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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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123/202

カップルとは


 姉に連れられリビングに移動して座らせられる。

 全く何があるのか想像がつかない。

「姉ちゃん何なの?何をさせられるの?」

 少し怖くなってきた。

「優斗、あんた駅前に出来たドーナツ専門店知ってる?」

 やっと姉は話し始めたが、意外にも普通な話題だった。

 ドーナツの専門店等チェーン店で有名な店しか知らない、むしろそこ以外に店なんかあるのかと思うぐらいだ。

「……駅前、最近あっち行ってないしなぁ」

「そう、知らないのねコレがチラシよ」

 わざわざ手渡されたチラシを見て「あードーナツだね」としか感想が出ない。買いに行けと言うならもう言ってるはずだし意図が見えてこなかった。

 カラフルなドーナツのラインナップにまあ美味しそうだなと思いながら下に向かって見ていくと……


 カップル限定ドーナツ、ご購入者はお二人ご来店で全品値引きイベント開催。


 目が丸くなり、姉の意図が分かった瞬間立ち上がった。

「待って!優斗!好きなドーナツ買ってあげるから!」

「嫌だよ!なんで姉ちゃんとカップルのフリしてまでドーナツ買わないけないんだよ!」

 姉はあろうことか弟を使い、このカップル限定ドーナツ購入イベントに参加しようとしていた。

 そもそもそれはルール違反じゃないのだろうか。

「友達呼べば良いじゃん!」

「皆遠くに住んでるのよ!」

 押し問答が続く中で騒ぎに何事かと母が出てきた。

「なにしてんのよアンタ達は」

「母さん、このイベントに姉ちゃんが自分を使おうとしてるんだよ」

 母にチラシを見せ、イベント内容の部分を見せた。

「ん〜……カップル限定イベント!?茜あんた優斗連れて行くつもりなの?」

「だって近くに優斗しか居ないんだもの!」

 母も驚く姉の計画、姉はたまにこういう暴走をするが被害は自分が受けるのだ。良い加減そこは大人になって欲しい。

「あんたバカじゃないの……そもそもそれはルール違反でしょ」

「うっ……」

 ごく当たり前な事を突かれ言い返せない姉。

 当然の事である、他人同士でカップルのフリならまだしも姉弟でやる事じゃ無い。

「そのカップル限定ドーナツがどうしても食べたかったんだもん」

 反省と言うより開き直りモードだ。

 諦めムードは漂っているので、これまでの母娘の関係から終結するだろう。

「じゃあ私達が買ってきてあげるから、それで良い?」

「ん?」

 思わぬ事を言い出した母を見てしまう、どう言う事だ。

「母さん何を?」

「私とお父さんならカップルじゃないの」

 カップル……広い意味でならそうなのか?そうなんだろうきっと。まあそれなら納得は出来る。

「お母さん……!」

 姉は感謝の眼差しだ。

「店の中休みで行くから茜店手伝いなさいよ」

「うん!優斗はもう良いよ、ありがとう」

 自室に戻され、思う。

 振り回されただけじゃないかと。

 これはもやもやが残る!と身支度をして散歩する事にした。


「全く……姉ちゃんの自分勝手には困る……」

 特に行くアテもなくぼやきつつ歩き出した。

 秋の空気に少し落ち着き、意味はなく歩いてると遠くに駅ビルが見えた。

 (ドーナツ見に行くだけ行ってみるか)

 駅の方面に歩き出し、道中の店も外から覗く。土曜日だからか人は多い。

「カップル限定イベントとか色んな事考えるよな」

 父が持つつむぎ亭はイベントを滅多にしない、飾り付けや季節メニューぐらいだが世の中の店は結構イベントに力を入れてる気はする。

 それこそ今はSNSも活用するのがスタンダードなぐらいに「企画と発信」が溢れてる。

 父と母はあまり乗り気じゃないが時代の流れを否定もしていない、姉はつむぎ亭の魅力を全力発信したいスタンスだ。

「姉ちゃんが店のSNS作ったら毎日齧り付きそうなんだよな」

 昔に父は「今来ているお客さんで精一杯だからね」と姉を諭していた、確かに営業開始から並ぶ状態で新しいお客さんを並ばせるのもどうかとは思える。

 善し悪しなんだなと思いながら、噂のドーナツ店が見えた。

 イベント効果なのかカップルがチラホラ。

 (あそこに父さん母さん並んで入るのか……考えないようにしよう)

 何だか寒気がしたが、熱気ある店は盛況だ。

 少し遠くから見て振り返った時だった。


「柊君?」

 聞き覚えのある声、顔、鹿島さんが目の前に立っていた……

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