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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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洗い場の洗礼

 正式アルバイトデビューは洗い場から始まった

 とは言え洗い物をする自体は経験がある

 主に閉店片付けの時だが、営業中に流れる動きの中では初めてだ

「優斗、まず時間がかかっても良い、そこから見える景色から情報を得ながら手を動かせ」

 父はそう言ってキッチンへと戻っていく

 (情報?どういう事だろう?)

 不思議に思う中、店は夜開店を迎えた

 相変わらずの初速だが洗い場自体はまだお客さんのお皿が来ていないのでキッチンから出た調理器具の洗浄ぐらいだ

 ひたすら鍋を磨いていると、蓮さんがコソッと来た

「優斗君、あと五分ってとこだ」

「え?」

「ふふ、頑張れよ〜」

 謎のカウントダウンを告げられ不思議そうな顔に笑いながら蓮さんもキッチンに戻る

 (蓮、ヒントを与えたろ?)

 (えへへ、後輩は可愛くて)

 キッチンの方から父と蓮さんの会話が聞こえたがどういう事だろう?

 ふとフロア側に視線を移すと母が下げて来たお皿やナイフフォークの類を持って来た

「優斗、お願いね〜そろそろ始まるわよ〜」

 母もよくわからない事を言いながらフロアに戻っていく

 一体何なんだ?

 そして答えはすぐに出る

「はい!」

「お願いね!」

「グラスは先仕掛けといて!冷まさなきゃ!」

「下げた物置けるスペース意識して!」

 怒涛の勢いで指示と洗い物が積み上がる

 もう周りを見る事が出来ず、目の前の洗い物をひたすら洗うしか出来なかった

 ただただひたすらに洗ったつもりだが減ってない

 こんな事あるのか?どうなってるんだ?

 頭の中は洗う事と初めての物量にぐるぐるしている

 そして肩を叩かれた

「はーい、タイムアップー」

 蓮さんだった

「え?タイムアップ?」

「ほら、二十一時だよ」

 壁掛け時計を見れば二十一時を知らせている、オーダーストップに気付けなかった

「ふむふむ、しっかり洗礼受けたね優斗君」

 笑顔で荒れた洗い場を眺められる

「さ、今日は上がりだよ後は俺が引き継ぐから」

「でも荒らしたまんまで…」

「なーに、初回にしちゃ良い方さ」

 鼻歌を歌いながら蓮さんは引き継いでいく

 とりあえず挨拶をしてキッチンへ

「お、優斗どうだった」

「どうって、もう終わったんだとしか…」

 父は笑いながら背中を叩いた

「今日はここまで、明日はもう一歩先へ進んでみるんだ」

「うん…」

 何が言いたいのかはわからないが、今はまだ言う気はないらしい

 先に帰っときなと促され帰宅する、帰り道今日は何点だったか考えながら…


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