迫る三者面談
——一日が終わりを迎えるホームルーム。
担任の小狐が皆の注目を集める。
「はい!皆懇談の日程渡していくから順に取りに来て〜」
ついに迫ってきた三者面談、一年二学期のテストと並ぶ気が重くなるイベント。
クラスメイトもため息を吐いて少し重い空気になる。
「はい、柊君はこの日ね」
見ずともわかるのだが一応確認はしておく。
つむぎ亭の定休日水曜日に合わせてある、来るのは母だしいつも通りではある。
「はーい、皆楽しみにしときなよ〜あと進路もちょこっと考えておきなよ」
小狐先生はそう言ってホームルームを締めくくり解散となった。
「柊はいつだ?」
終わって帰り支度中に福羽が聞いてくる。
「自分は水曜だな、福羽は?」
「俺金曜日、でも今回は成績良かったし怒られる事は無さそうだ!」
ちょっとウキウキしているが進路関係は気にならないんだろうか?それとも自分が気にしすぎなだけだろうか?福羽を見てると悩みが薄れていく。
「なんだ?ジッと見て」
「いや、福羽は悩みが無さそうです羨ましいなっと」
「どう言う意味だよ!俺にだって悩みはあるわ!」
「例えば?」
「彼女が欲しいなぁって」
「……そうか」
もうしばらくは彼に悩みは無さそうで羨ましい。
とは言え、ウジウジ悩んでても仕方ないし三者面談で何かしら出てくるだろうと切り替える。
「そうだ、柊これ茜さんに渡しといてくれないか?」
福羽はピラッとチケットを差し出してくる。
「なんだこれ……スパイスボックスのチケットじゃないか」
「茜さんから次の日曜に行くからチケット用意出来たらって言われたんだ」
「へぇ〜姉ちゃんがね……って福羽、姉ちゃんと連絡取り合ってんの!?」
「あれ?番号交換してるぜ?知らなかったのか」
まさか姉と福羽が繋がってる等知る由もない、さすがのコミュニケーション強者の二人だ。
「いつの間に交換してたんだよ……」
「夏のつむぎ亭イベントからだぞ?」
そんなに前からとは何も言えない、まあ本人達の話だしからとやかく言う事も無いが。
「変な話は流すなよ」
「なんだよ変な話って!茜さんライブハウス久しぶりに行きたくなったって言ってな、ちょうど女子限定だったから良いかなって」
女子限定ライブ……思い当たる節があるがまさかと福羽を見る。
「そうさアントガールズが出る日さ」
「自分だけ除け者か……」
「仕方ないだろ、俺はスタッフだし。ちゃんとレポート送るから我慢しろよ〜茜さんからも教えてもらえるさ」
姉から教わると長くなりそうなので遠慮したいが、今回は仕方ない。
女子限定ライブなのだから、のこのこ行く訳にもいかないしバイトもある。
「しかし姉ちゃん、いつ勉強してるんだ?」
あまりに謎な大学生の姉行動を不思議に思いつつ、福羽と下校して行った。
帰宅すればタイミング良く姉がダラダラしていた。
「姉ちゃん、はい」
「ん?何よこれ……ああ!光司君に頼んでたチケットね!」
「姉ちゃんライブハウスなんか行くの?」
「失礼ね、何度かあるわよ。スパイスボックスさんは初めてだけど女子限定ライブなんて面白いじゃない!勉強になるわよ」
何かしら店に持って来れないかの眼で、施設やイベントを観察する姿勢は凄いとは思う。
姉はさっそくお礼メッセージを福羽に送ってるようだ。
「アントガールズも出るんだって」
「うんうん、詩華ちゃん達のこの間来てた女の子達でしょ?カッコいいわよね〜いや可愛いのかな?」
「どっちかっていうと……」
「あー!ちょっと優斗!新鮮さが失われちゃうでしょ!先入観無く観たいの!」
感想は遮られた、まあ気持ちは分からなくも無いが観て帰ったら姉は散々感想を話すのは良いのかと少し理不尽な気もある。
「まあ……楽しんできなよ」
「はーい」
自分は自室に入りカレンダーを見る、火曜日なのでもう来週には面談がある。
父も母も自分の好きな事を向けば良いと言ってくれるが、それが見つからない事に焦る。
「進学か就職か」
まずはこの二択からだった、流れ的には進学ルートなのだが学びたい事と言うのがまた悩む。
この数日ずっと考えていて変になりそうである。
まだ一年二学期……なのか、もう一年二学期と言うべきなのか。
柊優斗、人生で悩める時間だった。




