進路を絞る難しさ
——週が明けた。
今日からまた学校の日々が始まる。
更には来週には三者面談の期間に入るので、どこか落ち着かない。
登校中に思い返すのは中間で取れた自分にとって良い成績、学年内五十位に入った事だろう。
これは褒められる要素だし、母からも先生からも怒られるとこは無いはずだ。
ただ、問題はある。
進路に付いては全くのノープランだ、進学か就職かも悩んでいるがどっち寄りと言うのも無い。
そもそも選択肢を広げる為の勉強であったが、選択肢を広げた上でそこから絞ると言う不思議な事をせねばならない。
別に進学にしろ就職にしろ、特別な想いも先入観も無いのだがそれがいかんのだろうか?と思うのである。
「時間を延長ってんなら進学なんだろうけど……こだわりなんて無いんだよな、学部とか専攻とか姉ちゃんみたいにはっきりしてりゃ行きやすいけど」
姉は経営学を学びに大学を選んだ、それはつむぎ亭に関わり大きくする為の道として自分で調べて親を納得させて進学したのだから尊敬に値する。
だが自分にはその原動力の源が無い。
つむぎ亭は好きだ、だが店を継ぎたいとかずっと働きたいとは違う。
源が無いからどこに進むかもあやふやに時間だけが過ぎていく。
なんだかんだと考えながら学校に着く。
朝練の部活生達が走っている。
この同世代の人達は部活を通じて何をするのだろう?
プロに繋がるよう結果を出す程強くは無い、数ある学校の一つにしか過ぎないレベル帯だ。
バカにしてるわけでも無いし一生懸命に走る皆を凄いとすら思う。
だが心のどこかにその先に何があるの?と芽生えてるのも事実だ。
「おはよう!」
不意に背中を押された。
押した相手は鹿島さんだった。
「ぼーっとしてどうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
鹿島さんはピアニストの父を持ち自身もピアノを演奏し、更にキーボードでバンドまでやっている。
イメージ的には音楽の道だがどうなんだろう?
「あの鹿島さんはさ……」
「うん?なに〜」
ほわほわといつも通りな彼女はしっかり聞いてくる姿勢を見せる。
「将来ってピアニストとかバンドのキーボーティストになるの?」
聞かれた鹿島さんはパチクリと目を瞬かせ考える。
「う〜ん……特に目指しては居ないけどやれる間はやるだけかな〜楽しいからやってるけど仕事にしなくちゃって思った事は無いよ!」
あっさりと答えられ呆気に取られる。
「え、でもあんなに上手くて小さな頃からやってて……」
「あはは!上手いかどうかじゃなくて仕事になるかどうかだと思うよ〜今素人でも配信して人気集める人も居るし運や流行りが強い要素だもん」
確かに言われたら今の時代は演奏会を聴きにいかなくとも、手元のスマホで配信される時代。
素人でも流行りの曲や昔の知名度ある曲を弾いてみたで視聴者を稼ぐ事だってある。
「……なんでもある時代だからかなぁ」
自分に言い聞かせてみるように呟いた。
「どうしたの?進路相談に迷ってるの?私もなんだよね〜」
鹿島さんですら迷う問題に自分なんかが答えを出せるのだろうかと不安になる……
「うぉーい!おはよう!元気ないじゃん柊!」
うるさく明るい福羽が合流してきた。
「今進路相談で悩んでるのよ〜」
鹿島さんが説明する。
「ああ、来週三者面談だしな!俺は進学して大学生活エンジョイしてそれなりな会社に入ってやろうかな!」
清々しい程に真っ直ぐな福羽だが、ここまで決めてるのは彼らしい。
悩むこちらが馬鹿みたいに思える。
「福羽は凄い奴だな……良いと思うよ」
「なんだ?俺なんか変な事言ったか?」
「福羽君は悩みを吹き飛ばしてくれるよね〜」
彼みたいな生き方が出来ればもう少し楽なんだろうか、でも十六年生きていきなり福羽みたいになるのはもう無理だろう。
若干の羨ましさを感じつつ教室に三人で辿り着いた。
「なあ土日のスパイスボックスでさ、ステージの掃除をやったんだけど凄い光景なんだよあそこ!詩華ちゃん達アントガールズも他のバンドも凄いよ!」
福羽がバイトを始めたライブハウス「スパイスボックス」、色々経験させて貰えてるようだ。
「今度の日曜日にやるアントガールズも出る女子限定ライブハウスもバイトになって、しっかり聴いてくるからな!柊にも教えてやるからな!」
月曜からテンションが高いのはそれが決まったからなのか、しかし女子限定なのに大丈夫なのか?
「福羽は女子限定なのに入れるの?」
「スタッフは別だぞ、と言ってもステージ周辺は立ち入り禁止だがな、入ったらクビになるらしい」
何かとクビになるのをチラつかせるバイト先もどうなんだろうと思わなくもないが、それだけルールに厳しいのだろう。
世の中色んな仕事に職場がある、その中の一つを選べと言うのは難しい話だよなと窓を見た。




