鹿島 詩華
お客さんが店内にどんどん案内されていき、あっという間に満席となる
満席になるまでのお冷出しをフル回転で運びつつ注文を聞いていく
この立ち上がりが一番慌ただしい
先程母から教わった提供の心構えと動作のポイント意識しながら動き回る
チラリと福羽はどうだろうと逆サイドで動く彼を目で追った
しっかり笑ってる
昼の時みたいにハイテンションになっているようだ
「あー来てくれたのー!?こちらどうぞ!」
姉の通る声が聞こえる、どうやら友達が来たようである
昼の疲れも見せず元気に皆動き回る
(頑張るか)
そう気合いを入れ直して次のお客さんを案内しようと待合表を確認して名前をお呼びする
(カシマさんだな…)
「三名様でお待ちのカシマ様」
「ハイ!柊君!おめでとうございます!」
先頭に立つふわふわしたオーラ漂う女子が小動物を思わす笑顔で返事をした
鹿島 詩華さん、クラスメイトの女子だった
「凄い並んでるね〜十周年おめでとうございます」
感想を述べつつ礼儀正しく腰を折る
「ありがとう、ご家族で来られたの?」
「そうそう、お昼は予定あったから両親と来させて貰いました!」
家族を誘ってまで来てくれたクラスメイト、鹿島さんには感謝である
「ありがとうございます、どうぞこちらへ」
「お邪魔しまーす、あ!福羽君も居る!」
「んん?鹿島ちゃん来てくれたんだ!」
そういや二人よく話してたな
鹿島さん自体その小動物的なポワポワした雰囲気でクラスの皆から可愛がられているのをよく見る
「あ、そうだこれドリンクチケット、お父さんとお母さんの分無いでしょ?」
クラス内で配布したチケットは本人分だけなのでコソッと渡す
様子を見ていた母もウィンクで応えてくれた
「え?良いの?」
「うん、せっかくご家族で来てくれてるしね」
「柊君…ありがとう!」
ご両親からも深々とお礼をされて照れながら
「それではお冷お持ち致します」と頭を下げてスタンバイしていた福羽にバトンタッチする
福羽もお冷を置きながら何やら話をしている
そう言えばここまででどのぐらいクラスメイト来たのだろう、チラホラ見かけたり話したりもしたが皆チケット使ってくれてるんだろうか
少しレジに行きレジ係してる姉に聞いてみる
「今時点で結構回収してるけど私のと混じってるから最終結果はレジ締め後のお楽しみね〜ちゃんと色分けしてるから集計しやすくしてるわよ」
抜け目ない準備力を見せる姉って凄いなと思いつつも、また業務に戻っていく
時刻は二十時となりラストスパートの残り一時間となる
「ご馳走様でした〜!すっごい美味しかったです!また来ます!」
鹿島さん親子がワイワイレジで会計をしながら姉とにこやかに話している
どうやら満足頂けたようでホッとした時に鹿島さんと目が合った
可愛らしい笑顔でヒラヒラと手を振ってくれている
自分も手を振り返し見送った
テーブルリセットをして次のお客さんを迎える準備してる側を通った福羽が…
「鹿島ちゃん…可愛いよなぁ」
と呟きながら去っていく
その可愛いは小動物的な可愛さを指したのか、それとも…今は気付かないフリしとこう
テーブルリセットを済ませて入り口の姉に目で合図する
受けた姉は外に出て次のお客さんを案内する
そして福羽が人数を把握し持っていくお冷を運び出す
店の若人三人衆とスタッフ達からは呼ばれている三人の連携が形になりつつあった
そして今回流れを止めたのは福羽であった
案内された二人のお客さんは四十代夫婦のようだ
ただ、どこかで見たような、似たような雰囲気の顔立ちをここ最近毎日見てるような…
答えはすぐに出た
「父ちゃん!母ちゃん!」




