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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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バイト三日目

 ――バイト三日目

 本日はつむぎ亭自体は定休日であり営業は無いのだが特別に仕込みの体験をさせてくれるとの事である

 実は自分も本格的な仕込み作業を体験するのは初めての事であり、父が言うには危険があるからさせてなかったらしい

「そういや福羽は料理するの?」

 用意されたコックコートに袖通しながら聞いてみる

「いやあんまりないな…柊はお店手伝いでやってるんだろ?」

「それが自分もやった事は無いんだよ」

「え?そうなの?意外だ」

 何をするのかわからないのでお互いに不安と緊張を抱きながら着替え終えてキッチンに居た父へと挨拶を行う

「よろしくお願いします!」

 二人揃って挨拶をし父から始めの一言を貰った

「よろしく、まず始めにここは…火があり刃物があり調理機械もある」

「ハイ」

「ハイ」

「大きな間違い起きたら病院行きで済めば運が良いな」

 怖い事をサラッと言う

「それだけ危険なんだキッチンと言うのは、でもその危険は剥き出しの物ではなく人の手人の動き人の意識で価値のある料理を生み出す味方になる」

 福羽と共に息を呑みながら話を聞く

「一つ一つの調理器具達が持つ意味と存在価値を理解するようにね」

「ハイ!」

「よーし!では始めよう!まずは一番の基本であり店の絶対条件…手洗いだ!」

 福羽と自分は少しよろけてしまった

 しかし父は笑いながら言う

「手洗いって顔してるな?さっきキッチンに入る時二人とも自発的に手洗いしていたがウチの基準じゃアウトだ」

 確かに二人してキッチンなのでしっかりと手洗いをしたつもりだったがチェックされていたらしい

 手洗い場にて父のお手本が披露される

 濡らした手にハンドソープを泡立て、手のひらに指の間に指一本一本、手の甲から側面そして手首下肘近くまで擦り合わせブラシで爪と爪の間、手のシワに沿って磨く様に洗い上げ洗剤をしっかり流し切る

 ペーパータオルで水気をしっかり吸い切りアルコールを掛けて終了とした

「すげー丁寧に時間使ってる」

 ボソッと福羽は呟いたが自分も同意見だった

 自分達二人が掛けた時間と箇所の二倍いや三倍は掛けただろうか

「店における手洗いと言うのは、これから一人、十人、百人、一千人と繋がる安全の始まる場所なんだよ、どんなに美味しくても流行っててもココで菌を持ち込めば全てがダメになる」

 真剣に語る父さんの言葉に重みがある

 福羽も自分も真剣な表情となり再度手洗いを実践した


「さて、いよいよ食材と調理器具を扱う訳だが最初に言った通り危険があるからね」

 調理台に用意されてるのはまな板包丁……山盛りの剥き玉ねぎ

 何をするかは予想出来るが泣くのは確定だろう

「二人は今、不安と緊張があると思うが不安は反復して消していくんだ緊張は軽くしていくけど手放すな、それは守ってくれる本能だから」

 父の言葉を二人受け止めながら切り方の姿勢、刃の入れ方を教わり一通り習ったところで反復作業に移る

「えーと二十キロあるから二人で十キロずつ…まあ初回だし三十分で終える目標にしよう」

 そんなに玉ねぎ何に使うんだと思いながらスタートする

 既にきている……玉ねぎの洗礼

 横の福羽を見ると彼も泣いている

 夏休み男子高校生二人並んで泣きながら玉ねぎを刻む

「うーん青春だなぁ」

 後ろから父の何かズレた感想が聞こえた


 約二十分掛け全ての玉ねぎを切り終えれた

「ふむ、二人とも早いじゃないか」

「目が、目が!」

「ううちょっと洗って良い?」

「手洗いがてら洗っといで」

 二人の様子を笑いながら見る父に促され洗い落としていく

「柊何玉切ったよ」

「五玉目から覚えてない」

「あれだけ仕込みで毎回切ってるのかな?すげえなぁ…」

「いや…残念だが福羽はこの後ショックを受けると思う」

「?」


 またキッチンに戻ると父は小型の機械の前に居た、玉ねぎを持って

「優斗は気付いてただろう?」

「うん、昔から見てるもん」

「何が?柊なんか知ってるのか?」

 父は機械のスイッチを入れる

 機械が動き出しシュンシュン音を出す、そう刃が空気を裂く音だ

 そこに玉ねぎを入れていくと……

「うお凄い速さで切られてくる!」

「コレはスライサーと言う機械でな、刃が付いてて回転してるとこに食材当てるとスライスしてくれるんだ」

 あっという間に一玉スライスされてしまった

 二人が包丁でやるよりずっと速い

「二人に手切りしてもらったのは包丁練習もあるが食材の特性、機械の使い勝手、よくわかったろう?」

 なんだか父は楽しんでる気がするものの、自分達の糧になってるのは間違いないので何も言えない

 福羽は何かを思ったのか放心していた

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