人それぞれの進路
「これからを考える手助けは私達がするんだから、優斗は怖がらず大人になれば良いのよ」
母朋子と担任小狐は優しく見る。
これまでは一人で大人になるものだと思い込んでいたかもしれない。
三者面談を経て、少し頭が整理できた。
「進んだのかな、たぶん」
進路についての方向も確定ではないし「今現在は進学寄り」と言うスタンス確認で終わった。
「来年はそうも言ってられないけど、一年二学期なんてそんなもんよ」
母と帰りつつ三者面談を振り返っていく。
「さっきも言ったけど優斗は大人に向けて勉強しながらで良いのよ、周りの大人や家族にサポート貰うのが恥ずかしいなんて思わないで」
「……わかってるよ」
頭の中ではわかっている理屈だが、気持ち的にはやはり恥ずかしさを感じる。
これは思春期の特性なのかもしれない。
家に着き、今日は店自体が休みだから父も居た。
「おお、お帰り朋子に優斗。どうだった?三者面談は」
「成績の上がり方で褒められたわよね〜」
「まあ……うん」
「頑張ってたからな、優斗が集中して打ち込む姿は見ていたし結果を伴って良かったじゃないか」
「まあ結果は出たけど続かなきゃね」
父も母もいつも通りな感じで安心する。
「……父さんと母さんはどうやって進路決めたの?」
流れで聞きたい事を聞いてみた、二人は昔就職したホテルレストランで出会ったとは聞いている。
「む?そうだな〜元々料理が好きで調理学校選んで、その道に入ったってくらいだから難しく考えた事ないな」
父はサラッと振り返りサラッと言う。
「え、悩んだりとか……」
「そりゃどこの学校や店に行こうかの選択の悩みはあったが、頭の中にぼんやり料理の道ってあったからな、大きくは悩まなかったな」
父には軸があったから大きな悩みに振り回される事は無かったようだ、そこは姉の茜に似てる……と言うか父に姉が似たのかもしれない。
「私も似たものだからね〜でも何かを探しながらだったわよ」
母はコーヒーを注いで言った。
「お父さんと少し違うのは、私は生活の為に就職をした点ね、接客は好きだけど最初からずっと想いがあったわけじゃなかったのよ」
いつも店で健やかな笑顔を見せ接客する母、少し意外ではあった。
「一人一人違って悩まなかった人やなんとなくな人、優斗みたいに悩んじゃう人色々居るものよ」
「そんなもんなのかな……」
「そんなもんだ」
「そんなもんよ」
二人から簡単に言われたら納得するしか無い。
これが自分より長く生きてきた大人なんだろうか、妙な安定感を感じる。
自分もこうありたいなと思う。
父も母も赤子だった自分を引き取るのに悩みはあったはずだ、日常生活の中に赤ちゃんがいきなり入るなんて普通には無い事だ。
何かの軸があるから受け止めてくれたんだと感じる。
そんな二人が引き取った赤ちゃんが、今大人の手前にまで来ている。
恩を返したいなと自分は思い出していた。
——夜、自室。
スマホが震えて着信したチャットを見る。
福羽からだった。
「今日どうだったよ?」
どうが三者面談を指すのはわかる。
「和やかに終わったよ」
「そっか……俺は、荒れそうだ」
思わず目を細めた、福羽も大きな成績の上げがあって怒られてしまうような事は無いはずだ。
「え?なんでだ?そんな要素あるか?」
「進路で親父とズレててなぁ……また明日話すよ」
それ以降メッセージは来なかった。
一体何を揉めたのだろうか、福羽は確か進学を目標に据えていたはずだし前回のテストで弾みが付いて狙える位置にいる。
想像が付かないまま、悶々としてベッドに入った。
——翌朝
「おはよう鹿島さん」
「あ、柊君おはよ〜」
教室に行けば鹿島さんは見えたが、まだ福羽は来てないようだ。
「福羽見なかった?」
「福羽君?まだ見てないわね」
昨夜の事が気になるが本人待ちなら仕方ない。
「柊君は昨日どうだった三者面談?」
「え?うんまあ滞りなく……」
「あはは、何かありそうな言い方じゃない」
「いや、本当に揉めるとかもなくぼんやりだけど先が決まってきたなぁって感じだよ」
「あーちょっとずつ進路の形出来てきたもんね、わかるわ〜」
鹿島さんと三者面談終わった者同士のやり取りをしていた時だった。
「……おはよう」
いつも明るい福羽が低いテンションで入ってきた……




