バイト二日目後半
中休みを経てディナー営業が始まる
初日に続いてお冷係の福羽とサポートの自分ではあるがディナーはテンポが変わり注意のポイントも変わってくる
ランチに比べるとゆったり感が出て提供皿数も増える
必然的に片付けの際に手数も増えるし、セットしたテーブルクロスをチェック場合によってはリセットもする
「ランチとなんかこう違うな、タイミング?かな」
「そうだな、福羽から見たら昨日より一つ一つが重く感じるのかな?」
自分は切り替わりに慣れているが福羽にとっては未知の体験なんだろう
昨日と同じ店で同じ役割なのに質とスピードが変わり不思議な感覚になるのも仕方がない
満席にはなってるがランチ程待ち行列は無いし夜のつむぎ亭だと知る自分と福羽の差が面白かったのか母が提案してきた
「丁度ビーフシチュー単品が上がりそうね、福羽君行ってみましょうか」
「ふぇ!?」
「何事も経験よ」
笑いながらカトラリーセットを注文のお客さんの元へセットしに行く
(なるほど、あのお客さんは……)
「え、え、どうしよう?俺がいけるのか柊?」
「大丈夫自信持って、えっと料理名はビーフシチューで…ここ熱いから…提供したら……」
軽く料理提供のやり方と注意点をレクチャーしてあげ肩を叩く
「福羽ならいつも通り堂々とすれば大丈夫だ」
「お、おう」
「一番さんビーフシチュー上がったよ」
キッチンから出てくる熱々ビーフシチューをトレーに乗せて覚悟を決めた福羽
そして、何故かこっちも少し緊張してしまいながら距離を取り見守る
カウンター席の一番端に座る気品溢れる初老の男性客
一番の注意ポイントである熱々の器を前に置く事を成功させ胸を撫で下ろす
すると初老の男性は優しげな表情で福羽と二言三言会話をして共に会釈をし戻ってきた
「すげー緊張した、でもあの人すげー良い人だった」
「何て言われたの?」
「優斗君と茜ちゃんに続いて若い子が居るって嬉しいねだって」
少し恥ずかしいが常連さんである初老の男性は、自分や姉が幼い頃から来てくれてるお客さんであり一番最初に常連さんとして認識した初めての人である
そういや自分も初めての提供はビーフシチューであの人だったような……
「綺麗に堂々としてて良かったわよ福羽君!」
母は嬉しそうに背後に立っていた
「柊のお母さん、いやー緊張しましたよ」
「優斗もああやって初めて提供したわよねぇ?あんたは最後まで震えてたけど」
余計な事は言わないで欲しい所だ
茶化されながらも時間は進み夜の営業も終盤
つむぎ亭閉店時間は他の店に比べると少し早い二十一時オーダーストップの二十一時半閉店となる
バイトとして二日目が終わろうとしているが常連さんの顔も何人か見た
手伝いとして長く関わっては居たが勤務として対面すると意識が変わる
福羽は初めての常連さんを接客通じて覚えただろう、自分はなんだかんだ数人記憶に残ってる
両親はどれ程の人々を覚えてるんだろうか?
その経験差の幅を感じながら二日目が終わった




