道の途中
「じゃあ、皆気を付けて」
つむぎ亭にて行われた中間テストお疲れ様会はお開きになり、アントガールズの四人と福羽は揃って帰路に付いて行った……
店に戻って片付けを手伝おうとしたが、母と姉に止められてしまう。
「優斗、お疲れ様会なんだから最後までゆっくりしなさい」
「アンタが姉の私を褒めてたから特別よ!」
どうやら手伝う余地は無い。
一応キッチンの父と蓮さんに喜んでくれた事を報告しに行く。
「おお、腕を振るった甲斐があったよ優斗、いつでも歓迎だぞ」
「優斗君、一から料理作った感想は?」
(あ、そうだ初めて仕込みから提供までやったんだ……)
「なんかまだ実感湧かないです」
「ハハ!でも間違いなくスパイスボックスと言うメニューを作り上げたさ!今後もオーダー入ったら任せていきましょうよオーナー?」
「そうだな、サイドメニューから始まるのも良いだろう、優斗次から任せていくからな」
「……はい!」
この日は早々に帰され、帰り道。
「喜んでくれたなぁ……しっかり者の圭子さんにクールな清さん、お茶目な紘子さん……初めてに近い交流だったけど楽しかった」
自分はそんなに沢山の人の中に入って騒ぐタイプでは無い、だがこんなのも良いかなと思う。
これまで深く友好があると言えば福羽と鹿島さんくらいだったが、広がってきた気がする。
クラスではつむぎ亭イベントで「美味い洋食屋の子」みたいなイメージで少しずつ話もしている。
鹿島さん経由でライブハウスの店長トオルさんとも知り合えた。
確実に世界は広がっている。
(本当の父さん母さん喜んでるかな)
ふと浮かんだ亡き両親、思い出さないようにしてる訳じゃなく今が充実しているから秘めているだけ。
友達達に家族関係の事実を公表するつもりは無いし、必要性も無いと考えている。
ただ、両親がもし生きていたら違う自分になっていたと考えたりはする。
どんな人間になっていたのだろう。
明るい福羽みたいな自分?変わらない自分?より暗く静かな自分?
色々巡っていく、もしだったらの事なんて考えたところで意味は無いのだが……
結局は自分がどう生きるかだと顔を上げ家に帰った。
——翌朝
福羽のモーニングコールで起こされる。
日曜くらい寝かせて欲しいのだが、福羽は常に自分のタイミングで生きている。
ある意味羨ましい生き方だ。
「……なんだよ……」
「おー!寝てたか悪い悪い!バイトの面接が決まったんだ!!」
福羽はニッチなバイト探しをしていたが、そんなものが見つかったのか?
「希望の職場が見つかったの?」
「ああ!今日これから面接しに行ってくる!また連絡するからな!」
言うだけ言って切れてしまった、アイツは落ち着きが少し必要じゃ無いだろうか?
「……これ、また掛かってくるか」
何時からか面接か分からないが、目も覚めてしまった。
起き上がり身支度を済ませて夕方のバイトまで少し勉強に手をつける。
中間テストの結果は目標五十位に滑り込めた、しかし福羽に一点差で負けたのは悔しかった。
正確に言えば後から悔しさが湧き上がってきたのだ。
(一点差ってなぁ……結構くるものがある)
これまでやった事がなかったテストの直しをしながら考えた。
朝から机に向かい、昼を迎えそうになった時だった。
スマホが鳴る。
福羽が表示されているところを見れば、面接が終わったのだろう。
「……もしもし」
「ひ、柊!受かったぞ!!」
喜びの声を上げる、しかし何のバイトを受けたのだろう?
「良かったじゃん、どんなバイトなんだ?」
「ふっふっ、ライブハウスだ!」
ライブハウス?昨日のアントガールズの面々と帰って行った姿が浮かぶ。
「福羽もしかして……」
「そう、スパイスボックスでバイトさせて貰える事になったんだ!」
「なんでまた突然」
「昨日アントガールズと帰ってた時バイトの話になってな!圭子ちゃんが店長のトオルさんに繋いでくれたんだよ!」
「……で、昨日の今日で面接採用になったのか」
「素晴らしい流れだった!」
こいつの行動力と運は天性のものだなと感心してしまう。
「まあ、良かったな福羽もバイト見つかって」
「何するかは全く分からんが頑張るぜ!」
ライブハウスのバイトなんて確かに何をするか分からない、だがそれが福羽の求めていたものなんだろう。
「じゃあ、俺アントガールズ達にも報告するから!」
言うだけ言ってまた切れた。
「まあ……元気でなにより」
机を片付け、昼食を探しにリビングへと向かって行った。




