大人とは
先輩蓮さんのインフルエンザにバタバタした日曜日だったが、それでも月曜日は始まる。
つむぎ亭は姉と美香さんで代役を務めるから自分は気にせずに、日常を過ごしなさい。
父と母はそう言って笑って学校に出る自分を見送る。
そうなのだ、こうやって学校に送り出される事が当たり前のようで実は恵まれている環境にいるのだ。
学校は休もうが代わりを手配する必要は無いが、社会人になれば変わってくる。
店や会社で担当するポジションや受け持つ仕事がストップするか、代役がこなさなければならなくなる。
そんな事を気にせず休める学生が羨ましいとは聞いたりするが、自分はそう思わなかった。
自分がまだ未成年の子供である現実が突きつけられているような、バイトしたりして背伸びして見ても足りない自分が見えてくるようだから。
「……子供か、大人っていきなり大人になるのかな」
呟いてみるも虚しく消えるだけ。
自分の中の大人ラインはまず年齢、次に社会人かどうかだ。
年齢の壁は痛い程分かる、お酒やタバコが許される年齢だし悪い事をすれば逮捕され信用を失う……自分は年齢が十六になった時に本当の両親についても明かされた。
本当は皆が何かの真実を明かされ出す年齢じゃないだろうか?知っているようで知らない事の世界が見えてくるのが十六歳〜二十歳のゾーンじゃないだろうか?考えれば考える程に見えてないものや隠されてる事が沢山あるんじゃないか。
疑心暗鬼になってしまう。
悶々としながら学校に着いてすぐに福羽が寄って来た。
「いよー!おはよう柊……なんだ暗い顔して?」
自分ではいつも通りのつもりだったが、福羽はこう言った表情に違和感を覚えるタイプだ。
「なんでもないよ、昨日は姉ちゃんが世話になったな」
話題を逸らして昨日のライブハウス「スパイスボックス」での様子を聞く。
「ん〜?まあいいか、そうそう茜さんも来てアントガールズ可愛くて、お客さんは皆女の子でスッゲー華のある空間だったぜ!」
福羽の様子から今だに興奮が見える、相当な空気だったんだろうと伺える。
「姉ちゃん大人しくしてた?」
「めちゃくちゃ動き回ってたぞ、その辺りの人と仲良くなってたな」
(うーん、コミュ強)
「俺もさ……逆ナンされちゃってな」
「うん?勘違いじゃなく?」
どうやら自慢がしたい空気、少し面倒な気配はするが気にはなる。
「お姉さんに上がりは何時〜とか可愛いね〜とか言われてよ、俺テンパってドリンク溢しちゃったんだよ」
「あらぁ……」
福羽は陽キャだが意外とそういう流れには弱いタイプである、しかし仕事中に絡まれたら回避も出来ないだろう。
「そしたら店長のトオルさんが、さっと助けてくれて片付けフォローまでしてもらってよ……」
「ふむ」
「トオルさんが、こんな風に揉まれてもっとビッグになるんだよ!って励ましまでくれて、俺小さいなぁって思ったんだよ」
「小さい……か」
福羽も明るく卒なくこなしてるようで、実際にはまだまだ小さい自分自身を見ていた。
その事実に同世代は皆何かを感じてるのかなと、少し安心した。
「なあ福羽」
「なんだ?」
「大人になるってどうなったら大人なんだ?」
「はぁ?」
ついつい心にあった疑問を口にしてしまった、福羽もキョトンとしている。
「……うーむ、酒が飲めるとか?」
「いや、そういう年齢とか制限解禁じゃなくてさ、今の自分らバイトして社会に出てるけど線が引かれてるじゃないか」
「言いたい事はわかるけど……多分大人に聞いた方が早いぞ、俺達同じラインなんだから」
福羽は最もな事を言う、確かにそうだし周りに大人は沢山居るのだ。
「俺なら今はトオルさんかな、親に聞くのは違う気がするんだろ?」
「うん、親は教えてくれるだろうけど親目線が入ってくると言うか何というか……」
「柊なら店の……って考えたら小さい時から皆知ってるから親目線に近いのか」
自分が悩むのはそれもあるかもしれない、店の皆は小さな頃から関わっていたから今更聞きにくいのもある。
もしかしたら、自分の中で何か欲しい答えと違うのが出たらどうしようと言う思いがあるのかもしれない。
それも憶測ではあるのだが……
「まあ、柊は実家の店でバイトしてるから完全に外に出れてない気持ちなのかもな」
福羽が言った言葉が深く心に刺さった。
(外に出てないか……)




