二十年の時と親子
父、周助と鹿島さんの父、真希さんは知り合いだった。
再会に懐かしむ二人だが両家族はポカンとしたままだった。
「父さんの知り合いだったの?」
堪らずキッチンの父に聞く。
「優斗が名刺を貰っただろ?あの時にもしかしたらとは思っていたが、また来ると聞いて確信したんだ」
「私知らないわよ?ホテル時代よね?」
母もキョトンとしている、もし真希さんを知ってたら前回来た時に分かったはずだ。
「朋子も新人でホール研修でいっぱいいっぱいだったからな」
父は笑う、しかしとても嬉しそうな姿だ。
「よし、ほら優斗持っていけ」
上がった料理を大人しく鹿島家へ提供しにいった。
「いやぁ優斗君を見た時にお父さんの周助が被ってね〜苗字も柊だったし、名刺渡しておいて良かったよ」
「お父さん、最初に言っといてよびっくりしたわ」
鹿島さんが真希さんに怒っている、まあまあと宥めたが不満顔だ。
「うふふ、でも確かに言っといて欲しかったわ。手土産とか用意したのに」
うっすら詩織さんも注意している、本当に何も言わず「つむぎ亭に行こう」しか言わなかったんだろうなと想像が出来る。
一旦離れて母の下へ。
「うちも驚いたわねぇ、お父さんも予想してたなら言えば良いのに男って本当何も言わないんだから」
母も不満顔だ。
まあ確かに男はその辺り言わずに過ごすかもと、自分もそう思う。
——鹿島家の食後食器を片付けて真希さんだけ「お借りする」と父が連れて二人席に移動してしまった。
「優斗、あんたももう大丈夫だから早上がりして詩織さんと詩華ちゃんのお相手しなさいな」
母が提案してきた。
「可愛い子待ちぼうけはダメだよ〜」
「美香、黙って掃除しろ。こっちは大丈夫だよ優斗君は行っといで」
キッチンも問題無いようだ。
お膳立てもしてもらったのでと、鹿島母娘のテーブルへ。
「柊君いらっしゃい〜」
お母さんの詩織さんが笑う。
「お店は柊君の店なのにね、変な感じ」
娘の詩華さんも笑う。
並んで笑う姿はよく似てる、やはり血が繋がってるなぁと思ったがふと「自分は父と血の繋がりは無いが真希さんはよく分かったな」と思い浮かぶ。
「どうしたの?」
「ん?何でも無いよ」
鹿島さんに自分の特殊な家系事情を話す事もない、心に秘めてお話をしていく。
離れた席で真希さんと父は非常に楽しそうに話している、どれだけ会ってなかったんだろうか。
「凄い楽しそうねお父さん達、あんなに楽しそうなの初めて見たかも」
「自分もだよ、それだけ長い事会ってなかったんだなって思う」
「うふふ、あなた達は学校で毎日会えるからね。大人になると年単位で会わなくなっちゃうものよ」
詩織さんは優しく微笑みながら言った。
「そうなんだ……あんまりイメージ湧かないなぁ」
「鹿島さんは何かしら連絡取りそうだよね」
「そう見える?福羽君の方が多そうだけど」
「うーん、あいつは意外とドライだけどなぁ」
ここに居ない福羽は直接会ったらうるさいが、通信面では必要時くらいしか連絡は無い。
「あら?終わったみたいね」
詩織さんが声を掛ける。
「いやぁごめんごめん、懐かしくて話が弾んじゃった」
「お父さんいつぶりだったの?」
「もう十五……いや二十年近いな、修行時代の戦友みたいなもんだよ」
二十年……自分や鹿島さんが生まれる前の話だ。
「優斗君ありがとうね、君のおかげでまた会えた」
「自分何もしてませんよ?」
「いやいや、周助とそっくりだよ」
「……!」
思わず目が見開いた、周りから見たら父に似てると思われるんだろうか。
「優斗〜ちょっと〜」
母の呼び出しが掛かる、鹿島家に挨拶して母の下へ向かう。
「どうしたの?」
「お父さんがお土産の自家製プリン渡せって」
「父さんが渡した方が良いんじゃ?」
「男はよくわからない格好を付けたがるのよ、あんたも気を付けなさい」
よく分からないが、分かるような気もする。
とりあえずお土産を渡しに鹿島さんの下へ、今日はあっちこっち移動が多い。
「鹿島さん、これ父さんから皆でどうぞって」
「え!?良いの!?やったぁ!」
「あらあら、ありがとうございます〜」
「周助の奴格好付けちゃって……ありがとうと伝えておいて欲しい」
それぞれの感謝を受け取って鹿島家は席を立つ。
会計したところで父はまたやってきた。
ここで渡したら良かったんじゃないかと、ちょっと思う。
「周助、また来るよ」
「ああ、またな」
別れは意外とあっさりで鹿島さんと笑ってしまう。
父と共に帰宅を見送り少し話す。
「二十年ぶり?なんだってね」
「ああ、しかしまさかお互いの子供が同じ学校の友達とはなぁ」
「……父さんに似てるって言われたよ」
「……ほう、案外親子ってのは血だけじゃないのかもな」
笑いながら父は店に入って行った。
自分もきっとそうだよと心で答えておいた。




