大人の連絡の距離感
——つむぎ亭営業終了後、片付けの場にて。
「オーナーが今日わざわざ前に出る用意までしてたのは友達の為だったんすね〜」
父が確実に会えるよう手配した美香さんが納得したように言う。
「すまんな美香、蓮おかげで二十年ぶりの縁が繋がったよ」
「いえいえオーナーが喜ぶなら全然」
「私も優斗君の成長見れたし!」
基本的に美香さんとは被らないシフト配置なので、自分も良い刺激になった。
「真希とはホテルのレストランで一緒だったんだよ」
「ん?」
確か鹿島さんのお父さん真希さんは有名ピアニストなはずだが……
「お互い修行時代で真希はアルバイトしながらだったんだ」
「あーなるほど」
納得出来た、下積み時代ってやつだ。
「アイツは才能があったからすぐに大きな楽団に拾われて行ったから、そんなに長くは一緒じゃなかったんだけどな、ウマがあって仲良くしてたんだ」
「へ〜父さんは修行続けてる時に連絡取らなかったの?」
「ふふ、社会人になるとなかなか余裕が無くてな、そうこうしてる間にここつむぎ亭も構えたから」
鹿島さんのお母さんも大人になると年単位で会わなくなるとか言っていた、やはり人付き合いの仕方が変わるのだろう。
「あーでも分かる気がするかな〜私も高校時代毎日遊んでた友達と年越しメッセージとか送るぐらいになったもん」
美香さんは頬に手を当て思い出す様に言う。
「俺、高校時代の奴何してるかわからないなぁ」
蓮さんも言い出す。
自分に置き換えたら社会人四年目くらいの先輩達がそう言ってるのを聞くと、他人事とは思えなくなる。
「優斗君もいつかそうなるけど、頼りがないのは元気な証って言うからね」
蓮さんはそう付け加えた。
「まあ蓮の言う通りだな、実際二十年会わずだったが真希は全国的に周るピアニストになってたし、私も店十年やれてる訳だから」
父は嬉しげに言った。
「周助さんは真希さんと交流復活するの?」
母が聞いて来た、確かに今回縁が繋がり交流復活になるのはおかしくないが。
「え?特に連絡はしないぞ?」
女性陣はえぇ!?と顔を顰める、男性陣はまあそうなるかなと反応が見事に別れた。
「えーなんでよ久しぶりに会ったんでしょ?」
母の問いに父は答えた。
「だって、そのうちまた食べに来るだろう」
あっさりした答えに母は「これだから男の人はわからないわ……」と諦め顔だ、美香さんも「えぇ……」と引いてる。
「でもそんなもんですよね?必要あれば連絡するし」
蓮さんは父寄りだ、でも自分もそっち寄りな考えと言うか気持ちが分かる。
四六時中連絡を取り合うのはおかしな気はするし、通じ合っていれば良いんじゃないかと思うのだ。
それがたまたま父達は二十年空いてただけで……
「男の人ってたまにそんな部分ありますよね〜」
「わかんないわよね〜会ったんだから連絡取り合えば良いのに〜」
美香さんと母は、もはや男達を非難するモードだ。
父はどこ吹く風ではあるが。
自分に置き換え考えたら、今仲が良く遊び回るのは福羽と鹿島さん。
ただ、学校で毎日会い1日の内半分近く過ごしている。
これが卒業して進学や就職となれば離れ離れになるだろう、その後すぐくらいは近況報告がてら連絡は取り合うだろうが次第に薄くなり途絶えても、おかしいとは思わない。
ドライな考えなんだろうか?でも大人になるってそれも含めて人間関係や生活環境が変わる事じゃないだろうか?
なんとなく現役高校生の身で考えてみたが、そうなる予感がしていた。
「さあさあ、さっさと片付けて帰るぞ!」
父はパンパンと手を叩き全員を動かす、父が満足そうならそれが正解かと納得した。
翌日起床して土曜日かと、また寝床に潜る。
特に今日は何も無い日だが、勉強するぐらいで終えるのも勿体無いとぐるぐる考えていた。
「……どっか出るかなぁ」
特にアテは無いのだが、外には出たい。
昨日の話から福羽に連絡を取ろうかとも思ったが、予定が分からないので取るのも躊躇う。
母ならきっと。
「予定が分からないから予定聞く為に連絡するんじゃないの?」
と、言いそうだ。
女性はそんなイメージが少なからずあるが、男は必要時くらいしか連絡をしない。
「あ、だから女の子はグループ行動が多いのか」
勝手にそう納得する。
今はとりあえず予定をどうするかだ……
「優斗」
突然部屋の扉が開けられる、この登場の仕方は姉しか居ない。
「……姉ちゃんノックしてよ」
「あんた今日暇でしょ、ちょっと手伝って」
昔からこのパターンになると問答無用で連れて行かれる、諦めて布団から抜け出た。




