これからも
昨日の十周年イベントの人波が嘘のように静かに佇むつむぎ亭
福羽は営業していない店を見るのが初めてであった為
「全然雰囲気違うじゃん…昨日まで俺居た所?」
なんて言い出しているが、間違いなく昨日まで共に働いた店である
店内では母とスタッフが見えるのでパーティ準備が進んでるようだ
店のドアを開け「来たよ」と入る
「こんばんは!」と福羽、昼から動き回ってるのに元気な奴だ
「二人共来たわね〜後は茜待ちね」
母が時計を見て挨拶をする
「二人とも好きなとこ座ってなさいな、皆で乾杯するしちょっと待ちね」
促され近くのテーブル席に座る、福羽は仲良くなったスタッフ達とワイワイしている
(いつ渡すかな…)
店に入る前に見られないよう店の外に贈り物を置いたのだが渡すタイミングに迷う、少なくとも今では無いのは確かだ
そういえば父はどこだろう?
キッチンかなと覗けば何やらオーブンの前で腕組みをしてガラス戸から中を覗いてる
(何か作ってるのかな)
出来るだけ皆が囲めるようにテーブル配置を変えて、テーブル上には父とキッチンスタッフが作ったオードブルやサラダといった軽くつまめる系は沢山用意されている
別テーブルには数種類のワインを始めとしたアルコール類に自分達用のジュースも沢山ある
店内内装は昨日のままなので十周年仕様、姉が夜なべして作り上げた大作のカーテンが存在感放っている
(そういえば落ち着いてよく見れなかったもんな)
準備にイベント本番営業に追われてそこまで全体内装が見れなかったが、こう見るとなかなかの高級感を醸し出し「特別」を演出している
昨日来てくれたお客さん達はどう思っただろう
色々と思い馳せながら見てると福羽がやってきた
「なあなあ茜さんは?もうすぐ十八時になっちゃうけど」
「姉ちゃん何かしてるのかな?…ん?」
連絡しようかとスマホを見たら通知があり姉からであった
(あんたら手伝って)
どうやら福羽と自分のご指名が入っている
もうちょっと事前に言って欲しいのだが、姉に口答えは御法度なのでとりあえず外に出る
「手伝ってってどこに居るかわらんのだが…」
「おい柊、あれだ」
福羽が指す先にヨタヨタと両手に荷物を抱えながらこっちに向かってる
二人で駆け寄り荷物を分ける
「ぷはぁー助かったわ、さすが福羽君!優斗あんた早く通知に気付きなさいよ!」
凄い理不尽な怒られ方してるが弟は従うのみである
「これは姉ちゃん…めちゃくちゃ買ってんじゃん」
「ふふふ!夢のようでしょ?しかも全種類被り無しだから時間掛かったわ」
「茜さん良いんすか!こんな…こんな男子高校生の夢叶えて貰って!」
「あんた達の活躍があってのイベント成功だったからね!」
姉が大量に用意していたのはピザであった
有名チェーン店のピザメニュー全制覇出来るようにカスタムしたら両手一杯になったらしい
三人でやいやいと話しながら店に着いた
「ただいま〜スペシャルピザ届けに来ましたよ〜!」
スタッフ達もおお〜っと歓声上げながら大皿に移していく
いよいよ準備は整い開始時間も迫る
そこに父が両手で抱える大きさの綺麗に照り焼かれた鶏の丸焼きを持ってきた
一番の歓声だろうか丸鶏姿焼きはインパクトが凄い
むしろどう食えば良いのか…
「さあさあ揃ったぞ皆!全員居るかい?」
父はシェフハットを取り一人一人顔を眺めてく
「ほら、皆飲み物用意して〜」
姉はドリンクを促し準備していく
「あなた達はジュースだから間違って取らないようにね!」
母からは注意喚起が入る
軽くわちゃわちゃしながらも皆グラスを手に父を一斉に見ている
父は再度一人一人言葉は無いが目を見て想いを伝えるように見回し、最後に自分を優しく見つめ声を出した
「皆、昨日イベントお疲れ様でした!そして本日改めて皆にお礼を言わせてくれ…十年、節目までやれた皆のサポートに本当ありがとうございます!この先も続けれるようにお力をお貸しください!」
パチパチパチパチ
自然と皆から拍手が起こる
「今日はつむぎ亭十一年目のスタート、祝いに乾杯とさせて頂きます、乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
全員が合わせてパーティが始まった




