリューミーである事を一目で解らせる。

「うっわ…すっごい綺麗、インパクトある盛り付けなのに綺麗よね」

 姉も感嘆の声を上げている、分かるその気持ち。派手さのある椀から飛び出てるような盛りなのに汚くなくて、むしろ美しいとしか思えない。

「タレを掛けても良いけど、まずは何も無しで食べてごらん」

 父は「きっと驚くよ」とニコニコしてる。

 驚くとは?美味しいじゃなくて?

「いただきます」

「いただきまーす」

 姉と共にいただきますをして、同じタイミングで一口。

「――っ!?」

「――わっ!凄い!」

 姉と目を合わせ首を縦に振り合う。

 食べたのはマグロ一切れだが鮮度が良いとはこの事なのか?醤油やタレも無しだがマグロの味わいがダイレクトに伝わり、後味まで失速せずに余韻が続く。

「ふふっ二人とも驚いてるわね〜私も楽しんじゃお」

 母もニコニコで食べ始めてる。父はタレを渡してきて使ってみろと無言で頷く。

 きっとタレも凄いのだろう、少し掛けて一口。

「――うわっ美味い!」

 醤油とは違う甘しょっぱいタレが海鮮丼のネタの個性を引き立たせる。組み合わせとはこう言う事なのか!

 姉も自分も感想を出す前に箸が動き喋れない、正直高校生にとって一杯千二百円とは高い部類だが価値観が変わる。

 目の色を変えて食べ進める姉弟を両親は笑いながら見ている。

 あっという間だった、味わい食べ進める事に集中したのは初めての体験かもしれない。非常にボリュームもあったのだが完食してしまった。

「どうだった?」

「いや、凄かったよ…」

「食べきれるぐらいに大きくなれたな優斗も」

 父は嬉しそうに語る。

「茜も優斗もまだ小さかったから量が食べきれないと思って来なかったんだよ、大人になったなぁ」

 それで今の段階で誘われたのか。

 だが、これは子供の時に味わうのは危険すぎる。その後の魚生活について影響を及ぼすだろう。

「は〜…満足だわ」

 姉はもう溶けてる。母も満足そうに箸を置いた。

 皆食べ終わり余韻に浸っていた時、人影が側に座った。

「よう周助、朋子どうだったよ?」

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