先輩
二日目、昨日の事を思い出しながら店に入る
「お、おはようございます優斗君」
蓮さんが出迎えてくれたと同時に洗い場へと引っ張られる
「どうしたんです?」
「優斗君の為にちょっと整理したんだ、見てよ」
昨日まで店の備品で塞がっていた下げた食器の置き場が拡張されている
「俺達慣れてるスタッフは昨日までのスペースをやりくりして上手く運用するんだが、今回の優斗君を機に片付けたって訳よ」
「ありがとうございます!」
「と言ってもオーナーは乗り気じゃなかったけどな」
「蓮、聞こえてるぞ」
蓮さんは笑いながらキッチンに逃げていく
父は頬を掻きながら言った
「まあ本当は優斗が気付きながらカスタムするのが良いのだが…アイツも後輩出来て舞い上がってるのかな」
ふん、と鼻を鳴らして父もキッチンへと戻っていく
とにかく、昨日よりも整えてもらったのだから応えたい
気合いを入れてピークに備えた
心構えとしては最高な状態だろう
コンディションも悪くない
先輩に環境の改善もしてもらえた
自分に出来る事をこなすだけだと意気込んだ二日目
結果は撃沈であった
お客さんの出入り次第とは思うが、それにしても追いつかずに洗い物の作業が詰まってしまう
今日も肩を叩かれ終わりに気付いたのである
「苦戦してるね〜優斗君」
「すいません、やっぱり遅れちゃって」
「一つヒントをあげよう」
「ヒント?」
ポカンとしてる自分に蓮さんは手をひらひらさせて言った
「集中も確かに大事だけど、この場所は店の終着点でありスタート地点、まずは出入りと物の流れを把握しなきゃな」
「流れですか…」
「そう、今優斗君は物量に負かされててそれを手数で返そうとしてるんだ、悪い訳じゃないけどズル賢くはない」
「ズル賢い?」
「ズル賢くやれた先に見えてくるモノがあるんだよ、さあ今日は上がりだお疲れ様」
蓮さんは笑いながら今日も引き継ぐ
皆に挨拶をして帰宅する
(ズル賢いってダメなんじゃ…?)
色々と考えてみたが答えは出そうになかった
ただ、初日に言われた「見て情報を得る」という事に繋がっていそうな気はする
確かに手数は体力に限界が来るし一つズレたら全てがズレるのだ
今日までの詰まった原因が少しだけ見えて来たのかも知れない




