イレギュラーと安定
——夜つむぎ亭、バイトの時間
「優斗君!お見舞いありがとうー!」
店に入りまず出迎えてくれたのが、インフルエンザで倒れていた蓮さんだった。
「蓮さん!もう出て大丈夫なんですか!?」
「待機日数もお休み頂いたし復活したよ!いやー迷惑掛けてごめんね」
「そんな、仕方ないじゃないですか」
人間生きてれば必ず何かがあるものだ、気にしすぎないで欲しいものだ。
「久しぶりな一緒の時だね、優斗君成長したかな?」
「いや、一週間も経ってないでしょ」
軽口を叩きながら準備をしていくと父から声が掛かる。
「蓮は病み上がりだから抑え気味に動けよ、優斗フォロー頼んだぞ」
「やだなぁオーナー元気ですよ〜」
「全く、動けなかった身体ってのは無理に元通りの動きにはならないんだ、いいからセーブしながらやれ」
これも父なりの心配と言うか気遣いなんだろう。
クスリと笑い自分もキッチンの準備を急いだ。
その日の営業は先輩の蓮さん作業フォローを意識していたが、病み上がりとは思えない動きの蓮さんに感心してしまう。
「全然元気ですね」
「でしょ?これも皆のおかげだよ」
お見舞いや心配してくれたり、抜けた穴を埋めてくれた店の皆に感謝をしている。
「そう言えば三者面談があったみたいだね、どうだったの?」
「そうですね、ハッキリ進路は決めれないけど迷いは少し晴れたかなって」
「優斗君は内に溜めるタイプだからね〜でもその様子じゃ大丈夫そうだ」
「自分は良いんですけどね、福羽が揉めてました」
「え?光司君が?トラブルになる要素ある?」
「何か親父さんに今回ぐんと上がった成績だけで良い気になるな!って言われて喧嘩になったみたいです」
今考えてもまあまあおかしい理由じゃないかなと、努力の結果を基に進路を探るのだから理不尽ではある。
しかし、蓮さんは違った視点で捉えたようだ。
「ふーん、そりゃスタート地点に立ったばかりの光司君への戒めだったんじゃないかな」
「戒め?」
「そう、例えばそのいきなり上がった成績に慢心して次下がった時はどうする?もしくは先々成績が安定しないとか」
蓮さんは問いかけてくるが、自分に置き換えたら……嫌だなマズイなと思ってしまう。
努力して取ったが偶然良い結果だったんだと評価されるし、やはり継続しなければ説得力が無い。
幼い頃からちゃんと高成績を維持している鹿島さんクラスなら別だが、自分も福羽も今回の中間テストがジャンプアップしすぎた感はある。
「つまり次も取れたら認めるって事ですか?」
「そうだね〜俺の親もそのタイプだったからさ、努力は認めてるんだよ、でも安定した結果じゃないとイレギュラーで見ちゃうんだよ」
「イレギュラー……頑張ったのに」
「一回だけじゃねぇ、二回三回安定するのが次の目標じゃないかな?いやー高校生してるねぇ!」
カラカラと笑う蓮さん、確かに言う通りではある。
維持する事で納得する事が出来るだろうし、本当の実力が分かる。
自分も気を引き締めていたが、なかなか痛い話だ。
考えればまだ一年二学期、次は期末があるし間には文化祭。
日々の学校生活にバイトもあれば上手く立ち回らないと勉強が後回しになる。
高校生とは暇に見えて忙しい、大事な選択が多くなってきている感覚だった。




