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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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市場にいこう、家族でいこう

 八月が迫り暑さも増すある日、父から誘いがあった。

「優斗、父さん市場に行くけど久しぶりに来てみるか?」

 本日はつむぎ亭定休日だが父はよく市場や農場に出掛けたりする、小さな頃はついて行ったりもしてたが久しぶりである。

「久しぶりだし行ってみようかな」

 家で課題をやるよりは気楽だろう、運が良ければ美味しい物をご馳走してくれるかもしれない。

「アタシも行く!」

 側で聞いていた姉が食い付いてきた。

「え…茜来るのかい?あんまり興味無さそうじゃなかった?」

「久しぶりだし市場でしょ?なんか食べるんでしょ?」

 結局美味しい物目当てのようだ。

「皆出ちゃうのね〜それじゃあ私も行こうかしら」

 母まで乗ってきた、これはかなり珍しい。

「母さんも来るのかい?どうしたんだ二人共」

「良いじゃない、折角だから家族でお出かけなんてのも」

 確かに姉や自分が小さな時はどこか皆で行く事はあったが、この数年は特に無かったな。

「良いんじゃない父さん、自分は構わないし皆で揃って出るなんてレアだよ」

「まあ優斗が良いなら…よし!じゃあ準備したら行って市場でご飯食べようか」

 オー!と家族皆で準備に入る、なんだかこういうの久しぶりで楽しみだ。


「茜ーまだかー?」

「もうちょっと、もうちょっと待って!服が決まらないの!」

 結局一番時間を掛けたのは、最初についてくる宣言をした姉だった。女性の用意は市場に行くとしても時間がかかるものらしい。

「やーお待たせお待たせ」

 程なくして自室から出てきた姉を迎えて、皆で家を出る。

 移動は車で一時間程で着く昔から父が通う漁港と市場が同じ区画にある、なかなか賑わいがある記憶だ。

「茜と優斗は何年振りだろうな、新しい店もあるが基本は変わってないよ」

 父は運転しながら教えてくれた、だが小さな頃の記憶では賑わいだけで店までは覚えていない。

「私海鮮丼食べたい」

「お母さんはあら汁が良いわねぇ」

 女性人は何を食べるかが目的のようだ。

 (市場って何があるんだっけ…)

 記憶に残る市場の様を辿るが思い出せない、何故だか不安が出てくる。

「優斗は大丈夫かな?市場に行ったの小さな時だからなぁ」

「アンタ魚が並んでるの見て怖いって泣いてたのよ」

 なるほど、だから不安な気持ちが出るのか。幼い頃のトラウマ的なものだろう。

「いや、さすがに今は大丈夫だよ…」

 家族に笑われながら車は進んでいく。

 家を出て約一時間、そこまで遠くは無いし活気がある場所に来た。

 車から降りて見える範囲でも様々な事をしているように見える。漁港から運ばれる海産物の入った発泡スチロールが動かされていき、少し離れた店では獲れたての魚が並ぶ。

 スーパーと違い熱気を感じる、だがどこか感じた事のある熱気。そうだ、つむぎ亭の営業中に似ているのだ。

 作業は違えど売り手買い手の流れや顔付きに既視感がある。

「とりあえず店回るか」

 父はブラブラと店の商品を眺め出した。

「凄いね、丸々一匹の魚ばかりだ」

 父に向けて言ったが、ふと思う。

 (あれ?店でこんな魚扱ってるっけ?)

 つむぎ亭は洋食屋としてメニューにある海産はエビフライくらいしか思い付かない、エビを仕入れるんだろうか?

「捌きがいがありそうだな、色も肉付きも良い」

 キラキラした目で父は魚を見ている。そして褒めるだけ褒めて次の店に移る。

「父さん、何買うの?」

「ん?買わないよ」

「え?店の食材じゃないの?」

「これは父さんの趣味だからね、見て楽しむ…勝手に買うと母さんに怒られるんだ」

 父にそんな趣味があったとは…思えば定休日にたまに家にも店にも居ないのはこういう事をしてるんだな。

 父の知らなかった一面を知る。

「まあ今日は母さんも居るし買えるかな〜…って母さんと茜どこ行った?」

 振り返れば二人が居ない、さっきまで固まって動いていたのだが…

 辺りを見渡してみると海鮮丼専門店の前でショーケースを見ていた。

「あの二人は食べたいのが先か…」

 苦笑しながら父さんは二人の元へ行き、自分もついて行く。

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