お疲れ様会準備します!
夕方前、福羽が一足早く来店。
「待ちきれず来ちゃった!」
「あら光司君久しぶりね」
「茜さん!お久しぶりです!テスト勉強以来です!」
「そう考えると二週間くらいね、そんな久しぶりでも無かったわね」
「いや、そんなぁ……」
店に入るなり姉と喋り出す落ち着きの無さが福羽だ。
「あれ、柊どうしたコックコート来て」
福羽が首を傾げる、今自分はコックコートを着せられ待っていた。
——「やっぱりビッグサイズスパイスボックスは優斗に任せよう」
福羽が来店する前、店の休憩時間に父が言い出した。
「え?自分が焼き上げるの!?」
「だって一から仕込んでたし、お疲れ様会のメインになるだろ」
「いやそうかもだけど……怖いなぁ」
「何、焼き入れは蓮に付いてもらう」
「そうそう、熱にビビったら逆に怪我するから堂々としなよ」
蓮さんは軽く笑ってる。
果たして焼き上げて提供まで出来るんだろうか?
——「新メニューなんか名付けてたのかお前」
そう言えば福羽にも言ってなかった。
「トオルさんのライブハウスから拝借したけどな、スパイスボックスって言うメニューだ」
「えーどんな料理だ!?」
「まあ、皆揃ったらな……ん?」
店の前で声がし始める、まだ夜営業の開店時間では無いが。
「あ、来たよ」
窓からアントガールズの面々が見えた、福羽と姉とで出迎える。
「いらっしゃい」
「わぁ!びっくりした!柊君!福羽君!茜さんも!」
「今日はお邪魔しまーす、」
鹿島さん、圭子さん、清さん、紘子さん揃ってお辞儀をしてくれる。
「さあさあ、もう入っちゃいなさいな!開店までゆっくりしなさい」
姉が女の子達を誘導する。
僅かな間で自己紹介をしながらお互いの話に移行している、姉も姉で凄まじいコミュニケーション能力を持っているなと実感した。
「良いお店ね」
リーダーの圭子さんが店を眺めながら褒めてくれる。
「ありがとう、どうぞ席はそこのソファで用意してるので皆様」
皆を座らせ自分はキッチンへ向かった。
「あれ?柊君コックさんの格好だよ?」
「なんかかっこいいわね」
清さんと紘子さんの声が聞こえ、少し嬉しい。
「よっと、オーブン加熱始めてるからちょいと待ちだな」
オーブン前に蓮はスタンバイしてくれて準備をする。
父は前菜盛り合わせ用意とオムレツビーフシチューの準備に入った。
メニューはサラダ含む前菜盛り合わせとオムレツビーフシチュー、そしてビッグサイズスパイスボックス。
これで予算よりちょっとおまけしてくれてるのがありがたい。
その分も踏まえてメインのスパイスボックスドリアは自分が作るのだが……
「優斗君、いこうか」
蓮さんのゴーサインが出た。
あらかじめ仕込んでいたスパイスライスの上を覆い被せるようにホワイトソースを広げ、チーズを乗せる。
そしてオーブンに入れ込む。
後は焼き色を見ていくのだが、どきどきしてしまう。
客席では姉が混じり談笑している、何故自然に溶け込んでいるのか不思議で仕方ない。
「優斗、ついでだ焼き上がるまでに持ってけ」
父から前菜盛り合わせとサラダを渡される。
生ハムとチーズにポテト盛り、サラダはオニオングリーンサラダ。
両手に持って席まで行く、「あ、凄い!お店の人だ!」と鹿島さんが言い恥ずかしくなる。
そっと席に置いて「まだ少々お待ちを」と告げた。
「あんた、もう少し愛想良くできるでしょ」
姉からダメ出しが飛ぶが、無視してキッチンに戻る。
「ほら、優斗君見てみな」
蓮さんがオーブンを開け見せてくれたのは、グツグツと煮えたぎるホワイトソースにチーズがこんがり焼けたアツアツのドリアの姿だった。
「もういけます?」
「ああ、しっかりミトンはめて提供に気をつけるんだよ」
言われた通り集中して掴み込む、あまり長く掴み続けると熱が手に伝わるので素早く丁寧に。
「真ん中乗せるよ、皆離れて」
席に持ってテーブルに置いた瞬間、歓声が上がる。
「すごーい!」
「柊君が作ったって聞いたけど!」
「柊やるじゃないか!」
「撮っとこう撮っとこう!」
「お腹すいた……」
様々な反応が見れて嬉しくなる。
後ろから姉と母もビーフシチューを持ち置いていき「皆テストお疲れ様」と声を掛けていく。
「きゃー嬉しい!」
アントガールズの面々は明るく楽しそうに思い思い料理や店を見てくれた。
「ほら、アンタも着替えて楽しみな」
姉に肩を叩かれ頷く。
「柊急げー!腹減っちゃった!」
福羽がうるさい、急いで更衣室で着替える。
戻った時、誰も料理に手を付けず待っていてくれた事に頬を掻きながら座り……
「皆テストお疲れ様!乾杯!」
と鹿島さんの音頭で会は始まった。




