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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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30/89

十周年イベントスタート

「なあ柊…あれ間違いないよな…」

「うん…うん…」

 つむぎ亭は開店から並ぶ事は日常ではある

 しかし今日はいつもの三倍は列が長い

 少し早めに遠目で眺めようと二人で言っていたのだが予想以上の勢いに目を丸くするしか出来ない

「アレに飛び込むのか…」

 福羽は半笑いになっていた

 とは言え立ちすくんでも仕方ない

 少し早くに着いているので裏口から入りそっと様子を伺う

 両親を筆頭に姉とスタッフ達の連携スピードに圧倒される

「これは俺達が居たら足手纏いになってたな」

「そうだな…」

 店内も店外も賑やかに活気が凄い、これまでも忙しい店は子供の時から見てはいたが間違いなく過去最高の活気だ

「柊、行こうぜ!おはようございます!」

 福羽は武者震いをして元気良く戦場へ入っていく

 こういう所が彼の強みなんだろうと笑いながら続いて挨拶をする

「おはようございます!父さん凄いね」

「二人共おはよう!いやー楽しいね!今日テイクアウト頼むよ!」

 父のハイテンションはなかなかにレアだ

「来たわねー!おはよう!二人とも頼むわよー!」

 母が通り掛かりに告げていく

 忙しい中でも笑顔溢れるのは凄い

 スタッフ達もそんな両親に引っ張られて持てる技量を発揮している

 皆に挨拶済ませて福羽と共にエプロン身に纏い自分達の戦場へ出る

 

 フロアを通り外に向かう、その時だった

「あ!柊ー!福羽ー!来てるよ〜!」

 

 声が掛かった方を見るとクラスメイトが数名確認出来た、エプロン姿の自分達を見て盛り上がってる

「二人とも頑張れよ!お店十年おめでとうー!」

 客席から拍手が起こり十周年のお祝いに包まれ嬉しくも恥ずかしく笑うしか出来なかったが自然とお辞儀をしていた

 福羽は明るく手を挙げクラスメイトには親指を立て応えていた

「まさかあんな拍手起こるとは」

「柊のお父さんお母さんもお辞儀してたな」

 サラッとやり取りをして外に出る

 先程より行列が長くなっている、まずは販売所を立ち上げよう

「来たわね!なんか店の中騒がしかったけどなんかあったの?」

「ん?まあね、終わったら話すよ、姉ちゃんドリンククーラー立ち上げ中?」

「そうよ、優斗はシチュー頼むね!福羽君は氷こっちお願い!十二時ピッタリに販売開始宣言するわよ!後五分よ!」

「任せてください茜さん!やったりますよ!」

「了解」

 姉の音頭で二人が動く


 シミュレーション通りに動き、その時を迎えた

「只今より本日限定つむぎ亭特製シチューボックスの販売を開始します!」

 十二時、姉の開始宣言で販売が始まる


「私はドリンクとあんた達とレジのフォローいくわ!優斗そのままシチューで福羽君ボックスパッキング!」

「了解!」


 開始宣言から姉の誘導でみるみる内に列が販売所にも並んでいく

 人の圧が凄い!自分に向かって人が並ぶとはこれ程に圧力が掛かるものなのか

 注文方法はシンプルだ

 シチュー担当の自分に購入数を言って貰い注文数分シチューを蓋付きボウルに注ぎ横の福羽にサーブ

 福羽はパンとサラダをセットしたボックスにシチューを納め伝票とボックスを渡して店内で会計をしてもらう

 姉はドリンクがあればシチューを注ぐ間に用意しボックスと共にお渡しをしつつお客さん導線を整理しながら混乱の無いようコントロールしていく

 開始直後から一気に並びまだ増えていくし更に店内の食べ終えた方がお土産に買い求めるまで発生していた

 つむぎ亭特製シチューボックス、千円

 やはり十年の看板メニューにこの価格である為か、姉の地道な一カ月の広告活動が効いているのか

 ご新規さんから常連さん、福羽が呼び寄せたクラスメイトもチラホラと顔を見せ目が回る忙しさとはこの事である

「シンプルな作業なのにすっごい楽しいわ」

 福羽は笑いながらボソッと言ってくる

 ハイになるとはこの事なんだなと自分も笑ってる事に気付いて目の前の業務に集中した


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