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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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38/89

ありがとうを込めて

 和やかにでも騒がしく始まったパーティ

 やはり目を惹く父特製の丸鶏姿焼きだろう皆群がってる

「え?柔らか!!」「鶏の旨み詰まってる!」

 称賛が聞こえてくる

「皆、両腿は優斗と福羽君の高校生コンビにあげても良いかい?」

 父がサクサク大きな塊を解体しながら問う

「勿論!」「光司君食え食え!」「優斗ちゃんいっときな!」

 皆が進めてくれたもも肉は骨付きでクリスマスやゲームで見るようなインパクトある物だった

「ふおぉおぉ!すっげ…!」

 福羽は感動が限界まで来ちゃってる

 二人して骨付き部分を持って齧り付く、皮はパリッと肉が柔らかくてジューシー

 改めて父はこんなものまでつくれるのかと尊敬する

 福羽はもう満面の笑みで食べる事に集中しか出来ない状態だ

 そんな様子をパシャパシャとスマホに収める姉がいた

「姉ちゃんはカメラマン?」

「そうよ!飲み食いしながらだから忙しいの!」

 今日と言う日を収められるのは嬉しい、姉にも感謝だ

 大人達は程よくお酒が回ってきたようで陽気さが増している

 父、母も珍しく顔を赤くして話し込んでいる

「やっぱり…嬉しいよ、十年と言う時間は特別だった」

 スタッフ達と話してる父がポロリと漏らした言葉が全てなんだろう

 自分も開店当初から見てきた店だが、今日みたいなイベントパーティは初めてだ

 元々店のスタイルが日常をいつもどうりにと言ったスタイルなだけに今回の姉企画は挑戦でもあっただろう

「関われて良かった」

 自分も言葉が漏れた

 あっちこっち話に言ってた福羽がこっちに来て小声で聞いてくる

「あれ、いつ渡す?」

 用意した物の事だがタイミングが掴めない

 どうしたものか…

「どしたの?男同士何の話してるのよ」

 死角から姉が現れ二人でびっくりしてしまう

「あー…そうだ!茜さんお願いが!」

「へ?改まってどしたの福羽君?」

「実はですね…で…したいんすよ」

 ゴニョゴニョと説明をしているが、良い案かもしれない、姉はバッと立ち上がり胸を叩いた

「あんた達…やるじゃない!任せなさい!ほら行った行った今がそのタイミングよ!」

 どうやら共感してくれたようだ、いきなり場を作る役割買って出てくれた

「いい?合図したら持ってくるのよ!」

 福羽と二人で一度外に出る

「茜さん本当頼りになる」

「行動力決断力は確かに凄いと思うよ」


 外で待機してると店内からパンパンパンと手を叩く音がして声が聞こえてくる

「父さん母さんそこ並んで写真撮るから!」

「さっきからずっと撮ってるじゃないの」

「良いから良いから、あ、皆ちょっと父さん達から距離開けて〜入り口付近空けてね〜」

 さくさく準備する姉はマジで凄い、そんな事思いながら緊張が増していく

 福羽も緊張してるようだ

 また中から声が聞こえて「よし!二人共カモン!」

 お呼びが掛かった、両親はどんな顔するだろう?

 喜んでくれるかな?

 胸の鼓動がピークになるのを感じながら福羽と一緒に店内へ入って行った


「拍手で祝福下さい!」

 姉がスタッフを煽る、両親は何だ?何が起きるんだ?と困惑しているのがハッキリと見える


 福羽と二人両親の前に立ち各々の想いを伝える

「父さん、母さん、十周年おめでとう、小さい頃から見てきたここつむぎ亭に居れて嬉しいよ」

「柊のお父さん、お母さん、スタッフの皆、俺急遽の短期イベントバイトだったけど人生で一番楽しかったです!」


「二人で考えて選んだコレ受け取って欲しいです」


 福羽と二人で手を添えプレゼントを渡す

 困惑したままの両親はプレゼントと自分達を何度も見返して笑う

「開けていいのかい?」

「勿論」

 父は包装された紙を破かないよう丁寧にゆっくり開け母は見守る

 出てきた物は大きめサイズのシンプルながらハッキリと柄が装飾された額縁である

「わぁ…凄い木彫りの柄綺麗ねぇ」

「うむ、しっかりしてて凄い存在感がある」

 感嘆と呆気に取られる両親の表情に間違いなかったとホッとする

「福羽と二人でさ、初給料をどうするか悩んだんだけどコレに決めたんだ」

「柊のお父さん達に五日間教わった恩返しがしたくて」

 二人が話してる間、父は真っ直ぐに見つめて母は涙を流してる

「馬鹿だな…」

 父がふと言い続けた

「こんな嬉しい事されたらもっと頑張らないといけないじゃないか」

 そう言って涙を堪えながらまた見つめてくる

 母は耐えきれなくなったのか自分と福羽を抱きしめて泣きながら言う

「本当にバカねあなた達、初めてのお給料を私達になんて…嬉しすぎるわ」

 パチパチパチパチとスタッフからの拍手が注ぐ

 何人か泣いてるようでグスグスと泣き声混じりながら

 チラリと姉をみればスマホを構えながら泣いている

 どうやら想いは伝えられたようだ

 やって良かった、今は緊張から解かれ力が抜けていた


「店に飾ろうか、しかし中身は何にするか」

 父が額縁を眺めながら考える

 そこに姉が提案した

「その十周年カーテンバッグに店の皆の集合写真撮ろうよ!で、それ現像して入れようよ」

「おー良いじゃん!」

「茜ちゃん天才!」

「やだ泣いちゃって顔崩れてるー」

 スタッフ達も乗り気でそのまま記念撮影に移った

 父と母を中心に皆が周りを固めてく

「タイマーセットオッケー!皆行くよー笑って笑って!」

 姉のセットで数枚撮り額縁に入れる候補を皆で選び出した

「優斗」

 父に呼ばれた

「優しい子になったな」

 ふいに言われたら恥ずかしい

「今年のお盆は報告に行くぞ…お前の父さん母さんの元にな…」

 本当の父さん、母さんの元に…

「心配するな、間違いなく優斗は誇れる男になっているぞ」

「…そうなのかな?」

「だって父さんと母さん泣かしたんだぞ?」

 イタズラっぽく父が言うのだから笑ってしまった

「…この先も頑張るよ」

 照れながら自分はそう返した


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