三者面談
——学校正門前。
道行く人を見ながら母を待つ。
遠くに見知った姿が見えて「来たか……」と呟いてしまう。
「優斗ー待っててくれたの?お昼は食べたの?」
「うん食べたよ、なんかイタリアンのお店だったけど良い店だったよ」
「あら、羨ましい」
母、朋子は少しめかし込んで来ている、やはりそう言う場所なのか時間なのか、なんとも言えない感じだ。
あまりクラスメイトに外で見られるのも恥ずかしいので教室前に移動していく。
「優斗は進路考えてるの?」
待ち時間の間で一番悩み一番遠ざけたい話題から始められる。
「……そりゃ考えるよ、でも答えは……」
「良いのよ答えなんか」
「え?」
「あなたが悩んで出した答えが人の道に外れてない限り、私達は全て受け入れるんだから。あ、迷ったら相談しなさいよ?」
答える前に答えられてしまった、母なりの気遣いだろうか身体の力が抜ける。
「でも、まだ大きな進学か就職かも定まらないと言うか……ふわふわしてるんだ」
「そうなるわよね、茜はもう出来上がったままだったから無意識に比べちゃうのかもしれないわね」
姉は早くから「つむぎ亭を大きくする」なんて夢を外に漏らして生きていたぐらいだ、言われてみてどこか比べていた部分はあるかもしれない。
自分に夢が無い事。
つむぎ亭は好きだし自慢の店だ、だが自分でどうこうは考えていなかった。
母はそんな自分を見て言う。
「優斗は昔から手を伸ばさないタイプだったからね」
「……そうかな」
「そうよ、それが今回の進路相談が始まる時期に大きな壁になってるけど、それはあなただからよ」
「自分だから……」
「進路は合わせるモノじゃなくて見つけ出すもの、そうね……見つからなかったらつむぎ亭でまた探しなさい、これは優斗だけのアドバンテージよ」
縛られるんじゃなく利用をするのだと母は笑いながら言う、そんなに軽く言って良いものか戸惑うが更に力が抜けていく。
「そんな簡単に……簡単な事で良いの?」
「考えすぎて答えが出ないなら軽くしちゃうのも生き方よ」
「柊さんどうぞ」
ポカンとした時に先生から呼ばれる。
ただ数日悩んでいた自分を客観視出来たのか、焦りや戸惑いはもう無かった。
(……考える事に縛られ過ぎてたのかな)
——教室、二学期中間三者面談。
「お忙しい中お越し頂きありがとうございます、担任の小狐です」
「優斗の保護者です、ありがとうございますよろしくお願いします」
母と担任の挨拶を見ると何かむず痒い気になり、母が「保護者です」と言う意味が今になって理解出来た自分に少し現実を知る。
母は母であるが実の母では無い、本当の両親は居ないからこそ母の朋子は昔から「母です」では無く「保護者」と言う言葉を使っていた事を思い出した。
もちろん実の息子のように愛情は注いで貰えてると思うが、現実は常に現実のままだ。
「柊君の成績、伸びたわね〜百三十位前後から学内五十位までジャンプは凄い事よ」
早速前回の中間テストの成果を褒められ少し照れてしまう。
「鹿島さんに教えて貰えたのが大きいです」
正直に言っておく、実際鹿島さんの教えが無ければ何も変わらなかっただろう。
「それでもやろうと頑張った柊君が居たからだよ、自信持って」
「優斗も家で頑張ってたもんね」
「ご家庭でも取り組めているのは素晴らしいですね〜、さて、この結果を受けて本題になりますが……柊君の中では進路のイメージは湧いてるかな?」
きた、と反射的に思ってしまう。
しかし、母と待ち時間で話をした「縛られる事なく軽く考える」の気持ちが澱みなく今の気持ちを吐き出した。
「自分はまだハッキリしないんです、ただ気持ちは進学寄りになります」
総合的に、でも重たく考えないで先々の事を考えると、進学をベースにまだ探す道を取りたかった。
「ふむふむ、学力もこのまま行けば大学を選ぶ事は出来ると思います、学部によって難易度や更に先の進路方向は変わりますが今はまだ大枠決めで大丈夫」
小狐は優しく笑い肯定してくれた。
母も頷いている。
「優斗は考えすぎだから焦らないで決めなさい」
「お母様の言う通り、今の成績をキープ出来れば道は沢山あるからね」
二人から励まされて、何故自分はあんなに悩んだのかと少し拍子抜けしてしまったが……
「悩む事は必要だし無駄じゃ無いからね、それも柊君の血肉になってるから」
「先生からも言ってもらえたし私は応援するからね」
あっという間に過ぎ去り特に詰められることも無く、三者面談は終わりを迎える。
(力を入れすぎない様にか……頑張ってみるかな)




