初めてじゃない初めてのバイト
夏休みの間は週三日、夜の時間帯で勤務する事となった
遊ぶ日等予定により調整をして勉強時間との兼ね合いも考えての事だ
「なんだかんだ私嬉しいわ〜」
店で正式にバイトする旨を伝えた母から歓迎をされたが両親に頼る以上、そして店のオーナー夫妻の子として甘えすぎも良くないと決意はしている
見知ったスタッフからも身内扱いはあるかもしれないが、その差は働いて埋めたいと思う
「あんた足引っ張らないでよ」
姉は割と辛辣だったが線引きが出来てる先輩として勉強させて貰うだけだ
福羽にも経緯を話す為連絡をした
「――と言うわけで正式に店でバイトするよ」
「えー良いな〜俺も父ちゃん母ちゃんから許しが出たらバイトしたいが…課題の進捗見られたら今は無理だな、下手したらプールすらヤバいかもしれん」
そこは頑張ってくれよと願いながら予定を少し話し合って通話を終えた
福羽…あいつ、大丈夫だよな…?
正式につむぎ亭のアルバイトとして出勤する日が来た
とはいえ幼い頃から見知った店で臨時バイトとして夏休み始まりにデビューし、今日正式スタートと都合三度目なのでその辺りは気楽かもしれない
不安があるとすれば、事前に父からはキッチンメインでいくと言われたのだ
(父さん滅多にキッチン内に入れようとしてこなかったけど大丈夫かな)
実際に作業の一部、玉ねぎのカット体験をさせて貰っただけで子供の頃からむしろ遠ざけられていたのだ
夜営業の始まる前に店に入り準備をする
以前教わった念入りな手洗い、埃や髪の毛を取り除くローラーを行いキッチン内部へ
「おはようございます!今日からよろしくお願いします!」
「おはようございます!優斗君、改めて今日から宜しくね!」
爽やかに元気良く挨拶を返して来た長身の男性キッチンスタッフが肩を叩いて来た
旗野 蓮、つむぎ亭のスタッフメンバーでは在籍五年目であり二番目に古くキッチンではチーフシェフとして活躍している
「旗野さん、ご指導宜しくお願いします!」
「はは!いつも通り蓮さんで良いよ、しかしついに決心したんだね」
「はい、お金もですけど店に関わりたいなって」
「オーナー喜んでるだろうなぁ〜、じゃなきゃ優斗君キッチンに入れないよ」
蓮さんはつむぎ亭来た当初は調理の専門に通ってたらしいが辞めて父の下で学ぶ事になったらしい、自分にとっては兄のように五年間慕ってきている
「あれ?父さんは…?」
「ああ、さっき急いで買い物に行ったよ」
「買い物?」
話していると裏口から父が帰って来た
「ただいま、おお優斗準備してたか、すまん蓮遅くなった」
父はそのまま自分の体を見つめてきた
「な、なに…?」
「うーん、思ったより小さいな優斗、まあ大丈夫だろ」
そう言ってビニールの袋に包まれた物を渡された
「何コレ…?…合羽?」
「それはエプロンだ厚手のビニール製のな、今日からお前の必要な制服の一つさ、着てみろ」
袋から開け中身を取り出し確認してみるが、エプロンなのかコレは
頭に紐の輪を通して首に掛け腰紐を背後で結ぶ
「ありゃあーちょっとぶかぶかですねオーナー」
蓮さんはエプロンに着られてる自分を見て笑ってる
「…うん、まあこれから大きくなるだろ大丈夫だ」
「動きにくい…」
「今後の勤務はしばらくそれを着て…」
「これを着て…?」
「ひたすら洗い物だ」




