広告は慎重に
全身が跳ねる、気配無く背後を取るのは辞めて欲しい。声の主はもちろん姉だ。
「姉ちゃん辞めてよ…」
「あんたこそ課題サボって何やってんのよ」
正解だから反論が出来ない。
「全く、ウチはテレビ取材は断ってきたのよ」
「え?」
姉は不満そうに続ける。
「SNSも父さんがダメって言うし取材も受けない、私もよく知らないけど昔何かあったらしいわ」
初耳だ、しかし姉も知らない何かとは一体…
「母さんは知ってるの?」
「たぶんね、でも教えてくれないのよ」
両親が教えたくない事、自分の本当の親については教えてくれたが上回る程知らせたくないのだろうか。
「あんた探ってみてよ」
「え、嫌だよ」
姉から無茶振りをされるが、きっぱり断る。そもそも姉が話されてない時点で自分にはどうも出来ない。
気にならない訳じゃないが両親が隠しておきたいなら、それを尊重したいとこだ。
「言える事なら自分の時みたいに、ちゃんと言ってくれるんじゃないかな?」
「むぅ、優斗にしてはまともな答えね」
渋々だが納得してくれたようである、姉はそのまま自室へと行ってしまった。
(取材とかね…やっぱり打診あったりしたんだ)
父が断る理由はつむぎ亭に関わる事なんだろうか。芽生えた疑問が大きくなっていくのを感じてしまう。
夕方バイト出勤の為に店へ行く。
「おはようございます」
「お、優斗君おはよう昨日は楽しんだかい?」
「初めて長いスライダー滑って日焼けして痛いです」
「ハハハ!高校生楽しめよ!」
蓮さんから気さくに昨日のプールについて振られたが、隔てなく明るく話が出来るのは憧れる。
「優斗、おはよう今日も洗い場になるが…肌大丈夫か?」
父が奥から現れ心配そうに見てくる。
「ちょっと痛いだけで大丈夫だよ」
「うむ、なら良いが鼻とか腕見事に焼けたなお前」
「優斗ちゃんと日焼け止め塗りなさいって言ったのに忘れたんでしょ」
母からお小言を頂き軽く謝りながら持ち場に向かう。身体は日焼けと筋肉痛も相まってだがなんとかなるだろう。
すぐにピークは訪れる、しっかり場の準備をせねば。
夜営業が始まりしばらくして洗い場のピークが訪れる、だが身体は痛むが不思議と頭が冴えておりスタッフとお客さんの流れから予測が立てられた。
(なんだこの感じ、少し先がわかる?)
そうこうする内に営業が終盤となり上がる時間だ、一瞬で過ぎた気しかしない。戸惑いの中父から声が掛かる。
「優斗、今日は力が抜けてたな」
「え?手抜いてないよ?」
「違う違う、余分な緊張がほぐれて無駄無い動きが出来てたって事だよ」
確かに今日は疲れもそんなに感じない、昨日の今日だから身体的にはキツいと思ったが大丈夫だった。
「遊びに行ってガス抜きになったんだろ、良い事さ」
「そうなのかな?頭はスッキリしてたけど…」
ここでふと昼間に姉と話していた「お店の取材」について思い出す。
「父さん、ウチって取材とか断ってるって聞いたけどそうなの?」
「ん?茜か…ああそうだな、色々難しいんだよ」
「色々?」
「ん〜良い事ばかりではなく悪い事も起きやすい、それに一度ブーストしてしまうと定期的に同じ事しなければ人気が落ちたなんて言われたりするからな」
一理ある、流行りの物は流行ってると押し出されてる内は人気と見えるが露出が無くなってくるとブームは去ったとか言われたり。
「でも取材のお願いとかはあったんでしょ?それって凄いと思ったけど」
「ハハ、ありがとう、依頼自体はありがたい事なんだが私が今来てくれてるお客さんで精一杯だからな…まあ茜は何やらやりたいようだが」
姉はもっとつむぎ亭をアピールしたい気持ちが強く出ている、十周年イベントもだったしこの先も何か企ててる気はする。
「茜はね〜この店が好き過ぎて暴走しちゃうのよ」
端で聞いてた母が入ってくる。
「あの子は昔から手伝いしてくれたのもあるし、楽しいんでしょうね〜今大学で経営学ぶくらいなんだもの」
「うむ、ただ私としては店乗っ取ろうとしてないかヒヤヒヤだがな!」
父、母共に笑う。乗っ取りって…と思ったがあながちハズレでも無さそうではあるのが怖い。
「ま、優斗は優斗なりにやりたい事見つければ良いさ」
「うん」
ポンと頭を叩かれ「上がりなよ」と父に促される。
トンと肩を叩かれ「アンタ課題進んでる?」と母に聞かれる。
今の自分に出来る事は限られている、この先道が見えてくるのかなとぼんやり考えていた。




