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紡ぎ紡がれこの店で  作者: かずや


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115/201

お疲れ様!そしてつぎの目標へ


「へー!このドリア、スパイスボックスって名前に合ってるよ!」


 圭子さんが褒めてくれる。

「店長喜ぶだろうな、今度言っておいて良い?」

 清さんが聞いてきたので頷く。

 勝手にライブハウスのお名前拝借してるし、怒られたらどうしようかとも思っているが。

「美味しいー!どれもこれもが美味しくて幸せ……」

「紘子は人一倍味にうるさいのよ、良かったわ気に入ってくれて」

 鹿島さんがニコニコしながら喉を詰まらせた紘子さんを叩いている。

「やっぱりビーフシチュー美味いなぁ……結局特別な物は何が入ってんだ?」

「いや、自分もまだ知らないんだよ」

 福羽と自分も食すが知らない物は知らない、洋食屋の子供でも知らない事だらけなのだ。

「柊君の家族のお店って聞いた時は驚いたよね、身近に居なかったもん」

「詩華がおすすめしてきた意味が分かるね、今度家族と来るよ」

「私、食べ歩きが趣味だけど洋食屋さんって選択肢無かったの……まだまだね」

「三人とも気に入ってくれたみたいね〜お冷注ぐね」

 姉がスッと入り込む、見れば客席は埋まっているいつもの光景だ。

 忙しい中でも要所を抑える姉の接客術は自分から見ても中々のものだと思う。

「もし打ち上げとかお祝いしたかったらウチに言ってよ、サービスするわよ」

 姉は和かに言って去って行った。

 (姉ちゃんの誘導力は本物だからな……)

 これまで数多くの友達やリピーター客を接客術で作り出している、あれはマネできない。

「茜さんカッコいいよね〜」

「え?可愛い系じゃない?」

「弟の柊君はどう思う?」

 紘子さんが姉弟の関係に突っ込んできた、これは答え方で酷い目に遭う超デリケートな質問だ。

 この場合、答えないのが一番の悪手だと学んでいる。

 何故なら近場でしっかり聞き耳を姉は立てているのだ。

「そうだなぁ……頼りになる、姉だよ……」

 この場合は偏る答えより自分にとって上に持ち上げれる答え方が正解だ。

 スッと姉が離れた、正解だったようだ。

「頼れるかぁ〜私も弟に言われたいなぁ〜」

「紘子さん弟さん居るんだ」

「そうよ、何かと喧嘩ばかりだけど四つ下にね〜」

 年の差まで同じ、なんとなく力関係とかが分かる。

「清と私は一人っこだけど圭子はお兄ちゃん居るよね」

「一回り違うからお兄ちゃんよりおじさんよね……年に何回かの帰省しか会わないもんね」

「ふぇ〜兄弟にも色々あるんだなー」

 福羽は一人なので兄弟が珍しく映るのか、興味津々と言った所だ。

「まあ、姉弟になるとバランスがあるよ……ところでバンド練習始まったって聞いたけど、またライブやるの?」

 これ以上姉を深掘りしないように話題を変える。

「うん、定期的にやってるライブなんだ!……あ、でも次回は女子限定だったよね?」

 鹿島さんが皆に聞き「そうだよ」と頷かれる。

「あーじゃあ今回も俺達は行けないな……残念」

 既に一緒に行こうとしていた福羽が頭を落とす。

「前も女子限定ってあったけど珍しいのかな?」

 アントガールズのメンバー全員に聞いてみる。

 ライブハウスでライブはまあそう言う場所だからと分かるが、意外とそう言う場でライブをする女の子は聞かないし女子限定ライブはもっと聞いた事が無い。

「あートオルさんの発案でね、ライブハウススパイスボックスに華が欲しいって言い出したのが始まりらしいの」

 圭子さんが説明してくれたが、割と私欲に塗れた動機に面食らう。

「店長の名誉の為に言うと、ライブハウスって薄暗くて皆テンション上がるじゃない?やっぱり人が揉みくちゃになると……ね?居るのよ馬鹿な奴が」

 清さんは頬を掻いて付け足す。

「なるほどな……男はやっぱりよろしく無い思考を持つんだよ」

「お前もその男なんだよ……」

 勝手な解釈をする福羽だが、あながち間違いでは無いのかもしれない。

「ステージの私達はともかくも観客でそんなのが紛れたら楽しめないじゃない?だからレディースデーを作ったのかもね」

 最後のドリアを一口食べ切った紘子さんはお腹をさすって満足気だ。

「最初は客足全然だったみたいよ、でも最近定着し始めて女の子のライブハウス観劇デビューに一役買ってるみたい」

 鹿島さんは続けて言う。

「動機は残念な事だけど、おかげでガールズバンドも増えたし入り口としてスパイスボックスにはお世話になってるね〜」

 うんうんとメンバーも首を振る。

 彼女達も何かしらあったのだろう、だがそれを見せず音楽活動に向き合う姿勢が凄いと思える。

「自分はアントガールズ観て聞いて良かったから、また観に行きたいな」

「俺もだ!ライブハウスの空気なんか行かなきゃ分からなかったもんな、アントガールズには感謝だよ!」

「柊君、福羽君……次のチケットは用意しとくから!」

「じゃあ私はもっとベース練習しとかないとな」

「ギターは任せてよ〜」

 圭子、清、紘子はやる気に満ち溢れている。


「ふふっ二人のおかげでもあるよ、ありがとう」

 鹿島さんは優しい笑顔でお礼を述べた。

 

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