表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/89

イベント直前

 レンタル機材の搬入を始める為バランスを見ながら福羽と台車に積んでいく

 なかなかの力仕事だ、特に機械は丁寧に扱わなければならない

 家から店までは徒歩10分程で距離はそうでもないがガラガラと崩れないよう台車をまっすぐ押すのが意外に難しい

 福羽と交代しながら倍の時間かけて店に辿り着いた時は汗だくであった

「はいはい二人ともご苦労様〜アイスティー淹れたげるからちょっと休んどきなさい」

 母が出迎えて飲み物を持ってくる

 ソファで福羽とぐったり休んでいると父がやってきた

「お疲れ様、まあ後一踏ん張りあるけど頑張ろう」

「父さんさっき姉ちゃんから聞いた明日の目玉ってよく許したね?」

「ああ、茜の勢いと企画プレゼンに押されてな」

「柊のお父さんは反対じゃなかったんですか?」

「ふふ、基本的に反対は無いよ、勿論最終ジャッジはするけどね」

 意外だった

 これまでイベントや販促的な事どころか宣伝すらやってる事を見た事なかったので、昔の頑固な気風を守る味勝負のお店スタイルとばかり思っていたし姉は定期的に宣伝を促したり昔から父へアタックしていたが全てノーとされていたのだから

「今回は茜が成長して考えて納得させられる準備をしてきたって事だよ」

 父は嬉しげに語ってくれた

「あんた達ー外手伝ってー」

 姉の声が響く

 福羽と共に店前にでると母含めスタッフ達がワイワイ集まってる

「これ高さこんぐらい?」

「いや、優斗君達に合わせた方が良いかな?」

「朋子さーんコンセントこれで良いですかー?」

 スタッフ達がわちゃわちゃしながら持ってきたレンタル機材や机を設置している

「ちょっと光司君こっちきてー」

 スタッフに呼ばれ福羽は連れていかれる

 いつの間に下の名呼びにまで仲深めたんだろうか

「優斗、キッチンから父さんとアレ持ってきて」

 アレ…ああイベント目玉の品だな

 キッチンで仕込みを再開していた父に声掛けをする

「父さん、鍋良いかな?姉ちゃんがセットの調整したいみたい」

「お、よし優斗そっち持って…絶対落とすなよ、重いぞ!」

 二人で息を合わせ大きな寸胴鍋を持ち上げる

 この鍋の重さはなかなかだ、そしてその重さの中には自分と福羽の涙の成果が完成系として入っているのだ

 ゆっくりゆっくりと鍋を外に出しセッティングの終えた簡易卓上販売所へ向かう


 そう姉が言ってた目玉とはつむぎ亭自慢ビーフシチューのテイクアウトであるのだ

 火入れを出来るようにレンタルの業務用コンロ、簡易的な販売スペース、日差しを遮るタープ、ドリンクも販売出来るようにパラソルを立てた販売所

 父と二人で出来上がったスペースにおぉっと感嘆の声を上げ持った鍋をコンロ台に置く

「姉ちゃんこれ考えたの?凄いじゃん」

「この為に役所とか回って許可とったからね〜、福羽君はどう?鍋のその高さから販売スペースにサーブ出来そう?」

「バッチリです!俺の身長に合わせてくれてるのでやりやすいですよ!」

「よしよし、土台コンロも強度良し!明日このセットでいけそうね!……じゃあお父さん、優斗とりあえずまた鍋持って帰って」

 そりゃそうか、外にビーフシチュー入った鍋放置は出来んもんな

 早々に出番を終えたたっぷりシチュー入り鍋を再度担ぎキッチンへと戻っていく……

「茜はりきってるな」

「そうだね」

 父と共に笑い合った


 外のセットが済めば次は中だ

 こちらも目玉がある

 父も仕込みを終え母と共に分担して指揮をとっていく

 姉が夜な夜な用意した店の長形に合わせた豪華さと暖かさを感じる大きなカーテンを皆で取り付けていく

 そしてこれまた夜な夜な量産された小物の取り付けも手分けして…

 最後の一つを設置し息を吐いた

「おおぉ〜…」

「こんなに変わるのか…」

 全体的な印象としてワンランク上の優雅さも感じるフォーマルな雰囲気に見える

 普段のつむぎ亭が暖かさを基調にしているからか店が変わったように見える

「皆どう!?私の成果は!?」

「良いよ良いよー!」

「明日頑張ります!」

「茜ちゃん天才!」

 スタッフ達の称賛を浴びて輝く姉がいる

「いや〜なかなか良いわね〜お父さんはどう?」

「ああ凄い特別感が出てるな、ありがとう皆、最高の店十年目の誕生日だ」

 本番は明日だが一足早いお祝いとなったのだろう

 両親共に笑顔のままだ


 嬉しそうな皆を眺めてると福羽がやってきた

「明日、頑張ろうぜ!」

 福羽の言葉を拳を出し応えた、コツンと拳同士を合わせて明日のイベント成功の為に頑張る気合いを入れた


 つむぎ亭十周年を迎えた朝、自宅でスタンバイしていたところに福羽がやってきた

 時刻は十時、出勤は十二時からだが緊張があるのだろう居ても立っても居られないといった感じで来たのだろう

 気持ちはわかる、自分もいつもと違う緊張があるのだ

「柊はこういう店のイベントとか経験無いのか?」

「うん、店…と言うか父さん母さんがこれまでやらなかったからな、クリスマスとか少し飾るぐらいしか無かった」

「そう考えると茜さんすげーよな、殆ど企画と準備こなしてたんだろ?」

「確かになぁ」

 姉はもう店の準備に行ってる

 今日の為にこの一ヶ月近く動き回っていたのだから気合いが凄かった

「俺達の流れ確認しとこうぜ、まずスタートはテイクアウトだろ?」

 まず昼営業は福羽と自分と姉の三人体制でビーフシチューボックスの販売である

 一人がオーダー受けたビーフシチューを注いでサーブし一人がパンとミニサラダを入れたボックスを用意

 パッキングをしたら伝票を渡して店内レジで会計して貰う流れだ

 実はパンもメーカーから普段扱ってない種類のパンを二種類、甘みある柔らかシンプルタイプのホテルブレッドとシチューによく合う素朴で噛み応えあるハード系のライ麦ブレッドを用意してある

 これらも姉が動き長年付き合いのある卸しからテイクアウトサイズにカットまでしてくれている

 全て合わせてつむぎ亭ビーフシチューボックス一千円と父が破格の決定を下したのだ

 普段の店内の価格なら倍近いので身内目にも大出血サービスだと思える

 仕込み量のキャパがあるので売り切れゴメンとなるが結末はいかに?

「俺達が関わったビーフシチューなんだよなぁ」

「柊と俺で泣きながら切った玉ねぎが形になるって嬉しいな」

「テイクアウト販売スタートは十二時の自分達が立ち上げスタート任されてるからな、いつ売り切れるかな」

「夜まで残ってるかが逆に心配だよな」

「でもさ、売れずに残ったら嫌じゃない?」

「スッゲー悲しい、玉ねぎの時より泣くかもしれん」

 二人で打ち合わせをしながら少しの憂いを危惧しながら時間が迫ってきた


「…よし、少し早いけど…行くか!」

「うん、営業は始まってるからちょっと様子見ていこうか」

 福羽と共に家を出てつむぎ亭に向かう

 ドクドクと心音が高鳴るのを感じながら…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ