進む季節
朝のホームルーム
「皆おはよう〜早速次の懇談の予定日程決まった人は出しに来て〜」
担任が促す。
自分のクラス担任は数学科の小狐 沙也加だ、まだ若い方の先生で皆から人気がある。
「柊はもう出したんだ?」
「ああ、ウチは定休日平日にあるしそこ一択だからな」
福羽は「どうしよう、渡し忘れてたんだよな……」と頭を抱えている。
まあまだ期限はあるが、早めに出したほうが親も先生も困らないだろう。
「よーしとりあえず現段階はこれだけだな、一応進路に関わる話もするから皆もそのつもりでいろよ〜」
そう言って小狐先生は出て行った。
クラスでも「進路」と言う言葉にざわつく。
進学にしても大学のレベルに学科の種類があるし、就職なら会社と職種と悩みは多くなる。
ただ来年二年の今頃はある程度固めて進まねばならない時期が来る。
「実質一年しかないよなぁ」
福羽はそう漏らしながら自分の席に来る。
「そうだな、でもバイト始めるんだろ?」
この間に聞いたライブハウス「スパイスボックス」でのバイトが決まったばかりの福羽だ、これからやる事覚える事は沢山ある。
「びっくりしちゃったよね〜まさかスパイスボックスでバイトするなんて」
鹿島さんもひょこっと現れた。
「圭子さんに感謝だわ!トオルさんに繋げて貰ったから今の俺がある!」
すぐに調子に乗る癖はあるが、これくらいがライブハウスには良いのかも知れない。
「でも勉強もちゃんとしないとクビになっちゃうんでしょ?」
「え!?なんで詩華ちゃん知ってるの!?」
「だってスパイスボックスの学生バイトは、大学生高校生問わずその条件だってトオルさんから聞いてたもの」
「そうなのか?」
「ああ、著しく成績下げたらクビって言われたよ、何でものめり込みすぎて本分真っ当出来ないのは仕事も出来ないからって」
「はは、厳しいな」
割と当たり前な事を言ってくれるが、物理的に締め出すのを明言する職場は珍しい。
「期末でクビにならなきゃ良いな」
「やめろよ、まだ始まっても無いのに……」
「また勉強しましょうね」
予鈴が鳴って国語担当教師が見えた、今日も一日が始まる。
——昼休み
「柊飯食おうぜ」
「あれ?学食じゃないのか?」
「なんか珍しく弁当持たされたんだ、まあラッキーだ」
「もしかしてご両親嬉しかったんじゃないか?」
「嬉しい?なんで?」
「福羽が目標クリアしてきて、しかも良い結果だったからに決まってんだろ」
「そうなのかな……」
福羽本人はあまり実感無さそうだが、あり得る話だろう。
柊家でもちょっと豪華な夕食が出たのだから。
「後は懇談だな、福羽はお母さんが来るのか?」
「そうだな、お袋だろうけど話がいつも長くなるんだよ」
脱線してあれやこれや福羽本人の事を聞いているらしい、それだけ心配してる証でもあるだろう。
自分のところはどうだろうと母になる朋子の今までを思い返す、なんら変わりないままで成績や素行を聞いて雑談して……普通だった。
今までは。
次回からは自分の認識が少し変わってくる、母親と思っていた朋子は実の母でない事を知って進路を相談する。
少し意識が変わってくるのだ、否応無しに気にしてしまうのは仕方ないのかもしれない。
母も父も望んではないだろうが、知らないままと知った上でだとやはり違う。
「……おい?柊どうした?」
「ん、いやなんでもない」
福羽にも言ってない本当の家族事情、言うつもりは無いし言ったところで服羽が困るだけになるだろう。
とりあえず置いといて昼食にありついた。
一日が終わって下校しようとした時、鹿島さんに呼び止められた。
「ね、柊君今度お店行って良い?」
「ん?空いてれば全然いつでも?」
「お父さんがどうしても行きたいんだって、なんか妙にソワソワしててさ〜」
「鹿島さんのお父さんが?構わないけど何かあるのかな?」
「私もわかんないんだけどね、柊君とお父様に是非話をしといてくれって言われたから」
「自分と父さんに……?ますますわからん」
「まあとりあえず今週末金曜日にお父さん帰ってくるから、その時かな?よろしくね!」
鹿島さんのお父さんは全国を周るピアニスト、凄い職業でかっこいいなと思える。
自分がその道は離れすぎてて進路のアテにはならないが、鹿島さんはピアノをやりバンドもやっている、音楽の道に進むんだろうか。
夏休みも過去のもの、一年生二学期の秋に色々と動こうとしていた……




