人を想う
陰りがある福羽が登校して話を聞く。
「何があったんだよ」
「福羽君ご両親と何かあったの?」
少し考え天井を仰ぐ姿勢を取った福羽だったが、落ち着いたのか話出した。
「今日が三者面談だったんだけど親父が進路の事でうるさく言ってきてな……俺は大学に向けてのつもりで居るって話したら、一回成績上がったぐらいで調子に乗るなとか言い出してよ」
それが本当なら自分でもカッとなる、テストに向けて頑張り鹿島さんの手も借りて掴み取った結果を軽んじて見られている。
「さすがに頑張りを否定された気になって、親父と言い合いになっちゃってな」
それで昨夜のメッセージだったのかと納得した。
「でも三者面談は今日だろ?なんて言うんだ?」
「お袋は静観だったからよくわかんねぇ、朝も普通だったしよ……でも変わらず進学で貫くさ」
静かに聞いていた鹿島さんが口を開く。
「うーん、福羽君のお父さんがどんな意図でそんな事言ったのか見えてこないけど、福羽君が揺らいで無いなら大丈夫よ!」
鹿島さんは笑顔で励ます。
「詩華ちゃんありがとう、親父は学校や成績関係にこれまで口を出さなかったんだけどな……昨日は初めてであんな事言われて何なんだよってな」
福羽は落ち着いたようだが不満は残るようだ、無理もないこの先をどうするかの話だったのに乱された形なのだから。
「はーい、席着いてー」
いつの間にか朝のホームルームが始まろうとしていた、一旦解散して授業の準備もしていく。
(福羽の親父さん……夏見た時はそんな感じじゃなかったよな……)
少しの疑問は残るが、他所の家庭に口出しは出来ない。
友達として福羽の気持ちを汲んでやるしか出来ない事に、少しモヤモヤを感じた。
三者面談期間は短縮授業だからかあっさり一日が終わってしまう。
今日の三者面談予定の福羽が、昨日の事を引き摺らずにこなせるんだろうかと心配してしまう。
「まあ、気にしないなんてのは難しいよな。どうしても言われた事考えちまうし……お袋は何思ってんのかわからないし」
福羽に聞いてみれば、やはり割り切りが難しいようだ。
それでも時間は過ぎて下校時刻になる。
「福羽君、ブレないで頑張って!」
「勢いで生きてるんだから福羽は」
鹿島さんと二人で背中を叩き、元気づける。
「二人共……ああ、当たってくるよ!」
やっと本来の笑顔になった福羽と別れ、帰宅する。
「まさか福羽がゴタつくなんてな……」
円満に見えて何をきっかけに誰が揉めるのかは分からない、今回は福羽だったと言う事だが、内容が良い成績を出してたのにそれが発端。
考えてもよく分からない内容だ。
褒められはすれど怒られる謂れは無いはずなのだが。
(丁度三者面談が始まりだす時間か……)
福羽を案じながら、自分は自分でやる事をやらねばならないと課題を出して机に向かった。
集中していれば時間はあっという間に過ぎて夕方を迎えていた。
「っと、もうこんな時間か」
スマホにはメッセージも無い。
福羽は上手くいったんだろうか気にはなるが、家庭内の事もありこちらから聞くのは躊躇われる。
「……アイツからくるのを待とう」
どのみち話してくる、抱え込むようなら無理矢理にでも聞き出すつもりだが、福羽はそんなタイプでも無い。
スマホを置いてカレンダーを見る、もう十月が見えてきた。
次のイベントは文化祭、ウチの高校は例年割と自由にやらせて貰えるらしい。
それまでには落ち着いて皆で迎えたい、特にクラスの中心に位置する福羽が居ないと盛り上がらないだろう。
(文化祭か……楽しみにするなんて自分らしく無い)
あまり季節の全体イベントに乗り気では無かったこれまでだったが、自分の感性が少し変わってきたように思えた。
福羽や鹿島さん始め、家族とも高校生になって様々な事を体験した。
一緒に何かやる事のワクワク感を知り変わったのかもしれない、それはきっと良い事なんだろう。
「なんだろ、むず痒い」
フッと笑って机を片付けて部屋を出た。




